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連続爆弾事件から1週間、混迷深まるタイ政局

2007年1月7日(日) 13時26分(タイ時間)
【タイ】死者3人を出したバンコクの連続爆弾事件から7日で1週間が経った。犯人が逮捕できなければ次のテロの懸念が払しょくできないが、捜査が進展しない一方、第2クーデターのうわさが浮上するなど、タイ政局は混迷を深めている。

 犯行については、爆発物に関する知識とバンコクの土地勘、短期間に複数の場所で爆発を起こす組織力などから、軍、警察関係者の関与が疑われている。深南部のイスラム過激派の犯行という見方は少数派だ。

 軍政・暫定政府の主張をまとめると、犯人はタクシン前首相支持の政治家、軍人、警官で、特に前政権で副首相などを務めたチャワリット元首相(元陸軍司令官)が怪しい、となる。この主張が正しいとすると、捜査がうまく進めば軍・警察の内紛、対立が公になり、一方、犯人逮捕に失敗すれば支持率が低下、治安不安が解消できない。

 第2クーデターのうわさは、こうしたジレンマの中で浮上した。軍のタクシン派が軍政トップのソンティ陸軍司令官の追い落としを図る、もしくはソンティ司令官が軍内のタクシン派を追放する、という2つ説があり、いずれも軍内部の亀裂の深さを物語っている。ソンティ司令官、スラユット首相らは5、6日にクーデターの可能性を否定したが、軍内部に何らかの動きがあったのは確かなようだ。

 タクシン前首相、タマラック前国防相らは、軍政・暫定政府が事件と前政権を無理やり結び付けようとしていると非難。爆弾のタイプなどから、爆弾テロはイスラム過激派の犯行と主張した。渦中の人、チャワリット元首相は、治安不安を引き起こし権限強化を図ったとして、軍政の自作自演を示唆している。

 爆弾事件で誰が得をするか、を考えてみると、タクシン前首相のメリットはあまりなさそうだ。テレビ、ラジオを支配下に置く軍政が事件をタクシン派のせいにするのは目に見えており、帰国し法廷で争うという前首相の戦略は崩れる。一部の政治学者が唱える「打つ手がなくなったタクシン氏が短気を起こした」という説はあまり説得力がない。

 チャワリット元首相はどうか。同氏をめぐっては、軍政の一部と結んだ新党設立、前政権与党・愛国党の党首就任といったうわさが飛び交っている。爆弾事件で軍政に揺さぶりをかける一方、タクシン氏の帰国を阻止し、愛国党を掌握、という筋を考えると、パズルが合う部分も多く、このあたりが軍政の疑いを招いたようだ。一部報道では、軍政トップには元首相の犯行という見方が強いとされる。

 軍政自体をみると、事件直前に話題となっていた、スラユット首相が森林保護区内に別荘を所有しているという疑惑や、ソンティ司令官の重婚問題は、報道がほぼ皆無になった。これだけを狙って首都で爆弾を爆発させるとは考えにくいが、右手のやっていることを左手が知らない、ということもありそうだ。昨年9月のクーデター当日、ソンティ陸軍司令官は海軍、空軍、国軍最高司令部、警察のトップ4人を従え国王に謁見、翌日の会見にも5人そろってひな壇に並んだ。しかし、5人はいずれもタクシン政権で司令官、長官に任命され、中の何人かはクーデターは本意ではなかったとされる。前首相の古巣である警察は、陸軍主導の軍政の下、地方行政体への移管など屈辱的な「格下げ」が検討され、コーウィット警察庁長官解任のうわさも根強い。軍内部の主導権争いも一部で報じられ、こうした暗闘が爆弾テロという形で表面化した可能性も捨てきれない。
《newsclip》