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アジア7都市に住んでみた~住みやすい街はどこ?

2009年5月21日(木) 00時17分(タイ時間)
 ロングステイヤーが増える昨今、「やっぱり、タイが一番暮らしやすい」などという声も聞くがその実どうなのか。アジア各国を渡り歩き、「脱サラプチロングステイヤー」を自称する筆者が、最近住んでみた6カ国7都市について、肌で感じた生活便利度を比較してみた。タイを上回る理想のロングステイ先は果たしてあるのか。順位は筆者の独断で、生活のスタイルや関心、年齢層などによっても見解は分かれる。たとえ順位が低くても、魅力はそれぞれだ。さあ、タイに飽きたら、どこへいく?

【1位】 マレーシア
滞在時期 2004~06年
滞在都市 クアラルンプール

◇本当のアジア?

 「Truly Asia」というのはマレーシア政府観光局のキャッチコピー。本当のアジアを名乗るゆえんは、マレーシアが多民族国家である点に尽きるだろう。マレー系、中国系、インド系の文化がそれぞれ色濃く生き残っている点はエキゾチック感を高める。多民族国家だけに多種多様な文化が混ざり合うさまは、野菜や果物のミックスサラダの名をとって「ロジャ(Rojak)」と呼ばれる。それだけに外国人にも寛容なお国柄だ。
 食生活の選択肢は広い。近所の屋台街に行けば、マレー系のサテー、中国系の肉骨茶(バクテー、骨付き豚肉の薬膳スープ)、バナナの葉に盛られたインド系のカレーなどよりどりみどりで、地元料理の多様さは特筆すべきだろう。物価もタイ並みでうれしい。
 言語的な寛容性も暮らしやすさの要因だ。政府はマレー語を普及させようとはしているものの、それぞれの民族語をまたぐ共通語は依然として英語だ。しかも、基本的に文法無視、発音もいい加減な独特の「英語方言」が主流。英語が得意な方には耳障りかもしれないが、中学生英語と身振り手振りでコミュニケーションを取っている人がもともと多いから、いくらヘタクソな日本人の英語でも意外とOKだ。これは後述のシンガポールにも共通することだ。そう考えれば、タイのようにタイ語を覚えなければ生活が不便ということはなく、言語的にはやさしい街なのだ。

◇国を挙げてロングステイ支援

 マレーシアは国を挙げて「マイ・セカンド・ホーム」というロングステイヤー制度を設け、一定の定期預金をすることを条件に10年間有効のマルチビザを発給している。この制度を利用して移住する日本人も多い。ただ、50歳以下で30万リンギ(約850 万円)の定期預金など敷居も高い。とはいえ、実はそこまでする必要もない。日本人旅行者は入国時に自動的に3カ月の滞在許可がもらえるからだ。タイにはビザ取りを繰り返している滞在者が多いことを考えれば、長期滞在はノービザで済むマレーシアのほうが容易だ。さすがに何度か国境越えを繰り返すと警告を受けるようだが、1年のうち数カ月を熱帯で過ごそうという向きにはおあつらえ向きだ。生活費もイスラム教国という理由から酒類などがやや高いことや華々しいナイトライフがないことを除けば、タイとさほど変わらないとみてよい。住まいは一般的に1カ月単位というような短期契約をしにくいところが難点ではある。家賃は中心部で2000リンギ(約5万5000円)、郊外ならば1000リンギ程度(約2万7000円)でOK。ただ、ワンルームなど単身者向け物件は少数だ。若い層には「タイと比べ退屈」というマレーシアだが、お隣の都市国家シンガポールとは異なり、アジアっぽい雑踏も残っている。スローライフには絶好の滞在候補地だと筆者は感じている。

【2位】台湾
滞在時期 2001~03年
滞在都市 台北

◇溶け込みやすい「親日国」

 年中暑い熱帯ではなく、適度に四季がある場所を求めるならば、台湾という選択も悪くない。台湾は正式には「中華民国」と称し、日本が中国と国交正常化してから外交関係がない。とはいってもそれは建前。相互のノービザ拡大で、日台間ではおびただしい観光客が行き来するなど関係は密接だ。
 こうした中、台湾当局は日本人ロングステイヤーを呼び込もうと、ノービザの期限を90日間に延長し、ますます気軽に滞在できるようになった。
 台湾の良さはこちらが気恥ずかしくなるほどの親日的ムード。日本の生活習慣を持ち込んでもさほどギャップがないことなどが挙げられる。セブンイレブン、ファミリーマートなどのコンビニの密度が世界一と言われるほどだし、デパートといえば三越、そごう、高島屋など。食べ物はバンコクに比べ、外国料理の味に多少難があるものの、豊富な台湾料理は十分においしい。日本料理の味付けが一般に甘めなのは、日本料理が庶民層に浸透して現地化していることの証左だ。その気になれば、電車とバスで1時間も行くと、日本統治時代に開発された温泉がある。週末に山の緑を眺めながら露天風呂というのが、週末のぜいたくな習慣だった。
 住まいは台北が割高だが、地方に行くとずいぶん安い。台北ではワンルームがそれでも日本円で3万円ほどといった感覚だ。契約はバンコクのように1カ月単位というのは無理で、交渉次第で3カ月からといったところか。安い物件は不動産屋を介さず、家主が直接貸すケースが多い。住みたい場所で道路脇にある公共掲示板に注意を払うのがコツだ。
 問題はどこでもそうだが言葉。日本語ができる人が多いとはいえ、中国語は多少なりともできないと不便だろう。ただ、台湾の人々は概して親切なので、話そうとする努力があれば十分。日本的な便利さを求める向きに筆者の一押しは台湾だ。

