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〈タイ業界事情〉 どこへ行く、日本の金型部品業界

2011年5月17日(火) 18時59分(タイ時間)

KANSEI CO., LTD.
川内英二 氏 (President)

 近年かつてない不景気を巻き起こしたリーマンショック。その後の急激な回復を見ると、風評被害の感が無きにしもあらずだが、これを機に筋肉質な経営体制を築いた企業は少なくなかったはずだ。リーマンショックはあらゆる業界で経費削減を促した。景気が回復した現在でも価格下落は続き、我々が取り扱う金型部品も例外ではない。そして今回の東日本大震災。金型部品業界で中核をなすのは中小メーカーだが、受けた被害の度合いによっては日本での復興ではなく、製造拠点の海外移転という選択肢もあろう。

1つの金型に複数メーカーの部品

 リーマンショックからの立ち直りは、どの企業も早かった。弊社も2010年2月からV字回復し過去最高時の売り上げに戻った。しかし、厳しい状況は今でも続いている。価格だけは底打ちしたまま、回復の気配がないのだ。むしろ以前にも増して、見積り業務に追われるようになった。

 金型が内部に備える部品は全て同一メーカー、というのがこれまでの常識だった。部品数は1台で数百にも達するが、同一メーカーなので見積もりは1セットで済む。しかし現在、この常識が崩れている。1台の金型の中で、パーツごとに複数メーカーの部品が使われ始めているのだ。弊社取り扱いの製品と、同業他社のそれが一緒に使われるということを意味する。オスとメスでさえ、メーカーが異なることも珍しくない。見積りがさらに増え、売り上げ維持がさらに難しくなって当然だ。しかし、そのような価格の下げ止まりと同業他社との混用は、プラス評価であるともいえる。価格を落としても、他社製品との混用さえ可能という、品質に対する最大限の評価と考えることもできる。

東日本大震災の影響

 東日本大震災は日本に留まらず、タイの製造業にも影響を及ぼしているのは、周知のとおりだ。日本からの部品調達が困難になると予想し、地震・津波発生の2―3日後には購入ルートを変え、当面の危機を乗り越えるための協力を取り付けた。感謝すべきは、顧客側の理解だ。金型部品の調達不可は生産ラインの安定稼働を脅かすものだが、多くの顧客が納品の遅れに目をつぶってくれ、キャンセルは皆無だ。当の日本はもっとシビアだと聞いてるので、異国の地での日本人のつながりと日本への思いを感じさせられた。

 日本の金型部品業界が受けた影響は多大だ。世界最先端の技術で部品を作り上げているのは、大手メーカーもさることながら、多くは中小メーカーだ。東日本でかなりの中小メーカーが被災しているが、立ち直れる力をどれだけ蓄えているのだろうか。日本での復興ではなく、海外での新たな拠点作りに乗り出すメーカーが出てきて当然だろう。進出先はやはり、東南アジア諸国。例えばタイだけに集中するのではなく、その国や地域に特化した産業に合わせて、バランスよく散らばっていくのではなかろうか。拡散することによって、物流でカバーし切れない為替の問題もリスクヘッジできる。今回の大震災は海外を拠点とする我々にさまざまな教訓を与えた。

進むか、金型部品メーカーの海外移転

 一昔も二昔も前、日本からの金型部品の輸入は週1、2便にとどまっていた。その程度のスピードで十分に対応できた時代だった。しかし今は、毎日の便で取り寄せても間に合わない。1日どころか、飛行機が飛ぶ6―7時間が惜しまれる時代となり、日本との距離は一向に縮まらない。日本からの輸入ではいつまで経っても、価格の問題が解決しない。弊社取り扱いの製品もすでに、日本製は6割にまで落ちてきた。あらゆる要素を考えると、行き着くのやはり海外移転だ。今回大震災の発生とその被災で、日本の金型部品メーカーがどのような判断を下すのか……、製造業全体が注目しているといっても過言ではない。

KANSEI CO., LTD.
住所:3300/114-115 22nd Flr., Elephant Tower (B) Phaholyothin Rd., Chomphon, Chatuchak, Bangkok 10900
電話:0-2937-3381~4
ファクス:0-2937-3385~6
Eメール:kanseijp@kansei.co.th
《newsclip》


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