RSS

「リスペクト・マイ・タックス」対「リスペクト・マイ・ボート」 タイ対立の構図

2014年6月15日(日) 15時22分(タイ時間)
【タイ】タイ軍が起こした今回のクーデターは、議会・選挙制度改革など国家制度の問題のほか、古いタイと新しいタイの国家観の相違にどう取り組むかという宿題を抱えている。

 反タクシン元首相派が理想とする従来型のタイは、倫理的に優れた国王を精神的な支柱に、「優れた」人々が国民を指導するエリート体制だ。これを象徴するのが、反タクシン派市民の一部が掲げる「リスペクト・マイ・タックス(私が払う税金を尊重せよ)」という言葉だ。タイで個人所得税を収めているのは6000万人超の人口の10分の1以下とされる。富裕層、中産階級を中心とする反タクシン派には税金(個人所得税)を払うものだけに国政に参加する権利を与えるべきという意識がある。

 一方、地方住民、貧困層が多いタクシン派の合言葉は「リスペクト・マイ・ボート(私の1票を尊重せよ)」。1人1票の民主主義を尊重し、クーデターや司法による民選政権の転覆、デモによる選挙妨害を止めよということだ。

 タイは東南アジアで唯一、植民地化を免れた。19世紀後半から近代化を進め、1932年に絶対君主制から立憲君主制に移行したものの、植民地化のような国家の抜本的な変革がないまま、ここまで来た。生き延びた古いシステムや考え方の上に民主主義を接ぎ木しようとした矛盾が混乱の根底にあり、民主主義の安定的な運用を阻んでいるようにみえる。クーデターに踏み切ったプラユット陸軍司令官はタクシン派と反タクシン派の「和解」を実現し、世界的に通用する民主主義の導入を図るとしているが、そもそもクーデター自体が古い制度、考え方そのものという矛盾をはらむ。

 タイは膨大な土地を所有する特権階級と土地を持たない多数の貧農が併存し、政府高官や軍・警察幹部には有力者一族の名字が並ぶ。一方、普通の会社員が乗用車を所有し、フェイスブックに夢中になり、日本旅行を楽しむ時代になった。19世紀のままのタイと21世紀のタイが同居し、居心地悪そうにしているのが現在のタイと言えそうだ。
《newsclip》

特集



新着PR情報