薮崎 敦子 医師
バムルンラード・インターナショナル Coodination Physician 医療コーディネーション部
(氏名の崎は正しくは「大」が「立」の字)
島根医科大学医学部、東京医科歯科大学博士課程卒。日本リハビリテーション医学会専門医。日本では静岡県浜松市でリハビリテーション専門医として広く成人のリハビリを担当、特に脳卒中後のリハビリに尽力。2013年2月よりバムルンラードで勤務。入院中・退院後の患者のサポートのほか、メールや電話での無料医療相談を受ける。
脳卒中のさまざまな症状
脳卒中(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血)には、さまざまな症状がある。「急に同じ側の手足がしびれる、力が入らない」「口がもつれて呂律が回らない」「言葉が出ない」「バランスが取れずに真っすぐ歩けない」「めまい、嘔吐、頭痛」「片方の目が見えにくい、二重に見える」「意識がもうろうとする、意識がなくなる」「けいれん」などだ。脳のどの部分が障害されるかによって、症状も程度も変わってくる。また、片麻痺が起こることがよく知られている。脳からの指令は神経が交差して走行しているので、右脳がダメージを受ければ左手足に麻痺が出る。
発症時は損傷を受けた周囲の脳組織もショック状態となるが、その周囲の細胞が機能を取り戻すことである程度の回復が可能となる。しかし、一度でも破壊されてしまった脳細胞の再生は難しい。他の部分が新たなネットワークを作りながら、損傷部分の機能を代償していくことになる(脳の可塑性)。
リハビリ医療=生活の医療
脳卒中は、治療だけでなくリハビリも早ければ早い方が良い。脳卒中後の機能回復課程において、リハビリを早く始めるとその分だけ後遺症が少なくてすむ可能性が高い。麻痺した手足を動かさないでいると関節が固まってしまうほか、寝たきりでいると全身の運動機能が低下、機能回復を阻害する。「脳梗塞を発症したから、良くなるまで安静に」という対処は間違いだ。
リハビリテーションは“re-(再び、戻す)”“habilis(人間にふさわしい、望ましい)”“tation(状態にする)”というラテン語が語源で、「人間らしく生きる権利の回復」「自分らしく生きる」ことを意味する。脳梗塞という病気を認識し、その障害(麻痺など)の程度を評価し、残存機能の向上と能力開発に取り組み、退院後の生活でも家屋改修や介護・福祉用具を導入したり介護サービスを手配する、といった一連の活動すべてをリハビリと呼ぶ。決して専門職による機能訓練だけではない。リハビリは生活の医療だ。
リハビリに大切なのは環境づくり
リハビリは発症直後から始めなければならない。日本での脳卒中リハビリを例に取ると、「早期リハビリ」としてまずベッドサイドでの体位交換や関節可動域訓練から早期離床を図る。次に「回復期リハビリ」として、日常生活動作の自立を目指し、自宅に帰るための環境を調整していく。発症後6カ月までで、機能を最大限に回復させる期間だ。 そして自宅退院。「維持期リハビリ」として獲得した機能を最大限に維持し、再発予防を心がける。その後の社会復帰も大きな目標だ。
リハビリは理学療法、作業療法、言語療法など専門分野に分かれ、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカーなど多くの人々が携わり、それぞれが重要な役割を果たす。しかし、最も大事なことは「家族や周囲の受け入れ」と、本人が家庭や社会において「役割」を持つこと。そして場合によっては「価値観と人生観の切り替え」が必要だ。
脳卒中の危険因子 予防・再発防止には
脳卒中の4大危険因子
1) 高血圧:健康体と比較した場合のリスク(以下同じ)は3―9倍。目標は140/90mmHg未満。
2) 糖尿病:リスクは3―5倍。
3) 高脂血症(脂質異常症):リスクは2―3倍。
4) 喫煙:リスクは2―3倍。20本/日以上でリスクはさらに2倍に。
ほか、不整脈(心房細動)でリスクが2―7倍。メタボ・肥満、大量飲酒、睡眠時無呼吸症候群も注意が必要。
予防・再発防止は、生活習慣の改善が有効。
1) 食事:塩分控えめ(7―8g/日)、動物性脂肪や甘いものを控えめに。野菜を多めに。バランス良く。
2) 血圧管理:毎日のチェック。変動大はリスク上昇。
3) 禁煙:これまで吸っていた人も「禁煙5年」で吸わない人と同等のリスク倍率まで低下。飲酒は1合程度/日に。
4) 適度な運動:1回30分、週3回。脈拍100―120程度を目安に。
5) 脱水予防:1日1.5L程度の水分補給。
太っている人は減量を実践、ストレスを溜め込まず、十分な睡眠をとる。高血圧、糖尿病、高脂血症は速やかに治療し、服薬は処方されているものを正しく内服。
脳梗塞の再発は、1年以内が5―10%程度(10―20人に1人)、3年で20%(5人に1人)、5年で30%(3人に1人)。再発のたびに症状は重くなっていく。その一方で、適切に管理してれば、再発のリスクを7割程度は下げることができる。
タイでのリハビリ治療の効果
日本では、脳卒中の発症は年間約30万人、罹患者は約134万人、うち脳梗塞が約60%といわれる。「介護を要する病気」で見た場合、2010年厚生労働省国民基礎調査で脳卒中が全体の22%を占めてトップ(次いで認知症15%)、「寝たきり・濃厚介護の要因」としても脳卒中はトップで、その率は33%。
タイでのリハビリ治療はメリットもデメリットもある。メリットとしては「日数制限がない」「毎日でも外来リハビリが可能」「暖かいため体がこわばりにくく、日本ほどの厚着や入浴が不要」「マンパワーを確保しやすい」などがある。
デメリットとしては第一に、「母国語でコミュニケーションが取れない」点が挙げられる。言語のリハビリは特に難しくなる。次いで「仲間を見つけにくい」「介護用品や身体障害者に配慮した施設が少ない」など。タイではさらに、治療費に上限がない。
大事なのは自らの健康管理。自身の現状を知り、1つでも危険因子を減らすことだ。
Bumrungrad International Hospital
住所:33 Sukhumvit 3, Bangkok 10110
日本語直通番号:0-2667-1501
日本語ファクス:0-2667-2473
日本語Eメール:infojapan@bumrungrad.com
どうしても知っておきたい脳梗塞-2 ~バムルンラード・インターナショナル健康セミナー第1回第2部より~
2013年8月9日(金) 14時24分(タイ時間)
特集
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- ├不妊治療 バンコク病院バンコク不妊治療センター Prof. Somboon Kunathikom, M.D [ 2017年5月16日 22時42分(タイ時間) ]
- └睡眠障害 バンコク病院 Jakrin Loplumlert, M.D. Neurologist Sleep Physician [ 2017年3月8日 00時16分(タイ時間) ]
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