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最大野党が総選挙拒否 タイ混乱深まる

2013年12月22日(日) 13時27分(タイ時間)
【タイ】タイの最大野党民主党は21日、来年2月2日の下院総選挙をボイコットすると発表した。22日には民主党が主導する数万人規模の反政府デモがバンコクで行われ、選挙で事態の収拾を図るというタクシン元首相派インラク政権の希望は潰えた。

 民主党のアピシット党首(前首相)は21日の記者会見で、過去数年の政治混乱で国民が政党、選挙に対する信頼を失ったと主張し、総選挙に候補者を立てないと表明した。ただ、総選挙の実施に反対はせず、憲法に違反する「変更」は支持しないとも述べた。

 インラク首相は同日、民主党の記者会見の前にテレビ演説し、総選挙後、様々な団体の代表からなる改革議会を発足させて政治改革を進め、2年後に再度総選挙を行うという提案を行った。民主党はこの提案を信用出来ないと拒否した。

 民主党は今回、11月からバンコクで大規模な反政府デモを続け、12月8日には党所属の全下院議員が議員辞職した。翌9日、バンコクで20万人規模の反政府デモを起こし、インラク首相を下院解散、総選挙に追い込んだ。しかし、デモを率いるステープ元副首相(元民主党幹事長)は選挙によらない「人民議会」に国権を委ねるという事実上のクーデター計画を示し、総選挙を拒否している。

 民主党内では、ステープ元副首相に同調して選挙をボイコットすべきという意見が強く、18日にはステープ元副首相と弟のターニー元スラタニ県長ら南部スラタニ県選出の民主党所属前下院議員6人が総選挙ボイコットを表明した。

 アピシット党首は、こうした状況で総選挙に臨めば、支持層の離反と党の分裂を招くと判断し、選挙ボイコットを決めた。ただ、党内の一部が、選挙を放棄しては政党の体をなさず、欧米諸国に対する体裁も悪いと主張したことから、総選挙をボイコットするものの、選挙自体には反対せず、超法規的な方法による政権奪取も支持しないという、中途半端な発言となった。

 民主党はバンコクと比較的人口が少ない南部が地盤で、2001年、2005年、2007年、2011年と過去4回の下院総選挙ではいずれも、大票田の東北部とタクシン元首相の地元の北部を抑えるタクシン派に敗北した。

 実際には2006年にも、反政府デモと特権階級の圧力に苦しんだタクシン首相(当時)が下院を解散、総選挙が行われた。民主党はこの選挙をボイコットし、タクシン派政党が勝利したが、裁判所が選挙自体を無効と宣告。宙ぶらりの状態となったタクシン政権は同年9月、軍事クーデターで崩壊した。

 今回の状況はこのときに類似しており、民主党はデモで政権打倒ができない場合、憲法裁判所もしくは軍に介入を働きかける可能性がある。ただ、こうした方法で暫定政権が発足しても、次回の総選挙ではタクシン派が復活する可能性が高いとみられ、タイの政局混乱は終りが見えない状況だ。

 タイでは2006年から、特権階級とバンコクの中間層、南部が中心の反タクシン派と、東北部、北部の中低所得者が中心のタクシン派の抗争が続いている。

 反タクシン派にとって、インラク政権は反王室の汚職政治家であるタクシン元首相が「教育水準の低い東北人」を選挙で買収して発足した政権で、王室を守り、国を正しい方向に向かわせるためには、タクシン元首相と妹のインラク首相らの追放が必要となる。しかし、反タクシン派は選挙でタクシン派に勝てないため、軍事クーデターや裁判所の介入といった非常手段に頼る傾向が強く、タクシン派に比べ「教養」があると自負する反タクシン派が民主主義や法治を否定する主張を繰り返すという矛盾に陥っている。

 一方、タクシン派にとって、タクシン元首相は、これまで顧みられなかった地方住民、低所得者層に低額医療を行き渡らせ、農村・地方開発を進めた「民主主義のリーダー」。インラク政権は選挙で選ばれた正統な政権で、反タクシン派は軍事クーデターや裁判でタクシン派政権の転覆を繰り返す非民主的な勢力ということになる。

 両派の抗争は、経済格差、地域格差、教育問題、さらにはタクシン派の支持基盤である東北人への民族差別的な要素も含み、感情的なレベルの対立が深まっている。問題を整理分析して対応する理性的なアプローチはほとんど見られず、解決を難しくしている。

〈アピシット・ウェーチャチーワ〉
1964年、英ニューカッスル生まれ。英イートン校からオックスフォード大学に進み、哲学、政治学、経済学の学位を取得。タイ人で2人目の首席だったという。同大学で経済学修士号を取得後、タイのタマサート大学講師を経て政界入りし、1992年から下院連続当選。1995―1997年民主党報道官、1997―2001年首相府相、2005年から民主党党首。2008―2011年首相。タイのチュラロンコン大学数学講師だったピムペン夫人との間に1男1女。ニックネームは「マーク」。イートン校時代からロック好きで、好きなバンドはイーグルスからオアシスまで幅広い。両親はともに医者で、父親は副保健相を務めた。姉は医師、妹は2006年度東南アジア文学賞を受賞した作家。アピシットはタイ語で「特権」。

〈民主党〉
1946年設立のタイで現存する最も古い政党。保守中道の王党派で、1990年代には当時党首だったチュワン・リークパイ現党顧問会長が2度首相を務め、政界をリードした。アピシット党首、コーン元財務相など現幹部には王室に近い裕福な名家の出身者が多い。地盤はバンコクと人口が比較的少ない南部。
《newsclip》

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