主催:バムルンラード・インターナショナル ジャムズネット・アジア(アジア邦人医療支援ネットワーク)
協賛:K&N Support Office Co., Ltd. International SOS Services (Thailand) Co., Ltd.
日本の産業現場で起きていること ~カウンセリングから見えてくるもの~
佐藤 直美 氏 (産業カウンセラー、キャリアコンサルタント、Director K&N Support Office Co., Ltd.)
日本のメンタルヘルスの現状
日本の厚生労働省が5年ごとに実施する「労働者健康状況調査」によると、仕事や職業生活に関して強い不安、悩み、ストレスを感じている人は調査全体の60.9%を占め、そのストレス要因として「職場の人間関係の問題」を挙げる人が全体の41.3%に上る(平成24年度版)。このような問題は、自覚もしくは周囲からの指摘によって専門家や医師に相談されるので、本人や周囲が気付いていない問題も多く存在している可能性がある。
また、「脳・心臓疾患と精神障害の補償状況(平成24年度版)」は精神障害の労災認定数が前年度比150件増で過去最多の475件という数字を掲載。「平成25年度中の自殺の概況」(内閣府自殺対策推進室)は、平成10年から23年まで3万人を越していた自殺者数が、平成24年、25年とようやく3万人を切って下降線をたどっているものの、依然高止まりであることを示している。働き盛りの中高年層の自殺は米国の2倍、英国の3倍以上。
このような状況の中、メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所は、「労働者健康状況調査」によると平成24年度は全体の47.2%。前年度より3.6%上昇しており、増加傾向にある。メンタルヘルスケアに取り組んで「いない」事業所はその理由として、全体の51%が「必要性を感じていない」と回答(複数回答)。これは、支援が必要でも受けられない従業員がいる危険性があることを示している。
さらに、財団法人労務行政研究所による「企業におけるメンタルヘルスの実態と対策」(2010年)では、メンタルヘルス不調で1カ月以上休職している社員がいる企業は63.5%(2004年度調査50.9%)。休職せずに退職というケースもあると推測されるため、実際は数字で見る以上に深刻な状況にあると思われる。同調査は3917社中252社回答というわずか6%の回答率。また、製造業でも非製造業でもさほど変わらない結果となっている。
メンタルヘルス施策を実施している事業所においても、適正な休職・復職事例を「把握している段階」であり、予防には至っていない。精神科主治医が労働者のメンタル問題に深く関わって正しい判断に至るには、「職場からの情報提供」が不可欠。いわゆる現代型うつ病や双極性障害のケースは特に、職場からの情報提供なしには正しい診断や適切な治療は不可能といわれる。リワーク(復職支援)機関が増えつつあるが、理論と実践方法の構築が始まった段階であり、効果検証はこれからの課題となっている。
メンタルヘルス不調がどれほどの労働損失を与えるかを試算してみる。例えば、療養のための休業期間が5カ月とした場合、休業前のパフォーマンス低下期間と復職後のリハビリ期間の合計を3カ月と仮定しプラスすると、8カ月分の労働損失となる。さらに傷病手当、医療費、休業者に対する人事労務担当者や産業保健スタッフの労力、時間、代替社員の採用などの手間と費用がかさみ、さらには問題が民事訴訟に発展する場合も少なくない。コストだけでなく間接的にも、職場全体の士気やモラルの低下、不公平感、新たなメンタルヘルス不調者の発生、ブランドイメージの低下といった影響を及ぼしていく。
最近、産業臨床において企業の人事担当者から多く受ける質問は、休職・復職に関する具体的な職場での対応方法や産業保健スタッフとの連携方法、また、いわゆる新しいタイプのうつ病への対応方法や育成の問題、休職、復職を何度も繰り返す社員や発達障害と思われる社員の具体的な対応方法などが挙げられる。また、部下を潰してしまうパワーハラスメント行為を繰り返す管理職の問題など多岐にわたる。
日本政府は2020年までの「メンタルヘルスに関する処置を受けられる職場の割合100%」達成を目標とし、取り組み強化の方針を打ち出している。民間でも多くの企業がメンタルヘルス対策の導入に積極的な姿勢を見せており、「導入予定の高い制度・施策」の4位に挙げられている(産労総合研究所、2011年)。今後のさらなる対策が期待される。
ウツですか? ~社会問題化するこころの病 海外駐在員のメンタルヘルスを考えるセミナーより (1)日本のメンタルヘルスの現状
2014年8月6日(水) 12時27分(タイ時間)
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