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反タクシン派が財務省・外務省占拠 タイ政府、バンコク全域に治安法発令

2013年11月26日(火) 02時55分(タイ時間)
財務省に乱入したデモ隊(25日)の画像
財務省に乱入したデモ隊(25日)
写真提供、Kanokwan Bunprasert
財務省に乱入したデモ隊(25日)の画像
財務省に乱入したデモ隊(25日)
写真提供、Kanokwan Bunprasert
【タイ】25日、反タクシン元首相派のデモ隊数千人がバンコク都内の財務省、予算庁、外務省、広報局を占拠した。デモを率いる野党民主党のステープ元副首相は財務省で座り込みのデモを続けると宣言しており、タイの財政、外交が麻ひする恐れが強まっている。

 デモ隊は25日朝、座り込みの反政府集会を行っていたバンコク都内の民主記念塔を出発し、徒歩と自動車で、テレビ局、軍司令部などへデモ行進した。財務省に向かったステープ元副首相率いる1団、約1000人は財務省の門の鍵を破壊し、敷地内に乱入。さらに別の1団が外務省に突入した。財務省を占拠したデモ隊は夜になり人数が増え、警察の推計で約8000人に達した。

 インラク首相は同日夜、地上波テレビ全局を通じて演説し、治安当局の権限を強化する国内安全保障法をバンコク都全域と近隣のノンタブリ県、サムットプラカン県のスワンナプーム国際空港周辺、パトゥムタニ県の一部に発令したことを明らかにした。デモ隊の強制排除は否定し、国民に対し、違法なデモに参加しないよう呼びかけた。

 国内安全保障法は軍主体の国内安全保障司令部(ISOC)に▽関係政府機関の動員▽特定の建物、地域への進入禁止▽外出禁止▽集会禁止▽移動禁止――などの権限を与えるもので、10月9日から、首相府、国会などがあるバンコク都内のドゥシット区、プラナコン区、ポープラープサトルーパーイ区の一部に発令されていた。

 一方、米国務省は25日、タイの情勢に懸念を示し、デモ隊、政府の双方に、暴力を回避し、法の支配を尊重するよう呼びかけた。また、報道関係者の安全を確保するよう求めた。

 25日のデモではフリーランスジャーナリストのドイツ人男性がデモ参加者に顔などを殴られけがをした。

 在タイ日本大使館は26日以降も反政府集会、デモ行進が行われるという情報があるとして、在タイ邦人、旅行者に対し、渋滞や不測の事態に備え、情報収集や安全確保に務めるよう呼びかけた。

 インターネットの交流サイト(SNS)などではタクシン派、反タクシン派の双方の感情的なコメントが飛び交っている。

 特権階級とバンコクの中間層、民主党の支持基盤であるタイ南部が中心の反タクシン派にとって、インラク政権は反王室の汚職政治家であるタクシン元首相が「教育水準の低い東北人」を選挙で買収して発足した政権で、教育のあるバンコク都民が政権を奪還することが「善」となる。

 一方、タイ東北部、北部の中低所得者が中心のタクシン派にとって、タクシン元首相は、これまで顧みられなかった地方、低所得者層に低額医療を行き渡らせ、農村・地方開発を進めた民主主義のリーダー。インラク政権は選挙で選ばれた正統な政権で、反タクシン派は軍事クーデターや裁判でタクシン派政権転覆を繰り返す特権階級の操り人形ということになる。

 こうした構図はタクシン政権(2001―2006年)末期から変わっていない。タクシン政権は2006年、特権階級の意向を受けた軍事クーデターで崩壊。2007年末の民政移管選挙で発足したタクシン派政権も、反タクシン派デモ隊による首相府やバンコクの2空港の占拠で追い込まれ、2008年末、裁判所命令で「選挙違反」により政権を失った。

 劣勢に立たされたタクシン派は「特権階級が軍、司法を動かし、民主主義と法治をねじまげている」と主張し、2009年、2010年と民主党連立政権打倒のデモを実施。2010年にはデモ隊と治安部隊の衝突で、91人が死亡、約2000人が負傷した。2011年の下院総選挙ではタクシン派が再び勝利し、タクシン元首相の妹のインラク氏が首相に就任した。

 タクシン元首相は国外滞在中の2008年、首相在任中に当時の妻が公有地を競売で取得したことで懲役2年の判決を受け、以来、タイに帰国していない。インラク政権は昨年、今年と、免罪、恩赦によるタクシン元首相の帰国を目指したが、反タクシン派の街頭デモなどで実現しなかった。

 インラク政権はまた、反タクシン派の牙城となっている議会上院の任命制上院議員を退場させるため、議員の約半数が任命制となっている上院の全議席を公選制とする憲法改正案をまとめ、国会で成立させた。しかし、憲法裁判所は今月20日、改憲案が違憲な方法による権力の掌握を禁じた憲法68条に違反するなどとして、違憲の判断を下した。

 反タクシン派はタクシン元首相の帰国と憲法改正を阻止したことで勢いづき、今回の財務省、外務省占拠に踏み切った。ただ、タクシン派は2001年以降、下院総選挙で全勝しており、インラク首相がデモ隊の圧力に屈して下院を解散したとしても、次の総選挙もタクシン派が有利とみられる。選挙後、またタクシン派政権が発足し、また反タクシン派のデモが起きるという繰り返しも予想される。
《newsclip》

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