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様変わりしたタイの会計・税務

2006年10月31日(火) 00時21分(タイ時間)
 タイの会計・税務に対する当局の認識は、1997年におけるアジア通貨危機を境に、大きく変貌した。それまでは外資系企業の投資ブームを受け、税収も順調な右肩上がりであったが、タイ・バーツの暴落により企業の財務状態が瞬く間に悪化した。当然のことながら税収が落ち込み、タイ国の財政は国際通貨基金(IMF)の拠出を受けると同時に管理下に置かれた、いわゆる「IMF体制」となったのである。

 このような事態に陥り、当局は税収を上げるための手段として会計・監査・税務の基準を大幅に見直し、税務調査を積極的に行うようになった。2000年には新会計法である「2000年会計法」が施行され、国際的な税務基準見直しの流れも視野に入れた完成度の高い法制化が成された。しかしながら、税務官の裁量権より判断される部分がなお大きいのも事実であり、それが管轄税務署間や各税務官により、納税者の不公平感を招いていることも否定できない。

 納税者としての法人にとって申告納税上の日本との大きな違いは、先ずVAT(付加価値税)を毎月申告納税すること、源泉徴収のカテゴリーの多さであろう。また、損金として算入できる費用の範囲が狭いことであろうか。

 法人がVAT登録企業である場合、毎月のVAT支払いおよびVAT徴収額は翌月の15日までに算出し、納税分があれば申告と同時に納税する。これは同時に各企業の収益額の報告も兼ねており、申告漏れや申告遅延に対する罰則金も大きいので、税務当局にとっては、企業間の取引・金の流れを把握し、税収を上げるための非常に有効な制度となっている。最近ではかなり改善されたようだが、輸出が中心の企業では仕入れの際に支払ったVATは還付請求処理をしなければならないのだが、当局はこの還付を遅らせることにより財政逼迫の折にかなりの助力にしえたのであろうと想像する。あるいはBOI認可プロジェクトとして法人所得税の免税を得ている企業からは、VAT還付の際の調査を強化することにより税収を確保しようとの意図も感じるのである。

 損金と認められる費用の範囲は、例えば接待交際費は売り上げに対する割合が定められているので、中小企業(特にサービス・請負収入が中心の企業)にとっては無きに等しいものであるし、海外から赴任する者に必要不可欠な住居賃貸料は個人所得の一部と見なされる。

 会計・税務処理の心構えとしては、当たり前のことの様だが正しい情報に基づく正しい処理、ということに尽きよう。当然、海外においては情報ソースの選択肢も少なく、また社員が優秀な経理マンであるかどうかの判断も難しいところであろう。そのような中、日系または日本人公認会計士が属する会計事務所は、巨大監査法人から個人経営まで、クライアントの企業規模に応じて選択できるまでになっているし、経理マンのレベルも経済発展とともに徐々に上がってきている。

 先ず無駄な支出を防ぐため、そして税務調査を受けて当局から一方的な受け入れ難い要求を突き付けられた場合にも、毅然とした対応ができる様に、という意味において重要なことである。

 我々は現地社会から、常に日系企業または日本人という一括りで見られがちである。それが必ずしも正しいことでは無いが、見られている以上は堂々と正しくこの社会に向き合っていくことが、この国において日系企業のプレゼンスを高めてゆく方法ではないかと思う。

 以下に現地法人(株式会社)における基本的な税務申告を記しておく。

1 月々の申告
?源泉徴収
a 給与支払いの際、源泉徴収分を差し引いておき、翌月申告納税。
b サービス・請け負いの対価、賃貸料、広告料等、源泉徴収義務を負う支出の際にそれぞれ差し引いておき、源泉徴収票を発行し、翌月申告納税。
?付加価値税(VAT)
a 仕入れおよび備品・消耗品等の購入の際、支払ったVATの内、還付対象となるものの合計を算出する。
b 収益に伴い入金したVATの合計を算出する。
c aとbを相殺し、支払い分があれば翌月に申告納税。還付分があれば、クレジットとして繰り越すか還付申請するかを選択する。支払いが無くとも必ず申告する。
d VATについては様々なケースがあり、申告漏れや申告遅延に対する罰則金も大きいので、個々の扱いは最新の情報に基づき、慎重に行う必要がある。

2 予定納税
 会計年度の上半期を締めた時点にて、下半期の損益を予測し、法人所得税納税分があれば、半期分を申告納税する。納税分が無くとも申告は義務。

3 法人所得税申告
会計年度を締めた後、年次決算書を作成、公認会計士の監査を受け、法人所得税を申告納税する申告は義務、会計年度末後150日間以内)。

関連ウェブサイト:http://www.newsclip.be/ad/meiyosha/001.html

〈執筆者〉
明耀社アカウンティング&コンサルタント
小川邦弘 氏 (Managing Director)
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