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ベトナム北部サパ

2006年8月1日(火) 23時36分(タイ時間)

 ゲストハウスのテラスで朝食を食べていると、ミーが妹分のシュウと一緒に市場からやって来た。先週、かなり離れた彼女達の村へ遊びに行って以来、仲良くなった。彼女達は普段、サパの市場にあるゲストハウスに住み、週末にハノイからやって来る観光客に土産物を売り、現金収入があると肉や日用品を買い、村に住む家族に日帰りで届ける生活をしている。彼女達モン族は中国雲南省、タイ、ラオスなどにも多数住んでいて、使う言葉もほぼ同じなので、英語を取り混ぜて話せば会話に不自由はなかった。長期滞在する日本人が珍しいのか、観光客の少ない平日などはよく妹分達と一緒に市場で話したり食堂で一緒に食事した。

 村に来たばかりの頃は土産物をしつこく売りつけてきて、カメラを向けると露骨に拒否した。しかしバイクであちこちの村へ撮影に行き、たまに村の人を市場まで乗せてあげたりしていたら、カメラを向けてもほとんど気にしなくなってきた。平日は欧米人観光客をほとんど市場で見かけないので、彼女達も商売より遊びに行った方が楽しいのだろう。


 「近くまで散歩しよう」とミーが提案した。ベトナム北部で多く利用されているポーランド製のバイクを出してくると、「歩いて行かなきゃダメ」と却下されてしまった。ここで逆らうと1日中不機嫌になるので、仕方なくカメラを背中に担いで歩き出す。先週、村まで家族へのお土産を持って延々歩かされた記憶がよみがえる。さすがに帰りはジープを途中でつかまえて市場まで乗せてもらったが、下りとはいえ15キロはきつかった。

 市場から舗装された山沿いの道を西に向かって登って行くと、周りの景色が開けてきた。山の斜面に小さい段々畑が遥か800メートル下方の川まで続いていて、天気がいい日はすばらしい景観が楽しめるが、普段は霧が深く晴れる日は少ない。 遠く下方にある村々で、朝早くから稲の脱穀をしているのが見えてきた。ほとんどの家庭でしている藍染の作業も、この時期はお休み。村人総出で昔ながらの手作業で働いている。子供達も水牛を連れて収穫の終わった畑で田植えの準備をしている。ミー達が畑に向かう村人達に声をかける。市場に住んでいるからほとんど村の人と顔見知りらしい。米の収穫が終わると結婚式のシーズンが始まるので、今の時期は話題に事欠かない。
 さらに二つほど村をすぎて、細い農道に入り民家をすぎると、高い崖の頂上にでた。そこからは下方の村は見えず、未開の山の斜面が続いている。みんなでそこに座って目の前に広がる景色を楽しみながら休憩した。どうやらここが目的地らしく、崖の下すぐ近くに小さな草地だけの丘があり、そこだけ人が何度か通った様な道が線になって残っていた。皆静かに丘の頂上にある石垣で囲まれた地下に入る階段の入り口のようなものを見ていた。



 今まではしゃいでいたミー達が急に静かに話し始め、シュウが口琴で演奏を始めた。短い演奏が終わると、ミーが「あそこにおじいさんとおばあさんがいるの」と小さくつぶやいた。丘の頂上にあるのは先祖の共同墓地の入り口で、市場周辺に住む村人の先祖が眠っているという。何で今日ここにきたのか尋ねたが、少しほほえんだだけで教えてくれなかった。きっと寂しくなるとここへきて、亡くなった人たちを思い出しているのだろう。

 帰りはその丘を見渡せる道から遠回りしてゆっくり市場へと帰った。

Sapa(サパ)
 中国国境に近いベトナム北部の町。山岳少数民族(モン族、ザオ族等)が多く住み、町の中心にある市場では週末になると多くの人々が市を出す。標高約1,500メートルの市場から約1,000メートルのムンホワ川まで山の斜面に棚田が広がり景色が素晴らしい。近くにはベトナム最高峰のファンシパン山(3,134メートル)がある。
《newsclip》