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タイ大洪水、そのとき企業は? 4社インタビュー

2011年12月28日(水) 15時36分(タイ時間)
【タイ】タイ中部を襲った今回の大洪水では工業団地7カ所、700社以上の工場が浸水した。大規模な災害に際し、企業は、工業団地当局は、どう対応したのか。被災したロジャナ工業団地(アユタヤ県)と入居企業3社に、復旧作業が動き始めた11月下旬に話を聞いた。

Asian Honda Motor Co., Ltd.
(アジアオセアニア地域事業統括会社)
前原 英人 氏 (Assistant Coordinator - PR)

 浸水は10月8日に始まり、水位は最高時で2メートル前後まで上がった。思っていたよりもスピードは速かった。工業団地の排水作業の恩恵もあり、水はかなり低水位となっているが、依然として残っている状況。アユタヤ市の北にあるサハラタナナコン工業団地が10月4日に浸水、翌5日には冠水していたので、ロジャナ工業団地の被災もありうると想定していた。工場周辺に土のうを積み、完成車を付近の施設に避難させるなど、対策は行っていた。
 工場が水没してしまったこと自体ショックだったが、これほどの水量が押し寄せたのは想定外だった。被災により、グローバル・オペレーションに影響を与えてしまったことが悔まれる。水が完全に引かないと具体的な被災の程度は確認できない。もちろん復興・復旧のシミュレーションは立てているが、今後の見通しはつかないのが現状だ。ただ、このような試練は今年3月の東日本大震災の際にも経験済みで、東日本大震災での経験を少なからず活かせたと考える。取引先各社の協力を得て代替生産も進み、生産についてはある程度カバーできてきたが、まだ課題は残る。
 団地とはこれまでも、連絡を密に取ってきた。洪水の主因となったタイ北部でのダムの満水についても、当局の発表などで早い時期から情報を得ていた。災害の再発を想定し、工業団地と共に対策を考えていきたい。そして一日でも早く、タイにとどまらず世界中のお客様への商品の提供を再開したい。


Oki Data Manufacturing (Thailand) Co., Ltd.
(沖データのプリンタ主力生産工場)
宗像 正博 氏 (President)

 10月6日午後、アユタヤ県知事から避難要請があったとロジャナ工業団地から連絡があった。まずは従業員1800人の安全を確保するためバスをチャーター、迅速に避難させた。その後、水がどこまで迫って来ているかの確認を続けた。7日まで団地への浸水はなかった。8日夜に団地のフェーズ2、4で浸水。9日未明、水は弊社が入居するフェーズ1に到達。10日朝8時の出勤時にはいつも利用する団地入り口のゲートAも浸水、通行できなかった。
 アユタヤでは1995年にも大規模な洪水が発生したが、ロジャナは水に囲まれながらも持ちこたえた実績があった。今回も被災は避けられるという期待はあったが、前回の規模をさらに上回るものだったようだ。アユタヤ市の北にあるサハラタナナコン工業団地で浸水が始まったのは10月4日。そこからロジャナまでの水のスピードが異常に速く感じられた。
 弊社は工場2階建て、倉庫等1階建て。重要部品は早い時期に工場2階に上げておいた。水が迫ってくるのに伴い、さまざまなものを可能な限り2階に避難させたが、全てとはいかず、1階に残してしまったものも多い。LED(発光ダイオード)製造装置とクリーンルームが水に浸かってしまったのがショックだ。水位は最高で3メートル前後。1階床が地上1・5メートルの高さだったので、2階は無事だった。現在は水が引き、乗用車で工場まで行ける。
 世界各地へのサプライチェーンの早急な復旧と、この地で長らく培ってきた実績とノウハウを考えると、拠点移設は非現実的。来年1月から工場2階で操業を部分再開、3月後半までに完全復旧を考えており、前倒しの努力も続けている。2階での生産規模については、通常の50%を確保したい。
 今後についてはまず、政府に対してダムでの確実な治水管理を要請したい。大雨などの要因で洪水の危険が発生したとしても、チャオプラヤ川頼みではない東西からの海への排水が可能な水路を確保するなど、危機管理を踏まえたインフラ整備を望む。工業団地には敷地を囲む堤防、団地内の運河の堤防や防水シャッター施設などのさらなる充実をお願いしたい。もちろん自社としても可能な限りの防水策を採っていく。いずれも次の洪水が心配される来年8月末までの実現が望ましい。


MAI TAN Co., Ltd.
(食品製造・飲食業、グリーンティーのイチタン)
タン・パーサコンナティ氏 (President & CEO、外食チェーン・緑茶飲料大手オイシ創設者)

 36億バーツを投じて建設中だった工場は9割完成、生産ラインの試運転を始めていた。グリーンティー「イチタン」のイチは日本語の数字の1、タンは自分の名前。社名に合わせて11月11日の工場稼働を計画していた矢先の被災だった。
 今回の災害は誰のせいでもない。強いていえば、我々人間が自然との付き合いを疎かにしてきた報いだと思っている。今このタイミングで被災したのは不幸中の幸いだ。これが事業を拡張していたであろう10年後だったら、損失規模は比べものにならない。
 ここで事業を立て直し、拡張していく。従業員を解雇することもないし、給与も全額払っていく。「試練が自分を強くする」と信じている。前向きだとよく言われるが、東日本大震災にも屈しない日本人を見習っての考えだ。


Rojana Industrial Park Public Co., Ltd.
ロジャナ工業団地運営会社

 ロジャナ工業団地は11月末に一部を残してほぼ排水を完了し、陸軍の協力を得て清掃中だ。電気は2カ月半後、上水道は3カ月後の完全復旧を目指す。
 団地の堤防は輪中堤で、高さ海抜5・1メートル(現地の海抜は2・6メートル)。操業からの23年間で大規模な洪水に何度か見舞われ、その中で最大規模だった1995年の洪水でも浸水を阻止したが、今回の洪水は5・4メートルに達した。将来的に同規模、もしくはそれ以上の洪水の発生を想定し、既存エリアで65キロとなる堤防の改修を進めている。
 入居企業の速やかな操業再開、団地で働く従業員のいち早い雇用復旧に向けて最善を尽くす。今回の被災が団地のみならずアユタヤ県、タイという国に経済的な影響を与えていることを自覚し、タイや日本といった国家レベルの支援を要請しつつ、入居企業と共に精一杯、復興に努力していく。
《newsclip》


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