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タイ首相失職か? 7日に憲法裁判決

2014年5月6日(火) 19時02分(タイ時間)
【タイ】インラク政権が2011年に当時のタウィン国家安全保障会議(NSC)事務局長を首相顧問に異動した閣議決定が権力乱用で憲法違反だとして、前上院議員が訴えていた裁判で、憲法裁判所は6日、インラク首相ら4人の証人尋問を行い、結審した。判決は7日に下る。

 タウィン氏の異動はインラク首相の元義兄にあたるプリアオパン副警察長官を警察長官に昇進させた人事の玉突きで、これにより当時のウィチアン警察長官がNSC事務局長に転任し、タウィン氏がポストを失うこととなった。タウィン氏は異動後、不当な人事だとしてNSC事務局長への復職を求める裁判を起こし、勝訴。今年3月25日にNSC事務局長への復職が閣議決定された。

 タウィン氏の異動については、すでに最高行政裁判所が違法という判断を下しており、憲法裁はインラク首相もしくは全閣僚の失職という判決を下す可能性がある。

 首相だけ失職の場合はスラポン副首相兼外相が首相代行になるとみられる。全閣僚失職の場合は、反政府・反タクシン元首相派の選挙妨害で議会下院が開会できずにいるため、議会上院が憲法の「下院解散中は上院が国会として活動する」という条項と「憲法の条項に当てはまらないケースでは憲法的慣行に従い決定する」とした条項を使い、非民選政権の樹立を目指す可能性がある。

 憲法裁はタクシン派と反タクシン派の抗争が本格化した2006年以降、一貫してタクシン派に不利な判決を下し続け、タクシン派から、憲法解釈を恣意的にねじ曲げているという批判が出ている。今回の裁判についても、タクシン派のインラク政権が不利という見方が強く、タクシン派の一部からは、首相、閣僚の失職を見越し、判決の受け入れ拒否や、反タクシン派との武装闘争を主張する意見も出てきた。

 上院は議員の約半数を選挙で選び、残りを憲法裁長官など反タクシン派がメンバーの大半を占める委員会が任命するため、反タクシン派が優勢とみられる。内閣が倒れ、上院に権力が集中した場合、タクシン派は厳しい状況に追い込まれる見通しだ。

 下院選の阻止、インラク政権崩壊、上院による非民選政権の樹立という筋書きは、野党民主党の元幹事長で反政府デモ隊を率いるステープ元副首相が掲げる戦略と基本ラインは同じだ。民主党のアピシット党首(前首相)も今月3日、ほぼ同じ内容の提案を行っている。

 アピシット党首の提案は、▽選挙委員会が7月20日実施を目指している下院選の再投票を延期する▽公正な選挙を実現するため、選挙委が選挙関連の規則を改正する▽ステープ元副首相率いる反タクシン派団体と別の反タクシン派団体が15―30日で政治改革案をとりまとめ、90日以内に国民投票にかける▽インラク内閣は総辞職する▽上院が暫定首相を選出する▽政治改革案の国民投票後45―60日で下院選を実施する▽下院選に参加する全ての政党には国民投票で承認された政治改革案の実施を義務付ける。違反した場合は選挙法違反で解党する――という内容。

 これに対し、タクシン元首相の法律顧問であるノパドン元外相は▽憲法で首相は下院議員から選ばれると規定されている▽反タクシン派だけが政治改革案の取りまとめに携わり、国民が参加できない――などと批判し、各政党が政治改革案を掲げて下院選を戦えばいいだけだと主張。2月の下院選をボイコットした民主党に対し、非民主的で違憲な方法による政権奪取を目指さず、憲法と民主主義を順守するよう呼びかけた。

 タイでは2006年以降、地方住民、中低所得者が多いタクシン派と、特権階級、バンコクの中間層を中心とする反タクシン派の抗争が続き、政治、社会が混乱している。

 反タクシン派はタクシン元首相を反王室の腐敗政治家と糾弾し、タクシン政権(2001―2006年)は2006年、特権階級の意向を受けた軍事クーデターで崩壊した。2007年末の民政移管選挙で発足したタクシン派政権も、反タクシン派デモ隊による首相府やバンコクの2空港の占拠で追い込まれ、2008年末、裁判所命令で「選挙違反」により政権を失った。

 劣勢に立たされたタクシン派は「特権階級が軍、司法を動かし、民主主義と法治をねじまげている」と主張し、2009年、2010年とアピシット政権打倒のデモを実施。2010年にはデモ隊と治安部隊の衝突で、91人が死亡、約2000人が負傷した。2011年の下院選ではタクシン派が再び勝利し、タクシン元首相の妹のインラク氏が首相に就任した。

 インラク政権は昨年、タクシン派と反タクシン派の政治抗争で投獄、訴追された人に包括的な恩赦を与える恩赦法案の成立を図ったが、汚職で実刑判決を受け国外逃亡中のタクシン元首相の帰国が可能になるため、10月からバンコクで大規模な反タクシン・反政府デモが始まった。インラク首相は12月、民意を問うとして、下院を解散、総選挙に打って出たが、2月の下院選は、民主党が選挙をボイコットした上、同党の地盤のバンコク、南部などで反政府デモ隊による投票妨害があり、全国375の選挙区のうち28の選挙区で投票が行えなかった。これを受け、憲法裁は3月21日、下院選を無効とする判決を下した。
《newsclip》


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