【タイ】タイ軍事政権がタクシン・チナワット元首相一族に対する圧力を強めている。元首相の妹のインラク・チナワット前首相は汚職裁判で実刑判決を受ける恐れがあり、タクシン元首相と同様に、国外亡命を迫られるという見方が出てきた。
タイ最高検察庁は19日、インラク政権(2011―2014年)が導入した事実上のコメ買い取り制度「コメ担保融資制度」をめぐる汚職と巨額の損失を知りながら同制度を継続したとして、インラク前首相を職務怠慢でタイ最高裁判所政治家刑事犯罪部門に起訴した。最高裁は3月19日に受理するかどうかの判断を下す。
今月17日には、タイ汚職取締委員会が、「コメ担保融資制度で国が被った損失6000億バーツ(約2・2兆円)の損害賠償をインラク前首相に求めるべきだ」として、財務省に民事裁判を起こすよう促した。
汚職取締委はまた、2008年に国会議事堂前で反タクシン派デモ隊と警官隊が衝突し、2人が死亡、500人近くがけがをした事件で、当時首相だったソムチャーイ・ウォンサワット氏らを権力乱用で最高裁政治家刑事犯罪部門に告発、10日に受理された。ソムチャーイ元首相はタクシン元首相の妹でインラク前首相の姉のヤオワパー元下院議員の夫。
最高裁政治家刑事犯罪部門は政治家の汚職などを裁く一審制の特別法廷で、1回の審理で判決が確定し、上訴できない。タクシン元首相は2008年に同法廷で汚職で実刑判決を受けたが、判決前にタイから出国し、以来、収監を避けるため、帰国していない。インラク前首相は有罪の場合、最長で10年の禁錮刑を受け、即収監される可能性があり、兄同様、判決前に国外に逃れるのではという憶測が広がっている。
インラク前首相は2月上旬に軍政に出国許可を求めたが、拒否された。ただ、最高検察庁は起訴後も裁判所に前首相に対する出国禁止命令を出すよう求めない方針を示している。プラユット首相(前タイ陸軍司令官)は18日の記者会見で、インラク前首相は国外に逃亡せず、裁判で争うべきと述べたが、前首相が収監されれば、タクシン派と反タクシン派の対立激化が避けられないだけに、内心では前首相の国外亡命を望んでいるという見方がある。
《タクシン派vs反タクシン派》
タイでは2006年以降、東北部と北部の住民、バンコクの中低所得者層の支持を集めるタクシン元首相派と、特権階級、南部住民とバンコクの中間層を中心とする反タクシン派の抗争が続き、政治・社会が混乱している。
反タクシン派はタクシン氏を反王室の腐敗政治家と糾弾し、2006年の軍事クーデターでタクシン政権(2001―2006年)を打倒した。タクシン派は2007年の民政移管選挙で勝利したものの、2008年に「司法クーデター」と呼ばれた裁判所によるタクシン派与党解党で反タクシン派に政権を奪われた。反タクシン派政権下の2009年、2010年、タクシン派は、特権階級が軍官財界を動かし民主主義や法治をねじまげているとして、政権打倒のデモを行い、2010年のデモでは治安部隊との衝突で、市民、兵士ら91人が死亡、1400人以上が負傷した。
タクシン派は2011年の下院総選挙で再度勝利し、インラク政権が発足した。しかし、2013年10月から、インラク政権打倒を目指す反タクシン派市民のデモがバンコクなどで拡大。2014年1、2月には数万人がバンコクの主要交差点を長期間占拠した。5月に入り、軍が治安回復を理由に戒厳令を発令、クーデターでタクシン派政権を倒し、全権を掌握した。軍は当初、両派の和解を目指すとしていたが、タクシン派の官僚、軍・警察幹部のほとんどを左遷し、地方のタクシン派団体を解散に追い込むなど、タクシン派潰しを進めた。今年1月には、軍政が設立した非民選の暫定国会「立法議会」が、「コメ担保融資制度をめぐる職務怠慢」でインラク前首相を弾劾にかけ、前首相の参政権を5年間停止した。
〈コメ担保融資制度〉
事実上、政府が農家からコメを買い取る制度で、インラク政権発足直後の2011年10月に導入された。政府が市価の約4割高でコメを買い取ったため、コメ農家には好評だったが、タイ産米は価格上昇で輸出量が激減し、2012年には1981年以来初めてコメ輸出世界一の座から転落した。また、政府がコメの国際価格の上昇を待って売却を遅らせた結果、膨大な在庫が積み上がった。買い取り資金の大半が精米業者、輸出業者、政治家、大規模農家にわたり、汚職の温床になっているという指摘もあった。国際通貨基金(IMF)も、「財政負担が重い割に政策効果が低い」と批判した。2014年5月のクーデターでインラク政権を打倒したプラユット軍事政権によって同年、廃止された。
タイ財務省の2015年1月時点のまとめによると、コメ担保融資制度による最終的な損失額は5000億バーツ近くに上る見通し。
前首相を刑事訴追、2兆円損害賠償も タイ軍政がタクシン一族圧迫
2015年2月20日(金) 02時12分(タイ時間)
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