【3位】シンガポール
滞在時期 2001~03年
滞在都市 シンガポール

◇都市型生活者におすすめ

 タイ滞在者にとって、シンガポールと言えば「きれいだが退屈な街」というイメージが強い。それはある意味で当たっているのだが、面積の小さな島国は東南アジアで例を見ない効率と機能性を重視した国づくりで群を抜く。アジアでも東京のような都市暮らしを、という人にとっては住み心地が良い場所だろう。
 シンガポールは交通費など民生費用こそ安く抑えられているが、生活費は東南アジアでは最も高い部類に入る。それは都市生活を営むことで当然期待される効率や機能性に対する代価だと考えたほうが良い。
 シンガポールは華人中心の多民族国家で人口は480万人ほど。都市国家繁栄のカギは実は移民。実際に永住権(PR)の取得が容易である点は特筆すべきだ。要は一定の税金を収め、職業的にシンガポール経済に貢献すると認められる「高級人材」は広く受け入れようという政策スタンスなので、数年の滞在で申請が認められるケースが多い。基本的にはリタイヤ組ではなく、現役組が仕事をバリバリこなしながら、南国ライフを満喫したいといったケースにこの国は向いている。家族で移住しても英語教育が基本のシンガポールは悪くない選択だろう。
 難点は国土が狭い点、酒、たばこ、乗用車価格が政策上かなり高い点などか。国土が狭い分、余暇はどうしても国境を越えることになる。住まいは中心部で 1000シンガポールドル(約6万6000円)以上と割高だが、郊外でシンガポール式の公団住宅「HDB」の賃貸物件を探せば割安だ。ゴルフならばマレーシア、インドネシア領の島々といった具合だ。特にマレーシア国境は毎日おびただしい出勤者が行き来しており、日本人滞在者も週末に物価の安いマレーシアに通うのが日常になるはずだ。

【4位】ベトナム
滞在時期 2004年
滞在都市 ホーチミン市

◇生活インフラはまだまだ

 ノービザが実現して、気軽に旅行できるようになったベトナム。日系企業の進出も増え、現在は多少状況が変化しているかもしれないが、快適な生活を送る上ではインフラ整備がまだまだとの印象が否めない。
 滞在先としてはハノイかホーチミンという選択になろうが、南北に細長い国だけに風土も大きく異なる。筆者が滞在したホーチミン市は一般的に人々が開放的とされ、活気という意味でもホーチミン市に軍配が上がるだろう。あっさりとしたベトナム料理は日本人向きだ。最も有名な「フォー」(米麺)は北部中心で、ホーチミン市では見かける頻度が低いなど地域差も大きい。
 生活者の視点で不便なことは多い。まず、住居面では外国人の滞在に適した物件が供給不足だ。日本人の場合、ホーチミンでは中心部のレタントン通りという地区に集中して居住する傾向があるが、バンコクではいくらでもあるコンドミニアムは限定され、家賃も高い。安い物件はないのかと探すと、ショップハウスの上を改造した外国人向けのアパートがある。筆者が滞在当時は月200~400ドルほどが相場で、食事付きというところが多い。ただ、こうした物件は往々にして単身者向きで、家族での居住には向かない。日用品は最近大型店もでき始めているが、筆者が滞在した当時はコンビニの概念がなく、ちょっとした買い物に意外と遠出を強いられることも多かった。
 滞在に必要なビザは6カ月までのマルチビザが簡単に取れる。ノービザからの書き換えも可能で、延長も出国の必要はない。この点は3カ月、半年ごとに観光ビザを取り直すタイに比べ格段にラクだ。
 もう一つの関門はベトナム語。タイ語よりも発音に対し寛容ではなく、いい加減な発音では通じない。長期滞在するならば、一念発起して外国人向けのコースで基礎をしっかり学んだほうがよいかもしれない。生活レベルのベトナム語を駆使すれば、不便さも半減するはずだ。


【5位】中国
滞在時期 2008年
滞在都市 大連(遼寧省)、珠海(広東省)

