在タイ日本国大使館およびアジア邦人医療支援ネットワーク共催、バンコク病院協賛
「平成25年度メンタルヘルス医療講演会」より
うつとは、いわゆる現代型うつとは
木下利彦 関西医科大学精神神経科学教室教授
* 本文中、出典が明記されていない統計結果や引用は全て講演会で発表されたもの
精神疾患が社会に与える影響
疾患統計というとこれまで、死に至る病気をまとめたいわゆる死亡統計がほとんどだった。しかし最近は、「この病気にかからなかれば、その人は国家および経済に対してより貢献できたであろう」という切り口の統計が発表されるようになってきた。そのような統計で、国家的および経済的に「損失が大きい」と判断されるの疾患は精神科。全体の30%を占め、中でも「うつ」が多いという。世界保健機関(WHO)などの統計を見ると、うつ病は今後さらに増えて社会により影響を及ぼすようになり、2030年には全世界で3位、高所得国に限るとトップにランクすると予想される。
うつ病は自殺に発展することがある。警察庁の統計によると平成24年(2012年)の自殺者は2万7858人で、3分の2以上が男性。1998年を境に急増しているが、増加のほとんどは男性だ。日本は現在、ロシアに次いで自殺が多い国。うつ病に打ち勝つためには「希望」を持つことが大切だが、日本はいろいろなものに恵まれているが希望だけはないといわれる。その中でも、「友人が多い」「子供のころ家族から期待を受けていた」「挫折を体験している」といった条件を持ち合わせている人は、希望を持ちやすいという。
日本は江戸時代、鎖国によって外との接触を断絶し、国内では個人の成長を徹底的に押さえ付けた。壇家制度などは厳しい管理統制の良い例だ。「個」の十分な成長が認められないから、おのずと集団で行動していくことになる。それは戦後の発展に大きく寄与したが、バブル崩壊や急激なグローバル化など1990年後半より、集団の成長さえ望めなくなってきた。このような国の成り立ち、社会制度、経済的な背景が日本人のうつ病や自殺に大きく影響しているといわれる。
成熟する時代、増える未熟な若者
うつ病は「不安定」を原因に引き起こされることが多いが、現代社会にはさまざまな不安定が存在する。分かりやすい例を挙げると、職場の終身雇用の崩壊だ。非正規雇用が増大し、正規雇用者に責任が集中して過剰労働を引き起こす。正社員は「仕事の疲れが絶えない」状況に陥る。家庭内でいえば結婚だ。現在の20代の若者は25%が未婚のまま一生を過ごし、結婚しても3分の1が離婚、同一配偶者と一生を過ごすのは半分と予想される。学校の「いじめ」もしかり。いじめは、子どもたちのコミュニケーション能力の高低によって形成される「スクールカースト」に関係するが、「命の大切さ」を教えて「自殺しない強い人間」を育てる、などと発言する教育者たちが見かけられる。いじめの本質が捉えられることなく、教育の場さえ不安定だ。
時代が成熟すると、未熟な若者が増える。生きていくための技を得ることなく衣食住が得られるから、努力しなくなる。その分だけ「自分探し」の余地が生まれ、自分を探していながら結局は未熟なために何も決められない。社会の規範に逆らうのみとなる。引きこもり、ルーズソックス、かかとをつぶした靴の履き方、歩きながらの飲食は、「社会性の喪失」と「家の中化現象」の現れだ。仲間だけに通じる簡素なコミュニケーションが維持されていく。食の崩壊も良い例だ。食とは社会性の基本で他者と快楽を共有する装置だが、今やファストフードなどの発展が他者との交わりを阻害している。
そのような現代社会の中、良い自己、悪い自己の統合、いわゆる自我統合が不十分となる。本来は矛盾なく統合されて大人になっていくのだが、矛盾した側面を合成できずに切り離したままとなる。原始的な理想化、衝動のコントロール不可などが起きる。
励ましはうつ病を悪化させるか、それとも改善させるか
うつ病は大きく「従来型」と「現代型」に分けられる。従来型は中年より上の世代に多く、真面目、几帳面、良心的といった評価を受ける人に起きやすい。「仕事に達成感を見い出せない」「悪いのは自分だ」と、常に己を責める人たちだ。一方、現代型は若者に多い。これまで説明してきたような人たちだ。「自分に合った仕事が無い」「やりがいを見い出せない」「チャンスを与えてもらえない」などと適正にこだわって転職を繰り返し、「根拠なき自信とプライド」で不満のみをあげつらう。
現代型うつ病の治療は簡単ではないが、原因となる「認知の歪み」を正すことが大事だ。「そう考える根拠はどこにあるのか」を探し、「だからどうなるというのだ」という結果を考え、「別の考えはないのか」と代案を探る。職場では上司が何事も急かさず、叱った後にはほめて、周囲の者と同様に扱う、といった基本的な指導が必要だ。また、「うつ病の人を励ますと逆効果だ」といわれてきたが、これは従来型に対してであり、現代型に対しては励ましたりほめたりすると、本人が自信を持ちはじめ病状が改善することがある。
