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タイ東部、シラチャーの日本人事情

2007年10月8日(月) 20時46分(タイ時間)
執筆者:筧由希夫氏(パノラマ・インターナショナル・マーケティング代表取締役)

【タイ】日本人がシラチャーに住み始めたのは90年代半ば。当時はほとんどが駐在員で、各種手当てに恵まれ、家族連れが多かった。その後、日系メーカーのタイ東部への進出が続き、それに伴って日本人が増えていく。そして進出ラッシュが一段落した2003年前後から、駐在員が波を引くように減り、単身の出張者が取って代わる。出張者とはすなわち、現場でタイ人ワーカーと共に労働に従事する「応援者」。シラチャー在住の日本人は、高待遇の駐在員はたかだか全体の約2割。大多数はより経費が削られた、住む場所と通勤手段、日当のみを保証された出張者だ。

 タイ東部に進出している日系メーカーの多くはこの下請け、孫請け出張者で、過当な価格競争にしのぎを削っている。親会社が「金のかかる駐在員」を送り込む余裕などない。駐在を出張に置き換え、可能な限り経費を抑えることになる。選ばれる人材は、家庭を持たない単身者だ。

 出張者の場合、給与は日本での振り込み、現地では日当800—1000バーツほどが手渡される。日本人にとって1日1000バーツは、生活費として明らかに少ない。切り詰めなければ金欠となり、日本から送金してもらうハメとなる。節約は食費に反映される。夕食の場合、「ビール込みで300バーツ以内でないとお客を引き止められない」と、居酒屋の経営者は話す。

 カラオケ屋で仕事のうさを晴らしたいとなると、食費をさらに切り詰めなければならない。酒代、食費を節約するため、酒を売る居酒屋にスーパーで買った酒を持ち込んだり、自分で釣ってきた魚をさばいてくれと頼んだりする人が出てくる。ビールの付き出しをおかずにして白飯だけ注文、無料の付き出しを何回もお代わりして食事を済ませた人もいたという。朝食はコンビニのパンと牛乳だ。

 経費削減は通勤形態にも表れる。出張者はたいていホテル住まいで、一昔前はホテルに1人1台の専用車が迎えに来ていた。それがいつごろからか、2人1台となり、そのうち数人が乗り合うマイクロバスに。今ではそのマイクロバスが、さらに日本人を詰め込むため、複数の宿泊先を回っている。

 ホテル代もしかり。タイはまともなホテルならたいていは朝食込み、朝食を取っても取らなくても料金は変わらない。その食事代を削る変わりに部屋代を「50バーツでも100バーツでも安く」と値下げの交渉が続くという。経費を節減するとどうしても出張者の年齢が低くなるため、週末お決まりのゴルフを楽しむ人も激減した。

 居酒屋あり、カラオケ屋ありのシラチャーは、見た目とは裏腹に、日本人向け商売の景気は決して芳しくない。儲かっているのは、オフバランスで経理処理できるというメリットで利用するレンタカー業者ぐらいか。日系同士で競争し、勢い劣らぬ韓国勢に押され、さらには中国の脅威にさらされ、タイ東部進出の日系メーカーは、さらなる経費削減を余儀なくされている。 
《newsclip》