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東南アジアのテロ地帯 タイ深南部ルポ(3) 危機一髪! 宿泊先で爆弾爆発

2013年5月24日(金) 19時54分(タイ時間)
東南アジアのテロ地帯 タイ深南部ルポ(3) 危機一髪! 宿泊先で爆弾爆発の画像
東南アジアのテロ地帯 タイ深南部ルポ(3) 危機一髪! 宿泊先で爆弾爆発
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 政府要人が南部国境県を訪れると威嚇というべきか歓迎というべきか、必ずテロが起こる。

 今日は夕方ぐらいには起きるだろうと見込んで、夕方からまたもやレスキュー隊で粘っていたが、午後7時になっても町中は平穏で、「もう帰ろうか」と連れのカメラマンと肩を落としながら引き揚げた。

 レスキュー隊から車で1分のホテルの駐車場に車を停め、ロビーに上がる。フロントで鍵をもらい、エレベーターに乗る。ドアが閉まりかけたとき、ムスリムの女性がエレベーターに近づいてくるのが見えたため、閉まるドアを開けようとボタンを押したその瞬間、「ボンッ」という鈍い音が外で鳴った。ムスリムの女性が驚いて目を丸くしている。直後に連れのカメラマンとエレベーターを飛び出し、そのまま持っていけば数秒の時間が稼げるのに、なぜか律儀にフロントに鍵を預け直してから外に出た。車まで戻り、「どうする?」と聞くと、「場所が分からないので車にしましょう」という答え。車のエンジンをかけて敷地から出ようとしたら、そこが現場だった。電話ボックスに爆発物が置かれたらしい。

 乗った車を直ちに停めて、街灯にキラキラと輝くガラス片を巻き散らし、木っ端みじんとなった電話ボックスに近づこうとして、2発目の爆発があるかも知れないと思いつつ、遠巻きに眺める。そこはいつも食事をしていたオープンエアのレストラン。顔見知りのウエイトレスが、「あんたたちね、今夜もいつもどおりご飯食べに来ていたら、死んでたわよ。あんたたちが座っていたテーブルの真横だもん」とケラケラ笑っていた。我々より自分が危なかったかも知れないのに、過去10年テロを見続けてきたせいか、すっかり慣れている。連れのカメラマンも「考えてみたら、爆発の2~3分前にここ通ってましたよね」。自分が巻き込まれなければ、みんな人ごとなのだ。

 レスキュー隊の救急車がやってきて、顔見知りの隊員が中から飛び出してきた。けが人がいないのを確認してから、一緒に来いと声をかけてくる。何カ所かで連続して爆発が起きたという。救急車にすぐさま乗って、近くのもう1つの現場に同行する。そこは連れ込み宿で知られたホテルだった。

 ホテル入口は火事のように煙を吹き出していて、レスキュー隊員も中に飛び込むのを躊躇(ちゅうちょ)していた。「誰かいるか!」と何回か大声で問いかけていると、2階から「私は大丈夫なんだけど、下はどうなっているの?」と若い女性の声が聞こえてきて、窓からは手だけが振られていた。客を取っていた最中なのだろうか、彼女の仕事はそのまま続くのだろうか。ここでは1人が爆発物の破片を受けて負傷していた。

 救急車で最初のホテルまで送ってもらう。爆発が起きて30分も過ぎたころに警察と陸軍の爆発物処理班(EOD)が到着、現場検証を始めた。警察無線からは、「水色のシャツで半ズボンの男を追跡中」といったやり取りが聞こえてきた。EODの姿を写真に撮っていたら、見たことのある警官が行き来していた。何年か前に同行取材したコマンドセンターの警官だった。声をかけると最初の返事が、「おお、日本人。オレも新しいカメラ買ったよ」と、手に持っていたカメラを自慢してきた。彼はコマンドセンターの中では爆発物処理も行うが、たいていは記録取りを担当している。今夜は全部で4カ所あったから、回って見ろという。「首相が南に下りてきていたから、今日はあると思っていたんだけど」、「要人が来るということで警戒が厳しくなっていて、爆弾を使うに使えず溜まっていたらしい。首相が帰った後に警戒が緩んだんで、全部使い切ったんだろう」。

 EODが現場検証が終えて、引き揚げはじめた。コードがちぎれて転がっていた受話器を持って帰ろうかと思っていたら、EODが最後に拾っていってしまった。

 連れのカメラマンと一緒に、3カ所目のテロ現場に向かう。こちらもホテルの前。現場検証が続いていたが、向かいの床屋ではものものしい外界を気にもせず、客が平然と散髪していた。4カ所目もホテル。入り口に寄りかかりながら立っていた女性が、「警察と軍隊は今、引き揚げたところ。周りの店は何カ所も狙われていたけど、とうとうここもやられちゃった」と疲れた口調で話し始めた。入口横ではテーブルとイスがバラバラになっていて、テーブルわきのゴミ箱に爆発物が捨てられたらしい。「水色のシャツで半ズボンの男がバイクでやってきて、ゴミ箱にものを捨てて去っていった」と女性が話していた。1人の者が何カ所も回っていったようだ。

 泊まっているホテルに帰る。入り口の電話ボックスを見たら、電話会社のスタッフが後片付けにやってきていて、寂しそうに立ちすくんでいた。

 翌朝もレスキュー隊に顔を出す。助手席側の窓とドアにいくつもの穴が開いたピックアップトラックが停まっていた。レスキュー隊員が、「お前たちが泊まっているホテルの前で爆発が起きたとき、通りがかった車だ。助手席の者が顔を負傷した」と話しかけてきた。負傷者が出たと聞いていたが、どおりで現場で見かけなかったはずだ。爆発をもろに受けながらも、そのまま止まらずに通り過ぎたのだろうか。昨夜はほかにもう2カ所、爆発物が発見されて、爆発前に処理されたという。爆発していれば6カ所同時テロになっていた。
《齋藤正行》


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