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海外駐在員のメンタルヘルスを考える ~ストレス対処法を学ぶ~ 社会でのメンタルヘルスと私たちができること バンコク病院メンタルヘルスセミナーより

2015年1月7日(水) 02時37分(タイ時間)
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佐藤 直美 氏
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Athicha Chanthanathas, MD 
第一部

海外駐在員のメンタルヘルスを考える ~ストレス対処法を学ぶ~
佐藤 直美 氏 (産業カウンセラー、キャリアコンサルタント、Director K&N Support Office Co., Ltd.)

日本のメンタルヘルスの現状

 厚生労働省の各種統計結果によると、2012年度の調査対象で「仕事や職業生活に強い不安、悩み、ストレスを感じる」人が全体の60.9%を占め(2007年度比2.9%増)、2013年度は「心の病」としての労災申請件数が1409件に達した(前年度比152件増で過去最多)。最近の傾向として、ハラスメントによる体調不調とそれが自殺につながるケースが目立つといわれている。2013年度の自殺者数は、前年に引き続き2年連続で3万人を下回ったが、全体の30%を働く人が占める(内閣府自殺対策推進室)。

 政府は2014年11月、「過労死防止対策推進法」を施行、国レベルで過重労働による健康障害の防止に乗り出した。2015年12月からは「事業場におけるストレスチェック制度の義務化」が始まる予定で、各企業がストレス蓄積の早期発見や一次予防のための取り組みを準備している。厚生労働省によると、2012年度の「メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業場」の割合は47.2%で増加傾向にある(前年比3.6%増)。ちなみに過労死は今や、英語ほか多言語でも「KAROSHI」と表現されるようになった。

海外駐在員のメンタルヘルス

 外務省の各種統計結果によると、2012年度の海外在留邦人は約126万人で過去最多(前年度比0.7%増)、うち67%を長期滞在者が占める。2013年度の邦人援護件数は1万7796件(前年度比2.32%減)、トップはタイの1216件、次いで中国1116件、フランス829件。

 精神障害に起因する援護件数は207人で、アジア地域が40%を占めて最多、欧州30%、北米20%と続く。身体疾患は中高年を中心に発展途上地域で事例化、精神疾患は30―40代を中心に地域に区別なく事例化している。

 海外勤務者を取りまく現状として、

1)仕事を休みにくい
2)(休暇をとっても)職場復帰のプレッシャーが強い
3)過労が原因の明確なうつ状態が多い
4)人員削減により業務量が増加
5)小規模事業場の場合、(上司や部下などの)人間関係がこじれると解決しにくい

などが挙げられる。自律神経症状、睡眠障害、不安状態、うつ状態といった症状が組み合わさることが多い(こころの科学169号)。

メンタルヘルスケアと一次予防の重要性

 厚生労働省による「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針・4つのケア」というものがある。

1)セルフケア(自分自身)
2)ラインによるケア(職場の上司や同僚)
3)事業場スタッフによるケア(人事労務担当者や産業保健スタッフなど)
4)事業場外スタッフによるケア(産業カウンセラー、医療機関など)

 国内でも海外でもまずは、「自分のことは自分で守る」という心構えが必要とされる。海外では特に、「メンタルヘルスケアの知識を身に付け、より早い段階で身体症状の異変に気付き、セルフケアを実施する」という一次予防が大切となる。

 ストレスのメカニズムは風船に例えられる。適度に膨らんだ風船を指で軽く押すだけなら跳ね返す力もあり、押されたままでも十分に耐えられる。しかし、それ以上の力が指に加わり続けると、風船も耐えられなくなる。ストレスというものは、全くないと倦怠・意欲低下を、強すぎると過労・疾病状態を引き起こす。適度なストレスが高い活力を見い出す。

うつ病の基礎知識・ストレス対処

 うつは、心のバランスをつかさどるために重要な神経伝達物質が不十分になる状態であり、「なまけ」や「気のせい」ではない。必要なのはまず、「十分な休養」。睡眠や食欲の安定が絶対条件であり、治療に専念できる環境作りが大切となる。

 薬物療法も有効。うつは、適切な治療を受ければ回復する病気で、心理療法(認知行動療法)との併用が効果的とされる。ちなみに認知行動療法は日本では保険適用とされているが、すべての医療機関で実施できるとは限らないので事前に確認する必要がある。

 服薬中のアルコール摂取はNG。アルコールは副作用を強め、健忘・錯乱などを引き起こす可能性大。睡眠にも悪影響を与え、アルコール依存症に陥る。うつは治すことのできる病気だが、アルコール依存症は治療が長期となり、治っても飲酒すれば元に戻ってしまう。

 ストレスに対しては、柔軟な思考を身に付ける。
* 白黒思考、根拠の無い決めつけ、べき思考
* 部分的焦点付け、自己関連付け、情緒的な理由付け
* 極端な一般化、過大・過小評価
* (「どうせこうなるに違いない」といった)自分で実現してしまう予言

などの、「認知のゆがみ」「考え方のクセ」を自覚する。

第二部

社会でのメンタルヘルスと私たちができること
Athicha Chanthanathas, MD (Bangkok Mental Health Rehabilitation and Recovery Center((BMRC))

