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#3 バンコクから一番近い海 アンシラ(その3:投網を打つ人)

2006年7月2日(日) 11時20分(タイ時間)
このアンシラの突堤に通っていると、タイ人の色々な類の釣りに出くわします。
投げ釣りの人は、誰も高価な道具は持っていませんが、大物狙いから小物狙いまで様々です。アジサビキを使っている人もいます。コマセは使いません。休日の昼間には、子供達がテグスを空き缶に巻いて、真下の魚を釣っています。浮きで釣っている人も見掛けます。烏賊の餌木を投げる人もいます。日によって、潮によって、ちゃんと烏賊も揚がっています。時々小さい蛸も掛かります。週末は、暗くなってからが屋外の宴会に花が咲くのですが、バッテリーを持参して海面を照らしている人を、見た事があります。その時は餌木で烏賊を狙っていましたが、その斬新な道具の周りには人垣が出来すっかり人気者でした。
それから、タイでは何処でも見掛ける投網を打つ人です。

斯様にして、この場所ではタイらしく何でもあり、なのですが、魚釣りという観点からは投網は問題です。
遊びですから、網を使おうが何を使おうが勝手なのですが、投網の場合は動き回って、魚を追い、網を打つので、釣り竿を出す人とは基本的に相容れません。

この場所が、憩いの場として、ある程度認知されてきた現在では、この投網は禁止させるのが筋でしょう。しかし、タイ人には、自分の頭に火の粉が降り掛っていない限りは、公益の為に、他人に注意するなどと云う失礼を敢えて行う発想は全くありませんから、今度、私が善良な一タイ市民として、チョンブリ当局に手紙を書きましょうか。

さて、この投網、トアミと呼んで唐網と書く人もいますが、内の田舎では投げ網と呼んでいました。
アンシラの狭い憩いの場での投網には反対ですが、個人的には、風情があって大好きです。綺麗にふわっと広がって水面に落ちる様は絵になります。
私が小さい時には、親父は、小船で川面を静かに移動しながら、魚の居そうなところに打っていました。私の兄も、庭で投げながら、大きく広げる練習をしていたものです。

タイでは、川の場合は、こんなところに魚がいるのかと思うような小さい運河に、岸から打っているのを良く見掛けます。海では、何処に行っても、堤防から投げています。ここアンシラでも、一番先端にある波の打ち寄せる、手摺のないセメント敷きの上から投げています。
狙いはボラです。

ボラは、タイでは高級魚です。
ですから、ボラを狙って投網を打つ地元の人間は、半分玄人と言う方が正しいかも知れません。それ故に、汚い身なりが生計を立てて入る印象を与えますと、優しいタイの人々は尚の事、釣竿を出している横で騒がれても、迷惑そうな顔を致しません。

斯様にして、優雅な遊びとしての魚釣り、という位置付けは、タイでは中々に根付いていかないわけです。魚釣りは未だ未だ漁な訳です。
閑話休題。

タイでは、ボラは、プラー・クラボー、筒の魚という名前が付いています。
日本では、最近は、川が海に出て行く汽水域や、港や湾内に揚るボラは、臭いという印象があるようですが、私が小さい時には、ボラが釣れると、ぶつ切りの洗いにして酢味噌で食べていたものです。

ボラは潮に乗って海面近くを周っていますから、ボラを狙っての投網は、理に適っています。

彼らのボラを追う手馴れたやり方は、一見の価値はあります。
2、3名で組になって、辛抱強く、じっと沖の方を見ています。身なりの汚さと双眼鏡を持っていない点を別にすると、戦艦から終日海を窺う船乗りです。

そして、遠くの水面に泳ぐボラの姿を発見すると、一人は投網を持って海べりに待機し、他の仲間は持参のセメント袋の中から大きな石ころを取り出します。

眼が良いのか、はたまた経験から波の動きを判別出来るからなのか、一緒に立って見ていても、私には何処にボラが泳いでいるのか良く判りません。



そして、ボラの姿の向こう側に石を投げ入れて、ボラを近くの岸辺にまで寄せて来るのです。仲間の立つ場所にまでボラを誘導して来た瞬間に、投網の担当が網を打って魚の上から被せます。

投げた網をゆっくりと時間をかけながら絞り、そして最後に手元から鉄の輪を滑り降ろして、網をしっかり絞り切ります。

何が入っていますか。
アジが見えます。フグもいます。お馴染みのエイも一匹入っていますが、エイはこんな岸の近くにも居るのですね。それにしてもエイちゃん、砂地に張り付いていれば捕まらなかったものを。


肝心のボラは、15cmから20cmくらいの大きさが、綺麗な形を見せて、14匹掛かっていました。
一度にこのくらい取れると百匹なんかすぐだね、と聞いて見ると、これは運が良かっただけで、潮が満ちてくる時に朝から立っていて、30匹取れればいい方なんだそうで、見掛けほど楽じゃないみたいです。

しかし、ここは憩いの場ですからね。
漁に余り真剣になって頂いても困ります。
でも、生活が掛かっていますか。そうですか。頑張って下さい。
《newsclip》