外国人旅行者が数多く訪れるバンコク都心のラチャプラソン交差点で8月17日に起きた爆弾事件。タイ人や中国人など20人が死亡、日本人男性1人を含む128人が重軽傷を負い、現場を走行中の自動車、バイク数十台が破損、一部が炎上した。
翌18日には都内チャオプラヤ川のサトン船着場の水路で爆弾が爆発。水中だったために死傷者は出なかったものの高い水柱が上がり、通りがかった人々が避難する事態に陥った。
今回の犯行の手口、浮かび上がる犯人像、タイの治安維持状況と共に、その中で日本人が心がけるべき危機管理について、警視庁元刑事でタイ警察現役警察大佐の戸島国雄氏に話を伺った。
明らかに殺傷を目的とした外国人による犯行
――爆弾事件そのものについて
私が捜査に当たった事件だけでも、1974年に発生した東アジア反日武装戦線「狼」による「三菱重工爆破事件」、同年の「鹿島建設爆破事件」、翌年の「間組爆破事件」など多くの爆弾事件があり、日本も無差別爆弾テロというものを経験している。現代の日本人はとかく、「タイだからこのような物騒な事件が起きる」と思いがちだが、事件が起きる可能性というのはどの国も変わらない。
――今回の事件の手口は?
鑑識技術指導で1995年に初来タイして以来、タイでもさまざまな爆弾事件の現場検証と捜査に携わってきた。これまでの事件と比較して分かることは、今回の犯行は明らかに外国人によるもの、ということだ。タイ人(タイ民族)も爆発事件を起こすことは多いが、仏教の教えがどこかで作用するのであろう、殺傷ではなく威嚇(いかく)が目的であり、規模は決して大きくない。バンコク郊外で以前、数階建てのビルが崩れるほどの爆発事件があったが、火薬調合が失敗したためだった。
それに対し、今回の事件は不特定多数を殺傷する目的で爆弾が作られている。爆薬にベアリングを仕込むなど、最大限の効果を狙っている。大量殺人を目的に爆弾が作られた前例は、少なくとも私がタイ警察と関わりを持つようになってからは皆無だ。
――タイ深南部のテロ組織の手口とも異なるのか?
同地ではよく、国際テロ組織による作り方や仕掛け方が用いられる。爆弾の容器にはたいてい消火器が利用される。また、国際テロ組織は狭い範囲で2発目3発目を仕掛ける。事件発生を受けて治安当局が集まってくるのを見計らい、追い打ちで爆破させるのが常套手段だ。
今回ラチャプラソン交差点で起きた爆発は、未発の爆弾が見つかったり、翌日にサトン船着場で別の爆発が続いたりした。しかしそれは、起爆方法を見てもタイ深南部のテロ組織が用いる手口ではない。
〈戸島国雄〉
1941年1月1日生まれ。千葉県出身。1963年に警視庁入庁。看守(牢番勤務)を経て、本庁刑事部鑑識課へ。現場鑑識写真係として計36年間、テロ爆弾、殺人、強盗、強姦、火災、飛行機、列車事故など数々の大事件事故現場を踏む。
1993年日本で初めて事件現場立ち入り規制線(黄色いテープ)を開発し日本はおろかタイ国も称している。
1972年ごろより似顔絵描きを独学し、鑑識似顔絵として捜査に活用し初の「似顔絵捜査官001号」として任命、それまで主流だったモンタージュ写真から似顔絵へと、鑑識技術の流れを変える。1995年にはオウム真理教の捜査を担当している。受賞した警視総監賞、警察庁長官賞、各本部長賞や部長賞など計107本。
1995年11月、国際協力機構(JICA)の技術協力指導員として鑑識技術を伝えるため、タイ警察局科学捜査部に派遣される。技術協力指導員としては極めて異例ながらも、事件の現場に赴いて自ら鑑識活動を実践、検挙率のアップを促す。
1998年に帰国して警視庁を定年退職するも、タイ警察の要請を受けて2002年に再び来タイ、JICAシニアボランティアとして活躍。以降も警察大佐(日本の警視正に相当)の身分で、日本人絡みを含め、多くの事故・事件の捜査に加わる。
戸島国雄タイ警察大佐に聞く バンコク連続爆弾事件 (1)浮かび上がる犯人像
2015年9月6日(日) 11時22分(タイ時間)
注目ニュース
特集
- ├タイ、新型コロナ新規国内感染44人 [ 2021年3月4日 17時28分(タイ時間) ]
- ├タイ食品大手CPF、2020年増収増益 売り上げ5900億バーツ [ 2021年3月4日 17時27分(タイ時間) ]
- └タイ水産加工大手タイ・ユニオン、2020年増収増益 売り上げ1324億バーツ [ 2021年3月4日 17時27分(タイ時間) ]
新着PR情報
- 車内での飲食や飲酒って?《Q & Aコーナーその25》
- 石川商事 2021年3月おすすめ物件 全6件
- 【動画更新】圧倒的実力差!?後半開始早々に勝負は決まってしまうのか?
- 工業団地・工場・倉庫からリゾートホテル・日本食まで「ピントン工業団地…
- バンコク首都圏の新たな工業団地 サムットプラカン県「プラカサ工業団地」
- タイ東部の主要工業団地群の中心、レムチャバン輸出港 からわずか10キロ「…
- 在タイ日本人が安心して通える「バムルンラードインターナショナル病院」
- タイとベトナムで50社が導入!ファイル転送ミドルウェア「HULFT」
- 日系企業130社以上が入居するタイ有数の不動産会社による賃貸工場・倉庫
- 一戸建てから事業用地までタイの不動産案内
- 航空券オンライン予約好評受付中! Shindai Co., Ltd.
- 日本人が現場に立ってこその施工 Fukutaka Komuten
- 心で感じて心で応える精密技術の開発を追求 Nishii Fine Press (Thailand…
- パッケージを主体としたセミオーダーメイド システム開発・導入・運用保…
- タイでの日系企業向けERPパッケージならこちら「バンコク・トキ・システム」
- 幼稚部から高校までのインター校、世界レベルのカリキュラムをバンコクで5…
- タイでも潤滑油は出光「アポロタイ」まで
- タイ南部経済回廊と隣接した戦略的ロケーションの工業団地「カビンブリ工…