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前首相調停、司法判断、デモ タイ政争が5月に新たな山場

2014年5月2日(金) 15時50分(タイ時間)
アピシット党首と選挙委員会(4月29日)の画像
アピシット党首と選挙委員会(4月29日)
写真提供、www.democrat.or.th (Democrat Party)
アピシット党首(左から2人目)とチャートタイパタナー党のバンハーン元首相(左端)ら(4月29日)の画像
アピシット党首(左から2人目)とチャートタイパタナー党のバンハーン元首相(左端)ら(4月29日)
写真提供、www.democrat.or.th (Democrat Party)
アピシット党首とチャートパタナー党のスワット元副首相ら(4月29日)の画像
アピシット党首とチャートパタナー党のスワット元副首相ら(4月29日)
写真提供、www.democrat.or.th (Democrat Party)
【タイ】タクシン元首相派インラク政権が5月中に司法判断で崩壊する可能性が浮上する中、反タクシン派野党民主党のアピシット党首(前首相)が対立する勢力の調停に動き出した。

 アピシット党首は4月24日、インターネットの動画投稿サイト、ユーチューブに投稿した動画で、現在の政治危機は裁判所の判決や軍事クーデターでは解決しないとして、憲法と、選挙がその一部である民主主義の枠内で政治改革を図るべきと主張。インラク政権や選挙委員会などと話し合い、解決策を探る考えを示した。

 アピシット党首は翌25日から5月1日にかけ、タナサク国軍最高司令官、選挙委員会、連立パートナーのチャートタイパタナー党、チャートパタナー党、パランチョン党の幹部らと相次いで会談し、自身の提案を伝えた。

 アピシット党首の提案の具体的な内容は明らかになっていないが、選挙公約の実施を義務付けることで過度のバラマキ政策を防ぐなどの選挙制度改革を行い、公正で平和的な選挙を実現し、選挙と並行して、それ以外の政治改革を進める考えとみられる。

 アピシット党首のこうした動きについて、反政府デモ隊を率いるステープ元副首相は4月30日の演説で、「選挙の前に政治改革」、「タクシン・システムとインラク政権の排除」というスローガンを繰り返し、交渉拒否を明言した。5月14日から大規模な反政府デモを実施してインラク政権を打倒し、「(民選ではない)中立的な立場の首相が率いる人民政府」を設立、18カ月間で政治改革のための法改正を行うなどと主張した。ステープ氏は民主党幹事長、アピシット政権(2008―2011年)の副首相としてアピシット党首を支えてきたが、今のところ、今回の調停には応じない姿勢だ。

 インラク首相はアピシット党首の調停を前向きに評価し、話し合いに応じる構え。

 選挙委員会は4月30日にインラク首相と会談し、憲法裁判所が無効とした2月2日の議会下院選のやり直し選挙を7月20日に行うことで合意した。ただ、状況が好転しない場合は同委の判断で投票を延期するとしている。

 一方、王党派の退役将軍らは、事態収拾に向け、プミポン国王に介入を求めるべきだとする意見を、国王側近のプレム枢密院議長(元首相、元陸軍司令官)に直接伝えた。タクシン派与党プアタイはこうした動きを、法的な裏付けがないと批判している。

 インラク首相は2011年に当時のタウィン国家安全保障会議(NSC)事務局長を首相顧問に異動した人事と事実上のコメ買い取り制度であるコメ担保融資制度をめぐる職務怠慢容疑で追及を受けている。

 人事問題では権力乱用で憲法違反だとする訴えを反タクシン派の上院議員に起こされ、5月前半に憲法裁が判決を下す見通しだ。首相失職もしくは全内閣の失職という判断が下る可能性があり、全内閣が失職した場合、反タクシン派の選挙妨害で議会下院が開会できずにいるため、反タクシン派が優勢とされる議会上院がその後のカギを握ることなりそうだ。失職するのが首相だけの場合はスラポン副首相兼外相が首相代行になるとみられる。

 コメ担保融資制度をめぐる問題では、汚職取締委員会が5月前半にも、上院での首相弾劾手続きの開始を決める見通し。首相はこの決定後、職務停止となる。

 タイでは2006年以降、地方住民、中低所得者が多いタクシン派と、特権階級、バンコクの中間層を中心とする反タクシン派の抗争が続き、政治、社会が混乱している。

 反タクシン派はタクシン元首相を反王室の腐敗政治家と糾弾し、タクシン政権(2001―2006年)は2006年、特権階級の意向を受けた軍事クーデターで崩壊した。2007年末の民政移管選挙で発足したタクシン派政権も、反タクシン派デモ隊による首相府やバンコクの2空港の占拠で追い込まれ、2008年末、裁判所命令で「選挙違反」により政権を失った。

 劣勢に立たされたタクシン派は「特権階級が軍、司法を動かし、民主主義と法治をねじまげている」と主張し、2009年、2010年とアピシット政権打倒のデモを実施。2010年にはデモ隊と治安部隊の衝突で、91人が死亡、約2000人が負傷した。2011年の下院選ではタクシン派が再び勝利し、タクシン元首相の妹のインラク氏が首相に就任した。

 インラク政権は昨年、タクシン派と反タクシン派の政治抗争で投獄、訴追された人に包括的な恩赦を与える恩赦法案の成立を図ったが、汚職で実刑判決を受け国外逃亡中のタクシン元首相の帰国が可能になるため、10月からバンコクで大規模な反タクシン・反政府デモが始まった。インラク首相は12月、民意を問うとして、下院を解散、総選挙に打って出たが、2月の下院選は、民主党が選挙をボイコットした上、同党の地盤のバンコク、南部などで反政府デモ隊による投票妨害があり、全国375の選挙区のうち28の選挙区で投票が行えなかった。これを受け、憲法裁は3月21日、下院選を無効とする判決を下した。
《newsclip》


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