RSS

タイ警察での鑑識技術指導(1) 「鑑識に国境なし」 日本に迫るタイの鑑識技術

2014年7月14日(月) 01時50分(タイ時間)
買い物用ビニール袋を足に付けて実習の画像
買い物用ビニール袋を足に付けて実習
写真、戸島国雄氏提供
文:戸島国雄氏(警視庁元鑑識捜査官・元似顔絵捜査官・タイ警察現役警察大佐)

体で覚える鑑識、第三者にも状況を理解させる技術

 1995年からこれまでの約20年間、タイ警察での鑑識技術指導を断続的に行っている。指導を始めた当初、タイの現場では証拠品を特定するための(番号プレートなどの)鑑識標識がなかったが、今では日本同様に活用。証拠品を採取する作業も、以前は一つの袋に一緒に入れていたが、それぞれの袋に分別するようになって久しい。

 鑑識は「犯人を捕まえるための証拠の採取」であり、タイも日本もその内容および手順は全く同じだ。タイ警察でこれまで指導してきたことは一貫して「体で覚える」ということ。教材を開いて机に向かっているだけでは、その教材に書かれたこと以外の知識は得られない。現場が100カ所あれば、状況は100カ所違う。体で覚えなければ応用が効かない。これは鑑識だけでなく、例えば水泳や自転車といったスポーツも同じだ。当初は教材を制作・配布したことがあったが、今では言葉とスライド写真のみ、ホワイトボードも使わないセミナーを繰り返している。

 証拠品などを添えた警察の報告書は、裁判官と検事に委ねられる。この報告書がしっかりしていないと何回も呼び出される。鑑識では、状況が一目瞭然の現場を見ていない者でも理解できる写真を撮らなければならない。現場には誰一人として立ち入らせない。リーダーがまず全体を確認し、遺体、証拠品、足跡など事件に関連するものに標識を置くよう指示する。写真は左右から流し、上からも撮る。その後に指紋採取と計測。それまでは絶対に何も触らせない。

 遺体は特に、腕一本の位置、脚の開き方などが変えられると、事件そのものが変わってしまう。タイではこれまで、警察より先に現場に到着するレスキュー隊の行動に問題があった。現場に踏み込み、いろいろ触ってしまっていたのだ。そのため、警察本部にレスキュー隊を呼んでセミナーを開いたこともある。今ではレスキュー隊は警察が来る前に立入禁止のテープを張り、現場を保存する任務を担っている。かなり以前、頭を撃たれた死体が自殺か他殺か分からない、という事件が起きたことがある。現場をしっかり残していればこのような問題は発生しなかった。
《newsclip》

特集



新着PR情報