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中国少数民族 トン族の風雨橋

2006年11月1日(水) 20時21分(タイ時間)

 中国南部、貴州省と湖南省、そして広西チワン自治区にまたがる地域に、トン族と呼ばれる少数民族が住んでいる。主に山間部を流れる川の流域に居を構え、なかには山また山を分け入った所に住み、未だ道路さえ通じていない集落もある。棚田で稲作を行い、ちょっとでも空いた場所はこまめに畑にしている。豊かな森林資源を利用し、住居はほとんどが木造。近年、一部でレンガ作りの家に建て替える人も出てきたが、まだ小数派だ。

 トン族のトン族たる所以は、木造建築。特に集落内に高々とそびえる鼓楼と、屋根付の橋の上にお城の櫓を載せたような風雨橋は有名だ。



 この地域を実際に訪れて見ると、広西チワン自治区のトン族の集落には立派な風雨橋が多く、貴州省のそれは見事な鼓楼が多い、湖南省はその中間といった所だろうか。これはあくまで現存の建物を見た印象である。なぜなら中国では文化大革命の時代に、多くの鼓楼や風雨橋が打ち壊されてしまったからだ。今回と次回の二度にわたって、このトン族の特異な木造建築を紹介しようと思う。まずは広西チワン自治区、三江近郊の風雨橋から始めたい。

山水の風景で有名な桂林から北西にバスで4時間、この地域のトン族の中心地、三江に到着する。ここからバスで1〜2時間も走れば、数多くの風雨橋にお目にかかれる。三江近郊のトン族の村に立派な風雨橋が残っているのは、主に地理的理由による。それは山がちながら冬も枯れることがない川沿いに、集落が発達しているためだ。貴州省のトン族の多くは、山奥の辺鄙(へんぴ)な所に住んでいて、そこには川らしい川がない。同じトン族の住む地域でも、より便利な場所では近代化の波が押し寄せ、伝統的な建物は廃れてしまっている。



 風雨橋で一番有名なのは、程陽風雨橋だろう。長さ65メートル、ここら一帯では最大の大きさだ。現在の建物は20世紀の初めに建てられ、修復を重ねている。桂林から日帰りでこの橋を見にくる観光客も多く、この地域で唯一、入場料を徴収する橋でもある。普通、風雨橋には年寄りや、いかにもダメ人間風の大人が暇つぶしをしているのだが、この風雨橋には、みやげ物売りの女性が手ぐすねを引いて待っている。東南アジアに限らずトン族の女性も働き者で、橋で女性がごろごろしている姿を見たことがない。



 これらの風雨橋を訪れるのは簡単だ。ローカルバスは川沿いの集落を結んで走るので、いやでも風雨橋は目に入ってくる。とりあえず終点まで行って、帰り道お気に入りの風雨橋で途中下車すればいい。村から村へ歩いてもせいぜい1〜2キロだし、川から田んぼに水を引いている水車を見ながら、田園風景の中を歩くのは気持ちがいい。昔の日本、信州の田舎でも散歩しているような気にさせられる。



 近年になって再び風雨橋を架けようとする村が出てきた。湖南省では長さ252メートルの大風雨橋が再建された。中国全体が服装も生活様式も画一化しつつある中で、民族の誇りを忘れないための作業であろうか。
《newsclip》