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タイ政府、バンコクの非常事態宣言解除

2009年4月24日(金) 11時50分(タイ時間)
【タイ】タイ政府は24日、バンコクなど中部6都県に発令していた非常事態宣言を解除した。タクシン元首相支持派の反政府デモが過激化したことから12日に発令し、13日に治安当局がデモ隊を強制排除した。デモの再発を恐れ解除を先送りしていたが、観光業界などが強く解除を求め、これに応じた形だ。

 タクシン派のデモによる東南アジア諸国連合(ASEAN)会議の中止、デモの暴徒化、バンコク首都圏での非常事態宣言発令、治安当局によるタクシン派強制鎮圧——。例年はタイ正月(水掛祭り)でお祭り気分に包まれる4月中旬、今年のタイは激しい政争に揺れ動いた。

 3月下旬からバンコクのタイ首相府を包囲していたタクシン派は4月に入り、プミポン国王(81)の側近であるプレム枢密院議長(88)の自宅を包囲したり、東部パタヤ市でアピシット首相(44)が乗った車を襲撃するなど攻勢を強め、9日にバンコク都内の交通の要衝である戦勝記念塔やスクムビット通り、ディンデン通りなどの一部を封鎖。11日には前日にパタヤで始まったASEANと日本、中国、韓国などの首脳会議の会場であるホテルにデモ隊数百人が乱入し、会議を中止に追い込んだ。

 これに対しアピシット首相は12日、バンコクなど中部6都県に非常事態宣言を発令し、13日朝から軍・警察がタクシン派の強制排除に乗り出した。タクシン派はタンクローリーで道路を封鎖、路線バスを乗っ取り燃やすなどして抵抗し、一部では銃撃戦も起きたが、 14日に同派幹部が集会の解散を決め、事態は収束に向かった。

 政府によると、バンコクでの騒乱で住民2人が死亡したほか、タクシン派、治安当局の双方で計135人が負傷。タクシン派に乗っ取られたバス23台が燃やされた。事件後、タクシン元首相(59)らタクシン派幹部には違法集会、交通妨害などで逮捕状が出た。

 アピシット首相率いる民主党は昨年12月、タクシン派与党が選挙違反で解党された際に中小与党・派閥を自陣営に引き込み、政権を発足させた。タクシン氏は国外滞在中の昨年10月に汚職で実刑判決を受け、帰国のめどがたたない中、政権を奪われ、700億バーツに上るタイ国内の資産も没収される可能性が高まっている。窮地に追い込まれたタクシン氏はプレム議長が反タクシン派の領袖だと非難し、議長に代表される特権階級による支配の打破、民主主義の復活を旗印に戦いを挑んだが、軍をコントロールする反タクシン派に力負けした形だ。

 ただ、タクシン派の運動はタクシン氏個人の戦いから地域・階級闘争へと変貌しつつあるようだ。タイでは相続税がないなど富の再分配のシステムが十分に機能していない。タクシン氏は動機はともあれ、初めて政策で本格的な富の再分配を試み、2001年、2005年、2006年(裁判所命令で無効)、2007年の総選挙でいずれも勝利した。そのタクシン氏がクーデターや司法判断で追放されたことで、支持基盤である都市部の低所得者層、地方住民の間では不満がくすぶっている。こうした状況を理解したアピシット首相は相続税、固定資産税の導入を打ち出しているが、実現できるかどうかは不透明だ。

 政治的な意味合いはどうあれ、今回の騒乱の経済的な代償は高くつきそうだ。民間研究機関の試算では、観光産業の損失が500億—1000億バーツ、外国投資の減少が340億—1000億バーツに上る見通しという。コーン財務相は事件後、今年の国内総生産(GDP)伸び率がマイナス5%になるという予想を示した。
《newsclip》


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