◇食の天国

 滞在都市が北京、上海といった大都市でないことには理由がある。以前、会社の駐在で上海、香港などに滞在したことがあり、人口13億の人いきれに疲れたからだ。今や、日系企業の進出が相次ぎ、中国の沿海部ならばどこでも日本人がおり、都市ごとに生活環境は異なる。筆者は1カ月単位で上記2都市に滞在してみたが、地方都市ならではのゆとりと生活面での便利さを兼ね備えた都市はどこかと考えた末でのチョイスだった。
 大連は海に面した風光明媚な都市。中国にありがちな排気ガスだらけのイメージとは異なり、海風が心地よく、海の幸にも恵まれている。住まいは旅行者向けの短期アパートが良いのではないか。探してみたら和風の部屋が見つかり、畳にふとんというまるで日本にいるような生活をしていた。家賃は2000元(約2 万8000円)だった。大連クラスの街であれば、カルフールなど量販店が進出しており、今や日本人の生活に必要なものはだいたい手に入る。
 珠海はもっと小ぢんまりといた街だ。場所はマカオとボーダーを接する広東省にある。ここは中国本土に住みながら、気軽に香港、マカオに出られるので便利なことこの上ない。日本人のノービザ期限は15日までなので、ロングステイには一般にビザを取得する必要があるが、広東省ならばノービザで入っても、出入りを繰り返せば1~2カ月なら不自由はなかろう。アパートもマンションの一室を1カ月2000元で借りることができた。
 とはいえ、中国暮らしは結構疲れる。タクシーに乗ったり、買い物をしたりするとき、理不尽な習慣やぼったくりなどで不愉快な思いをすることも多々あろう。「随地吐痰(どこでもたんを吐く)」といったマナー面が我慢できないという人もいる。それに一般には外国語が通じないこともハードルだ(いざとなれば筆談は可能だが)。そこを快適に過ごすコツは、自分に危害が及ばない限り、いちいち気にしないことに尽きる。疲れる原因はそこにあるからだ。
 そんな中、魅力を求めるとしたら、やはり「食」だ。日本で知られる中華料理などほんの一部分にすぎない。基本的にどこに住んでも、中国全土の地方料理店がある。上海、四川、広東などといったメジャーな料理から内モンゴル、ウイグルといったマイナーな料理までよりどりみどりだ。滞在中には貪欲にいろんな料理にトライしてほしい。ロングステイはややハードだが、旅行では見えない中国の奥深さが見えてくるはずだ。

【6位】韓国
滞在時期 2007~08年
滞在都市 ソウル

◇ややこしい住居システム

 いわゆる「韓流」ブームで韓国を訪れる日本人は爆発的に増えた。しかし、実際に住んでみるとどうなのだろう。
 いざ住みたいと現地に行って、まず戸惑うのは住居問題。システムが独特だからだ。物件を借りる場合、日本円で数百万円単位という高額の保証金を支払う「伝貰(チョンセ)」というシステムが主流だ。家主は高額の保証金を運用して金利収入を得る。その代わりに月額家賃は安く抑えられ、さらに高額の保証金を積めば、月額家賃自体はタダになるケースがある。保証金は日本の敷金とは異なり、普通は解約時に全額が戻ってくるのだが、契約時に多額の現金を工面しなければならない点でハードルが高いのだ。
 となると、どこに住むのか。単身ならば下宿、考試院(コシウォン)というタイプの格安の住居が選択肢になろう。下宿は説明の必要もあるまい。最近は韓国語留学に向かう日本人が急増し、大学街には外国人向けの下宿も多い。考試院というのは最低1カ月単位から住めるワンルームで、本来は受験生が勉強に集中するための個室を指すが、気軽に住めるため、外国人や失業者などの利用も多い。家賃は30万ウォン(約2万2400円)からが目安。しかし、いずれも部屋は狭く、単身者以外には不向きだ。このように韓国では住環境の解決に労力を要する。
 実際の生活はどうか。周りが韓国語だらけという点を除けば、物価にせよ、生活レベルにせよ、日本とさほど差がない。ソウル市内は電車網が発達していて、まるで日本の首都圏に暮らしているようだ。食事は韓国料理はさすがに本場の味でうまいのだが、外国料理が貧弱だ。日本料理のレベルの低さは恐らくアジアの主要都市で最低レベル。その点ではバンコク暮らしがつくづく幸せだと感じる。
 実際ロングステイで韓国を選ぶ人は少数だと思うが、「韓流」マニアが高じて、現地に住んでしまっている人も見かける。
 
【筆者紹介】宮城英二 元新聞記者のフリージャーナリスト。39歳独身。インターネットベースの執筆活動をしており、「住所不定」の生活が可能なことをよいことに、1年の半分をアジアで暮らす生活を続けるプチ・ロングステイヤーだ。宮城県出身。

〔表〕
概算月額生活費比較
※ワンルームなど安価な不動産物件を賃貸し、現地食中心の食生活で、公共交通機関を主に利用。筆者実績。日本円換算。
マレーシア 5万~7万円
台湾  7万~9万円
シンガポール 10万~13万円
ベトナム 5万~7万円
中国 5万~7万円
韓国 9万~12万円
《newsclip》

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