邦人援護活動で外務大臣表彰、日本人患者も受け入れる介護施設
1954年チョンブリ県シラチャー生まれ。タイ有数の進学校トリアム・ウドム・スクサー高校を卒業後、医学で知られるマヒドン大学に入学する。1年後、日本文部省からの奨学金を得て日本に留学。東京外国語大学で1年間日本語を勉強、京都大学医学部で6年間学ぶ。卒業後は京大附属病院で1年間の産婦人科の研修、その後タイに帰国。マヒドン大学附属ラマティボディ病院で研修医を1年間、都内私立病院で11年間、現在のバンコク病院は20年近くに及び、日本人クリニック医長を務める。2008年には自らの介護施設「Elderly Care Nursing Home」を開設、2009年にはタイにおける邦人援護活動の功績により、「平成21年度外務大臣表彰」を受賞。
治療後に始まる介護
——バンコク病院で日本人クリニック医長を務めるかたわら、自ら介護施設を開設されているとのことですが?
医師として長年さまざまな患者さんを診察、治療にあたりながら、何とかしなければならないと思っていたことがありました。疾病によっては後遺症が残り、退院して自宅に戻っても1人で生活できない、面倒を見てもらえないといった方たちが数多くいますが、タイにはそのような方たちを受け入れる施設がほとんどないということです。
言われた病気を治すことだけが医師の義務ではありません。後遺症を抱える患者さん、治療が困難な病気と闘う患者さんを率先して受け入れる施設が必要と感じ、2008年に「Elderly Care Nursing Home」を開設しました。
——どのような方たちが施設を利用されているのでしょうか?
脳梗塞などの脳卒中で倒れて治療後も後遺症が残っている方、さらには合併症を引き起こしてしまっている方、アルツハイマーなどの認知症を抱えている方など、1人っきりの生活や面倒を見てくれる家族がいないなど、自宅で療養するのが困難な方たちです。
施設名のとおりシニアがほとんどですが、若い方も入院しています。入院期間に制限はありません。5年という患者さんもいらっしゃいました。日本人で施設を利用している方は常時3名ほど、長い方で3年になります。
邦人援護で外務大臣表彰
——日本人患者の介護で外務大臣表彰を受賞していらっしゃいますが?
大きな出来事として2つありました。1つはカンボジアで倒れた若い日本人の方の看護です。同国の国境の町からタイ側の国境の町に搬送され、そのまま同地の病院に運び込まれました。在タイ日本国大使館の関係者より連絡と援護の依頼を受け、病院を探し当ててバンコクまでの移送に必要な救急車を手配、治療および看護を引き受けました。
もう1つはバンコクで心臓病を患った60代の患者さんの受け入れです。病院で治療を受けて退院、自宅療養となったとき、帰る先がない、という問題が発生したため、介護施設で引き受けました。入院中、患者さんに代わって日本の年金の状況を確認、最終的には受給できるようになり金銭的な問題も解消しました。このような日本人の患者さんへの対応で2009年、外務大臣表彰をいただきました。
——タイの介護施設事情というのは?
日本の老人福祉施設や老人ホームに相当する施設はありません。シニアに特化した病院が建てられると話題になっていますが、介護施設ではなくあくまでもシニア向けの病院のようです。デイケアやデイサービスのような介護施設も、バンコクの渋滞事情や医療事情を考えると実現は難しいでしょう。
「Elderly Care Nursing Home」に似た施設は少数ながらありますが、完全介護ではありません。そもそも医療関係者が不足しており、医師の診察も月一がせいぜいという施設がほとんです。
タイでも始まった高齢化社会
——「Elderly Care Nursing Home」の態勢は?
近接する病院からの看護師や介護師が交代で勤務してくれています。これによって必要な人材を確保して24時間体制を維持。施設規模は現在30床、看護師、介護師、医師などスタッフは20名です。酸素吸入などの処置にも対応、医師の診察も定期的に行なっています。
看護師や介護師が足りなければ、24時間介護は無理です。特に認知症の患者さんは常に気をつけていないと、身の回りを汚してしまったり、暴れ出してケガをしたり、物を壊してしまったりします。何度もベッドから落ちて同じところをケガするといった事故は珍しくなく、縫ったばかりのところをまたぶつけて血を流しながら入院してきた患者さんもいます。大人が暴れ出すと力があるので、子どもを扱うようにはいきません。
医師の問診や診察が月一ペースでは合併症への対応は困難です。「Elderly Care Nursing Home」でも、高血圧と糖尿病を患っている患者さんがさらに骨折。食欲低下、疲労などでベッドから動けなくなってしまったことがあります。心配になって話を聞いてみると、あまりに疲れるので下半身のマッサージを受けたとのことでした。
この病状でマッサージを受けたとなると、心配されるのは合併症です。診察していみるとやはり肺塞栓症を併発していました。このように、医師をすぐに呼べる態勢でないと完全介護はできません。
——仕事とはいえ、みなさん大変なのではないでしょうか?
もちろん大変です。しかしタイもすでに高齢化社会が始まっています。今後さらに、シニアに対するケアで経験豊かな医療関係者が必要になってきますし、国としても介護システムの構築に乗り出していかなければなりません。
「Elderly Care Nursing Home」も空きは数床、ほとんど埋まっている状況です。退院しても戻って来られる患者さんもいます。このような介護施設がすでに求められているのです。
——歳を重ねていくに従って気を付けるべきことは?
自らの持病を把握しておくことです。年1回、定期的な検査を受け、薬の投与だけで済ませてはいけません。体は動かせるうちは動かしてください。
「Elderly Care Nursing Home」へは、空きがあればすぐに入院できます。決して高級感はありませんが費用は安く設定していますので、病気、けが、痴呆症などで長期療養が必要な方や、短期でも介護する家族が不在時などに利用いただいています。
——ありがとうございました
住所:67/43-47 Moo 7 Phaholyothin Rd., Anusawaree, Bangkhen, Bangkok 10220
電話:0-2552-7535~37 ファクス:0-2552-7539
日本語連絡先
携帯:081-815-0064
Eメール:renubol@yahoo.com
〈スペシャリストに聞く〉 レヌー・ウボン医師
2012年11月23日(金) 10時21分(タイ時間)
《newsclip》
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