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脱ゆとり教育(新学習指導要領)

2009年5月13日(水) 12時15分(タイ時間)

執筆者
ネクサスMEIRIN・泰明倫館
松田賢憲 氏 (President)

 詰め込み教育から脱却し、子どもの学ぶ意思を尊重すべきとして始まった「ゆとり教育」。本格的な実施から10年、明らかな学力低下を引き起こして「失敗」とみなされ、2011年から「脱ゆとり教育」を主旨とした新学習指導要領に取って代わる。移行処置は今月2009年4月からで、教科書は一部がすでに脱ゆとりに。各県、各市、各校によって対応が異なるため、帰任先の教育事情に常に敏感でいなければ、子どもが帰国時に苦労することになる。

「詰め込み」から「ゆとり」へ、そして「脱ゆとり」へ

 ゆとり教育の理念が生まれたのは30年も前。それまでの詰め込み教育に疑問が投じられ、子ども個人の重視、国際化への対応が叫ばれ、学習内容の見直しや授業時間数の削減が提案された。以後、学習内容の3割削減や土曜日休校などが段階的に実施され、90年代後半から2000年代前半にかけて、本格的なゆとり教育が始まった。

 「理念と目標は間違っていなかった」という声は多い。しかし最終的には、文部科学省が失敗を認める形となった。週5日制や学習内容の削減といった処置で、ゆとりを得ることは出来なかったのだ。誰の目にも明らかなのは、学力低下。トップレベルの子どもたちの学力は、ゆとり教育に切り替わった後も変化はなかったが、平均値は確実に低下した。世界トップだった算数は、ゆとり教育の間に徐々に順位を下げ、今では五本指に入るのがやっとだ。

すでに「脱ゆとり」が盛り込まれた教科書や試験

 そして今回の脱ゆとり教育。小学校は2011年、中学校は2012年に全面実施となる。移行期間は今学期からで、4月に配布された教科書は、すでに脱ゆとりが反映されている。各試験にも、新しい問題が出題されてくるだろう。脱ゆとりまで後3年ではなく、すでに始まっているということだ。この3年で学習内容を3割増とし、ゆとり教育以前の分量にまで戻すことになる。

 移行期間の3年間に、どの程度の割合で、どこまで戻していくのかを、公立であれば各教育員会が、私立校であれば学校自体が判断する。どの県のどの市に帰任し、子どもはどの学校に通うのか、それによって異なった準備が必要となる。

 帰国せずとも、日本人学校(泰日協会学校)に通っているのであれば、脱ゆとりに向けた教育がすでに始まっている。子どもの学年も心配だ。新学習指導要領は、新入生の1年生から順に改定していくのではなく、途中の学年でも切り替えが発生する。6年生は過去5年で習ってこなかった内容を一気に詰め込むというイメージとなる。

 限られた時間で、どう効率良く授業を進めていくのか、教える側の苦労も多い。特にゆとり教育で育ってきた若い世代の教師は、自分たちが学ばなかった内容を教えていかなければならない。ベテラン教師の活躍が求められる。

 また、小学校5—6年での英語教育が始まる。小学校で英語がないのはいわゆる先進諸国で日本ぐらい。中学校の英語教育の前倒しというより、あいさつから始まる実践的な英語なので、新学習指導要領の中でも評価される内容といえよう。

海外暮らしの子どもたちは国語に注意

 海外で暮らす子どもたちは、国語、理科、社会科といった科目にも気を付けなければならない。日本の子どもたちよりも習得が遅れがちで、特に国語は遅れを実感しにくい。普通に生活していても上達するが、そのスピードは日本に住む子どもたちより遅い。それはインター校だけでなく、日本人学校に通っていても同じだ。

 日本語のテレビをみる時間も少なければ、街中で日本語の看板に接する機会もほとんどない。ご両親も子どもに毎日接しているから、遅れにはなかなか気付かない。母国語が固まるのは10歳まで、ボキャブラリーが増える小学校低学年を海外で過ごすときは、特に注意が必要だ。文系でも理数系でも、母国語力は必要。「試験の問題の文章が長くて意味が分からない」という子どもは、日本にもいる。ちなみに本を読むのが好きな子どもは、国語が必ず伸びている。

 理科・社会科に注意すべきだ。理科は、咲いている花が違う、天体の見え方が違うなど、日本とタイは自然環境が異なる。教科書で習う内容と実体験に、どうしても差が出てしまう。社会科は、日本の地理に疎く、都道府県の場所が理解しにくいといった問題がある。

 一方、世界地理に関しては、自分が外国に住んでいるということもあり、興味を持ちやすいようだ。日本に住む子どもたちに比べて、タイなら東南アジア諸国の国名、首都名、位置関係を気軽に覚えてしまう。また、周囲が外国人だらけで、ネイティブと話す機会が日本より多いため、英語に興味を持ちやすくなる。このような海外での体験を、帰国後にも生かせれば幸いだ。

 日本の教育事情に関しては、子どもたちの帰国に向けて、日本人学校や日本人向けの塾が常に最新情報を収集している。特に塾は、子どもたちにただ勉強させるのではなく、その学力と知識を帰国後も最大限に活かせるよう、指導していくのが義務だと思っている。脱ゆとりの新学習指導要領については、学校と塾から常に情報を得ることをお薦めする。

 その一方で、学校や塾に任せっぱなしでなく、自らの情報収集も必要だ。帰国先の事情に最も詳しいのは、学校や塾ではなくご自身。問い合わせ先は、公立なら教育委員会、私立ならその学校へ。教育委員会などは対応に差があるものの、いつでも情報を提供してくれる。

Phromjai Language School (Thai Meirinkan)
住所 BIO House #3B, 55 Phrompong, Sukhumvit Soi 39, Wattana, Bangkok 10110
電話 0-2262-0768 ファクス:0-2262-0769

Thonglor Language School (ネクサスMEIRIN)
住所:United Tower 16th Fl., 333/22 Thonglor Soi 17, Sukhumvit Soi 55, Klongton-Nua, Wattana, Bangkok 10110
電話:0-2712-6611 ファクス:0-2712-6611

Eメール:matsuda@meirinkan.com
ウェブサイト:www.meirinkan.com/index.php
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