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ラオス コーンパペーンの滝

2006年7月15日(土) 14時17分(タイ時間)

 ニワトリが群れる未舗装の道路。ポツポツと並ぶ民家とゲストハウス。歩く人はなく、傍らを流れるメコンがすべての音を吸いこんでしまったかのように静かだ。これが、島で一番の繁華街だった。

 メコンの中洲に浮かぶコーン島は、急激に変わっていくラオスにあって、なお古き良きインドシナの田舎の風情がたっぷりと残っていた。 とは言え、娯楽といえば散歩くらい。ヤシのアーチをくぐり、寺の軒先を行き過ぎ、はにかみながら手を振ってくる子供たちに挨拶を返せば、もうすることはない。川岸の小さなカフェで、ひたすらに穏やかな流れと対峙しながら時間が過ぎていく。

 「良かったら、近くの滝か島にでも遊びに行かないか?」 同じように暇を持て余していたカフェに勤める青年に誘われて、メコンに浮かぶ島々を巡ることになった。 チョコレート色したメコンに漕ぎ出す。河の茶と空の青、岸辺の緑、ただそれだけの原色の世界をボートは滑らかに進む。陸地よりさらに無音で恐ろしくなるほどだが、メコンから立ち昇ってくるお日さまの匂いが安心させてくれた。「河の中洲に、島が4000も浮かんでいるのさ。だからここらはシーパンドン(ラオ語で4000の島々の意味)って呼ばれてる」「本当にそんなにあるの?」「さあね」

 船着場でボートからバイクを降ろし、今度は生ぬるい風を切って走る。木々の匂いが濃い。そして到着したコーンパペーンの滝は、横に数百メートル展開される濁流のカーテンだった。滔々とした優しいメコンはもうどこにもない。轟音をたてて岩を削る、怒りにも似た激流に息を呑む。「フランス軍はこの滝があったから、鉄道を完成させられなかったんだ」 青年は滝に目をやりながら、どこか得意気に言った。この地域には、かつてのフランス植民地軍が建設を断念した鉄道跡や機関車の残骸が残っているという。 あれほど静かで穏やかだったメコンは、たった数メートルの落差で、荒れ狂う奔流に姿を変えていた。もの静かなラオ人の奥底にも、こんなエネルギーが隠されているのだろうかと、青年の横顔を見ながら考えた。
《newsclip》