ちなみに抗うつ薬は、モノアミン・トランスポーターの阻害作用、細胞内情報伝達系(Gタンパク質、MAP2、c-fos、zif、CREB)への作用、BDNF、NT3などの神経栄養因子増加作用、海馬神経新生促進作用がある。
予防10カ条は以下のとおり。
1 余暇には必ず休みを取る
2 残業をなるべくしない
3 休日は家庭に仕事を持ち帰らない
4 規則正しい日常生活を心がける
5 つとめて多くの余暇をもつ
6 日頃から運動や趣味を大切にする
7 家族とのコミュニケーションを大切にする
8 地域社会に密着した生活を目指す
9 ボランティア活動に生きがいを見い出す
10 人間ドッグなど健康診断を受ける
バンコクでうつになったとき
Bangkok Hospital バンコク病院
Apisamai Srirangson, M.D. (Director of Bangkok Mental Health Rehabilitation and Recovery Center (BMRC) Psychiatrist)
BMRCは精神的な病気、薬物やアルコールなどへの依存、心の問題に直面する人を助けるため、メンタルヘルスないし中毒に対する治療を包括的かつ総合的に行うセンターが近々開設されます。人生の選択を自ら行い、ご本人の可能性を最大限に引き出して大望を追求できるよう、回復への手助けを行います。
バンコク病院 ジャパン・メディカル・サービス
2 Soi Soonvijai 7, New Petchburi Rd., Bangkok 10310 電話:0-2310-3257
Eメール:jpn@bgh.co.th ウェブサイト:www.bangkokhospital.com
Bumrungrad International Hospital バムルンラード・インターナショナル病院
百武 加恵 医師 (内科外来・健康診断センター)
日本語で相談する相手を探すのが難しいタイで、バムルンラード・インターナショナルはまず、日本語でご相談をお受けいたします。日本人の医師が適切に対処。症状を正確に把握し、必要に応じて専門医を紹介いたします。うつ病に悩まれるご本人だけでなく、ご家族など周囲の方がどのように接して良いか分からない、といったご相談に対しても、電話やインターネットなどで対応することが可能です。
Bumrungrad International (Clinic Building)
住所:33 Sukhumvit 3, Bangkok 10110 電話:0-2667-1501 (日本人顧客サービス課)
Eメール:infojapan@bumrungrad.com ウェブサイト:www.bumrungrad.com
Piyavate H ospital ピヤウェート病院
阿部 薫 氏 (心理士、バンコク日本人学校スクールカウンセラー)
うつのクライアントへのカウンセリング療法は主に、ストレス因の除去と認知行動療法の2本の柱で行っています。カウンセラー自身がストレス因の除去に介入することはできませんので、本人が自分自身でストレス因を除去することができるよう、心理的な支援を行っています。一方、このストレス因は取り除いたり、回避できるものばかりではありません。そのような場合、「ストレス因に対して本人の適応力を高める」必要があり、有効な方法のひとつに認知行動療法があります。認知行動療法は、私たちの「もの」に対する考え方やとらえ方(認知)に働きかけて気持ちを楽にしたり、行動をコントロールしたりする療法のことで、世界的にも注目されています。
Piyavate Hospital (TRIA, Piyavate Hospital 別館3Fl.,)
住所:998 Rimklongsamsaen Rd., (Rama 9), Bangkapi, Huaykwang, Bangkok 10310
電話:0-2660-2659, 0-2660-2652 (英語・タイ語), 0-2625-6756 (Ms. Muay 日本語 月~金=9時~18時)
Eメール:lalada.wha@piyavate.com (Ms. Muay 受付のみ) ウェブサイト:www.piyavate.com
こころのでんわ 02-392-2680
チャイヤデイロ和子 氏 (こころのでんわ代表)
今年で13年目となる、日本語による無料電話相談です。日・月・火曜日の10~16時。子どもから大人まで性別不問。駐在・出張、永住、留学、旅行といった全ての方から、家族、男女、人生、社会問題、対人関係、異文化適応、情報提供などのご相談をお受けいたします。
(財)Kokoro no Denwa Foundation
電話:0-2392-2680(相談) 0-2392-3750(事務局:電話&ファクス)
Eメール:bangkokkokorod@yahoo.co.jp
“うつ”とその対応の仕方 「平成25年度メンタルヘルス医療講演会」より
2013年11月8日(金) 18時52分(タイ時間)
《newsclip》
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