アジア在住日本人のメンタルヘルス

 バンコクで2013年8月、アジアの精神医学に関する第四回世界会議「4th World Congress of Asian Psychiatry, Bangkok」が開催され、日本人の精神科医および心理学者グループによる中国・北京、ミャンマー・ヤンゴン、インドネシア・ジャカルタでの調査結果が発表された。

 以下の「上海シンドローム」は、同会議で発表された精神医学的な問題の一例。

1) 過剰適応、常に緊張
2) 怒りの感情の表現 OKY=「(O)お前が(K)こっちに来て(Y)やってみろ」
3) 家族間の衝突
4) 身体的な症状
5) 責任者の睡眠障害、アルコール依存、事故傾性
6) 大うつ、パニック障害、自殺リスク上昇

 中国在住日本人は、「本社が知識に乏しく、職業構造の複雑さを軽視」「ビジネス環境における業務要求の過多」「上職とスタッフの年齢差」「仕事環境」「政情不安」「対日関係から生じる衝突」などをストレスと感じる傾向が見られる。

 ミャンマー在住の日本人にみられる一般的なストレスは、「社会インフラ問題」「外国人在住者の少なさ」「労使間紛争」「政情不安」「交通の危険性」「首都と産業都市との距離」など。インドネシアでは「交通渋滞」「睡眠不足」「移動時間の予測不可」「テロリズムの脅威」「法の未整備」などが挙がっている。

 今回の調査はタイを含んでいないが、当院がこれまで接してきた日本人患者の症例を整理すると、

1) 言語の問題
2) 文化の違い
3) 仕事と私生活のバランス
4) 家族に対する支援不足
5) 生活拠点変化への挑戦
6) アルコール問題

などが挙げられる。国に限らずアジア地域全体として、「仕事の需要」「仕事に関する知識不足」「仕事および私生活における目的や意味の欠如」「効果的なリーダーシップの欠如」「スタッフのモチベーションの低迷」「仕事や家族、私生活のバランスの欠如」「管理的立場からの支援の欠如」「職場の人間関係の乏しさ」が、「アルコール依存」「気分障害」「不安障害」「双極性障害」「人格障害」「認知症」「摂食障害」といった問題を引き起こしている。
このようなストレスに対しては本人による

* 声に出しての表現
* 自己主張のトレーニング
が大事であり、企業としては
* 効果的な従業員支援プログラム(EAP)

についての議論が必要とされる。

うつは「気持ちの問題」ではない

 うつの感情に関する症状は以下のとおり。
* 悲しみ
* 興味や喜びの欠如
* 打ちのめされたような感覚
* 不安
* 集中力や思考力、決断力の減少
* 過度または不適切な罪悪感
 うつの身体的な症状は以下のとおり。
* あいまいな痛み
* 頭痛
* 睡眠障害
* 疲労感
* 背痛
* 明らかな食事の変化に起因する体重の変化

 治療としては、「併用治療」「生物学的:投薬」「心理学的:心理療法、カウンセリング」「社会的:家族教育、家族セラピー」が有効とされる。

バンコクメンタルヘルスセンター(Bangkok Mental Health Rehabilitation and Recovery Center (BMRC))

 バンコク病院にはメンタルヘルスを専門とし、タイトップクラスの医療レベルと最適な設備を駆使して包括的に治療する「バンコクメンタルヘルスセンター」がある。医師陣は、常勤精神科医3人、中毒専門および小児専門を含む非常勤精神科医4人、常勤心理療法士1人、演劇療法、音楽療法、臨床心理学の非常勤心理療法士3人、ヨガ・インストラクター1人。24時間の外来受付、入院7床、(長期的入院ではない)非急性の入院施設、リハビリと臨床的な治療、一般精神科ユニット、精神科的救急と集中治療(SCU)といった設備を完備している。

 患者に必要なのは、

* 安全
* 秘密保持
* プライバシー
* 安心
* 尊敬
* 自己決断をできるという意識
そのためには、
* 常に自身の感情とストレスのレベルを気にかけること
* 気持ちを楽に表現すること
* 助けを求めることを、怖がったり恥ずかしがったりしないこと
* 併用治療

を心がけなければならない。

Bangkok Hospital
住所:2 Soi Soonvijai 7, New Petchburi Road, Bangkapi, Huay Khwang, Bangkok 10310
電話:0-2310-3257 (Japan Medical Service 7時―20時) ファクス:0-2755-1261
Eメール:jpn@bangkokhospital.com ウェブサイト:www.bangkokhospital.com

K&N Support Office Co., Ltd.
メ ンタルヘルス/キャリアサポートをする会社。2014年4月に、経験豊かな専門家たちが、タイ、バンコクに設立。業務運営にあたるのは、日本やタイでの豊 富な産業臨床経験者、欧米アジア諸国での海外駐在経験者、さらに大学院で臨床心理を学んだ専門家集団。サービスとしては、法人のお客様へEAPサービス (従業員支援プログラム)と個人のお客様へカウンセリング(メンタル/キャリア)、個別セミナーなど。

住所: Jasmine Bldg., 12th Flr., Room #43, 2 Sukhumvit Soi 23, Sukhumvit Rd., Klongtoey-nua, Wattana, Bangkok 10110
電話: 093-020-1077, 098-974-3707
Eメール:info@knsupportoffice.com
《newsclip》


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