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中国少数民族 トン族の鼓楼

2008年1月20日(日) 01時29分(タイ時間)

 前回は三江トン族の風雨橋を採り上げたが、ここでは貴州省トン族の鼓楼を見てみたい。

 貴州省の黎平と从江一帯に集落を構えるトン族は、三江近郊に比べ過酷な環境下で生活している人が多い。貴州省自体、ほとんど山の中にあると言っても過言ではなく、当然そこに暮らす人々も山また山を越えた所に住んでいる。他の村との行き来は、か細い山道に頼っているような孤立した集落もある。だが、こういった所の方が見事な鼓楼が残っている可能性が高い。三江近郊の集落には、見るべき風雨橋はあるが、鼓楼はずんぐりとしていて見栄えがしない。ところが貴州省では、周囲の山々に負けまいとするかの様な、すらりと背の高い鼓楼が多い。反対に風雨橋は川の大きさに比例して貧弱だ。

 山奥にあるトン族の集落に行くのは大変だ。ローカルバスを乗り継ぎ、小さな町で無理やりバイクをチャーターし、さらに山道を延々歩いてやっと到達する。そうやって辿りついた集落は、全てが自給自足、一つの小宇宙を形づくっている。外部の人間がたまに訪れるぶんには桃源郷のような所だ。しかし、村の人々の実生活は厳しい。集落の周りに平地はなく、ちょっと農作業に出かけるにも山道を登って行かなければならない。



 比較的訪れ易く、尚且つ集落の中に5本もの鼓楼が建っている肇興を紹介しよう。ここもまず桂林から三江へ行き、そこから山越えのバスに約5時間乗れば到着する。肇興も山間部の小さな盆地に村が作られていて、村の中央を貧相な国道が貫いている。国道といってもめったに車を見かけない。電柱さえなければ映画のセットに使えそうな、街道沿いの宿場町といった風情がある。



 今は暇人の溜まり場になっているが、もともと鼓楼は村のシンボルであり人々の団結の象徴であった。外敵が来た時は、いち早く太鼓などの鳴り物を叩いてその侵入を知らせ、村人は武器を手に集まった。収穫の後は、鼓楼を中心にお祭りが行われた。今でも太鼓を上部に吊るした鼓楼もある。貴州省の山間の隠れ里には清朝時代に遡る鼓楼が残っているが、ここ肇興の鼓楼はいずれも70年代の文化大革命期の暴挙により壊され、現存の鼓楼はその後の再建による物である。

 肇興の人口はおよそ3000人、ところがほとんどの村人の姓は「陸」さんだ。ちなみに昨年の新一年生が約100人、「陸」さん以外の姓は「楊」さんの二人だけ。村の生活は原則的に自給自足で、周囲の山々を切り開いて農作物を作っている。市場の肉や野菜も全てこの村でとれた物である。ある秋の夕暮れ、路上でガスバーナーを使って動物の毛を焼いていた。よく見れば犬である。春先に訪れた時、やたら子犬が多い村だと思っていたが、これで納得がいった。農閑期、山で猟をする時連れ歩く猟犬の子供達の一部は、食用にされる運命が待っていた。



 肇興も中国国内のガイドブックに紹介され、まれに中国人観光客が訪れるようになった。以前は汚い田舎宿が1軒だけだったが、なんとか許せる程度の宿も数軒できた。家々もあえてレンガを使わず、木造の新家屋を建てている。村の将来を探りつつあるようだ。
《newsclip》