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反タイ政府デモ参加の富豪女性、一族の頭痛のタネに

2014年1月1日(水) 14時10分(タイ時間)
ジパット・ピロムパクディーさん(写真中央の白シャツの女性)の画像
ジパット・ピロムパクディーさん(写真中央の白シャツの女性)
写真、ニュースクリップ
【タイ】「ビヤシン」などで知られるタイのビール大手ブンロート・ブルワリーのオーナーで旧貴族のピロムパクディー家が反政府デモで揺れている。

 一族の女性、ジパット・ピロムパクディーさん(28)が野党民主党の反タクシン元首相・反政府デモに参加し、演説を行ったり、警察のバリケードを撤去するためブルドーザーを運転するなど、指導者の1人として活動しているためだ。ジパットさんが外国メディアに対し、「多くのタイ人、特に地方住民は民主主義をよく理解していない」と述べたと報じられたことから、タクシン元首相支持派が多い東北部ではジパットさんへの反感が広がり、ブンロートの事業への影響が懸念されるようになった。

 12月18日には、ピロムパクディー家総帥のサンティ・ブンロート社長がいとこでジパットさんの父のジュティナン・ブンロート副社長に送った手紙がメディアに流出した。サンティ社長はこの中で、ジパットさんの政治活動が会社の事業とピロムパクディー家に与える影響に強い懸念を表明。「何度も話し合ったが、返事がない」とジュティナン副社長を責め、政治に関わるべきではなく、「社長は起きたことに責任を取る必要がある」「すでに警告し、助言を与えた」と強い調子で善処を迫った。

 翌19日にはバンコク都内のジュティナン副社長宅に火炎瓶が投げ込まれ、ジパットさんの乗用車が破損するなどした。警察はタクシン派の犯行とみて捜査を進めている。

 ジュティナン副社長は23日、メディアに声明を出し、「地方住民は民主主義に関する知識、理解がない」としたジパットさんの発言について、「私はタイ人はみな同じ権利と自由を持っていると思う。ジパットの発言は不適切だった」と述べ、謝罪した。また、「娘と何度も話し合ったが、複数の点で意見が異なる」、「政治活動を続けるというので、妻と3人で話し合い、娘の姓を変えることにした」と表明した。ジパットさんは26日、姓を母親の旧姓「クリダーコン」に変えたことを明らかにした。

 一方、23日、東北部コンケンのブンロートの社屋前に、タクシン派市民数百人が大型バス5台と街宣車で乗りつけ、ジパットさんの発言を「差別的だ」として抗議した。

 ピロムパクディー家は米経済誌フォーブスの2013年版のタイ富豪リストの6位で、推定資産は24億ドルに上る。ジパットさんの母は王族のモームルアン(王族の称号)・ピヤーパット・ピロムパクディーさん。ピヤーパットさんはシリキット王妃の侍女を務め、王妃が支援したタイの歴史大作映画「スリヨータイ」に主演した。

 ジパットさん自身は英国留学後、民主党に入党し、アピシット民主党連立政権(2008―2011年)で閣僚秘書などを務めた。2011年の下院選にバンコクの小選挙区で出馬し落選した。

 タイでは2006年から、特権階級とバンコクの中間層、南部が中心の反タクシン派と、東北部、北部の中低所得者が中心のタクシン派の抗争が続いている。

 反タクシン派にとって、タクシン派の政権は反王室の汚職政治家であるタクシン元首相が「教育水準の低い東北人」を選挙で買収して発足した政権で、王室を守り、国を正しい方向に向かわせるためには、タクシン元首相と妹のインラク首相らの追放が必要となる。しかし、数で劣る反タクシン派は選挙でタクシン派に勝てないため、軍事クーデターや裁判所の介入といった非常手段に頼る傾向が強く、タクシン派に比べ「教養」があると自負する反タクシン派が民主主義や法治を否定する主張を繰り返すという矛盾に陥っている。

 一方、タクシン派にとって、タクシン元首相は、これまで顧みられなかった地方住民、低所得者層に低額医療を行き渡らせ、農村・地方開発を進めた「民主主義のリーダー」。インラク政権は選挙で選ばれた正統な政権で、反タクシン派は軍事クーデターや裁判でタクシン派政権の転覆を繰り返す非民主的な勢力ということになる。

 両派の抗争は、経済格差、地域格差、教育問題、さらにはタクシン派の支持基盤である東北人への民族差別的な要素も含み、感情的なレベルの対立が深まっている。

 民主党など反タクシン派は今回、タクシン元首相の影響力排除、インラク政権の退陣などを要求し、11月からバンコク都内で座り込みの反政府集会を続けている。12月8日には民主党が党所属の下院議員全員の議員辞職を発表。翌9日、バンコクで20万人規模の反政府デモを行い、インラク首相を下院解散、総選挙に追い込んだ。

 しかし、デモを指揮するステープ元副首相(元民主党幹事長)はインラク政権を退陣させた上で、様々な職種の代表からなる「人民議会」に国権を委ねるという事実上のクーデター計画を打ち出し、総選挙を拒否。民主党も21日、総選挙ボイコットを表明した。
《newsclip》

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