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東南アジアのテロ地帯 タイ深南部ルポ(1) 副知事殺害

2013年5月24日(金) 19時54分(タイ時間)
 毎年4月13~15日はタイ正月(ソンクラン、水かけ祭り)。前後の週末を含め、タイは全国的に大型連休となる。

 南部国境県では毎年この時期になるとテロが警戒されるが、これまでの流れを見返す限り、タイの暦に合わせてテロが行われることは少ない。むしろイスラムの暦を知っていた方が、テロ発生を予想しやすい。タイの暦でテロ発生のパターンを読み解くならむしろ、大型連休の前がポイントとなる。

 日本から定期的に南部国境県の取材に訪れる知り合いのカメラマンが、3月下旬から現地入りしていた。彼は日本在住のカメラマンとして唯一、南部国境県のテロを何年も追う日本人だ。ソンクラン前でそろそろ大きなテロが起きる、もしくは散発的に何日も続く、という予想どおり、彼が現地入りしてからテロが起き始めた。ただ、狭い地域といえども日本の岐阜県ほどの広さはあるので、全てを網羅できない。大抵は、どこに行くにも均等な距離で動きやすく、町中では無差別な爆破テロが頻発するヤラー市を取材拠点にするわけだが、テロがパタニー県の海岸側やナラティワート県の山間などで起きたら、現場に着くまでに治安部隊の現場検証は終わっている。彼もヤラー市にいながら、各地で散発するテロの取材に間に合わず、「全て外している」とへこんでいた。

 そんな中、4月5日夜に合流。その日の昼間、ヤラー県のイサラー・トンタワット副知事が車で移動中に道路わきに仕掛けられた爆発物の爆発で死亡。知り合いのカメラマンはヤラー市でレスキュー隊と行動を共にしていたが、現場は山間部出ヤラー市から離れていたため、またもや行けずじまいだった。夜10時過ぎに彼と合流、2人でレスキュー隊近くのホテルに部屋を取り、敷地入り口のオープンエアのレストランで午前1時まで、取材のタイミングを取るのが難しいなどとさんざん話し込んだ。

 翌朝、レスキュー隊に顔を出し、控えのテーブルで時間をつぶす。テロは人々がせわしなく行き来する朝夕に起きることが多い。何か起きて負傷者が出ると警察や軍隊より先に駆け付けるのはレスキュー隊なので、同行を依頼していれば効率的な取材が期待できる。

 レスキュー隊自体は民間の慈善団体でタイ全国どこにでもあるが、ほとんど中華系で「善堂」を名乗っている。そのルーツはもちろん中国で広まった慈善団体だが、タイでは1950年代からの同化政策でアイデンティティの喪失を危ぐした中華系住民が、善堂という名で結束したのが始まりらしい。南部国境県では中華系のほか、イスラム系のレスキュー隊も活躍している。

 午前10時ぐらいまで粘ってテロなし。気分転換にヤラー県内やナラティワート県内を、目的もなく車で回る。夕方にレスキュー隊に戻るが、夜7時まで粘ってテロなし。「テロがなかったということは、死者も負傷者も出ない平和な日だった」と判断して、ホテルに引き揚げる。ツイッターでニュースをチェックしていたら、翌日には中央政府で南部国境県問題を担当するチャルーム副首相が訪れるというニュースが流れていた。
《齋藤正行》

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