戸島 国雄 氏(警視庁元鑑識捜査官・元似顔絵捜査官・タイ警察現役警察大佐)
――国軍や警察の動きについて
事件発生直後の初期活動(初動捜査)とそれに続く捜査は、国軍、警察とも非常に評価が高い。日本では普通に張られる規制線(立ち入り禁止テープ)は、タイの事件現場ではこれまで使われてこなかった。私が90年代に指導の一環として持ち込んだものだが、今回の事件では迅速に張られた。爆発によって地面の舗装が剥がれた大きさと深さ、いわゆるロート痕によって爆弾の威力を見極め、破片一つ一つを回収して証拠品として公開した手際の良さは、日本の鑑識捜査の要領が浸透したと判断できる。
都内各所に数多く設置されている防犯カメラも、容疑者割り出しに貢献した。日本から私のもとに、「防犯カメラの普及に感心している。日本でもこれほど設置されているかどうか」とメールが送られてきたほどだ。さらに、防犯カメラの映像や目撃者の証言から作られた容疑者のモンタージュ。これも技術指導の一環として日本からタイに持ち込んだものだが、今回は特に迅速に作られ、バンコク都民からの情報提供につながった。
――このような犯罪はやはり複数の人間が必要なのか?
火薬は買うものではなく作るもの。難しい公式は不要で、農薬、肥料、白砂糖などを用いて簡単に作れる。しかし材料は仕入れなければならない。共犯者、協力者、支援者はおのずと必要になってくる。複数でないと今回のような事件は起こせない。その組織もしくはグループにタイ人が絡んでいる可能性はある。
爆弾は金属製の硬い容器に、中身をぎっしり詰めれば詰めるほど威力が増す。軍隊の手榴弾が良い例だ。日本では昔、圧力鍋がよく使われた。白砂糖はライターであぶっただけでもすぐに燃える。火薬を調合する際に燃え方が悪かったら白砂糖を足せばいい。これがプラスチックなどの柔らかい容器だと、ボアっと燃えるもののその範囲はせいぜい数メートルで、さほど威力はない。
いずれにせよ、複数の人間の関与が必要となり、タイ国内に受け入れ体制があったからこその犯行だろう。
――メディアで報道されているようなウイグル族の問題に絡んでいるのか?
中国新疆ウイグル自治区からの避難民をタイで受け入れ、偽造のトルコ・パスポートで同国に送り込む組織、という可能性が高いようだ。逮捕された容疑者は、偽装したパスポートの出来が悪く、自分自身が出国できずにいたとも聞く。その辺りのツメの甘さや、先に述べたような爆弾を仕掛けるその手口を見ても、テロ専門ではないように思われる。
警察が押収した100冊ともいわれる偽造パスポートの数を見ると、タイ国内の組織もしくはグループの規模は決して小さくないだろう。今回の事件の容疑者が逮捕されても一件落着とはいかないかも知れない。
〈戸島国雄〉
1941年1月1日生まれ。千葉県出身。1963年に警視庁入庁。看守(牢番勤務)を経て、本庁刑事部鑑識課へ。現場鑑識写真係として計36年間、テロ爆弾、殺人、強盗、強姦、火災、飛行機、列車事故など数々の大事件事故現場を踏む。
1993年日本で初めて事件現場立ち入り規制線(黄色いテープ)を開発し日本はおろかタイ国も称している。
1972年ごろより似顔絵描きを独学し、鑑識似顔絵として捜査に活用し初の「似顔絵捜査官001号」として任命、それまで主流だったモンタージュ写真から似顔絵へと、鑑識技術の流れを変える。1995年にはオウム真理教の捜査を担当している。受賞した警視総監賞、警察庁長官賞、各本部長賞や部長賞など計107本。
1995年11月、国際協力機構(JICA)の技術協力指導員として鑑識技術を伝えるため、タイ警察局科学捜査部に派遣される。技術協力指導員としては極めて異例ながらも、事件の現場に赴いて自ら鑑識活動を実践、検挙率のアップを促す。
1998年に帰国して警視庁を定年退職するも、タイ警察の要請を受けて2002年に再び来タイ、JICAシニアボランティアとして活躍。以降も警察大佐(日本の警視正に相当)の身分で、日本人絡みを含め、多くの事故・事件の捜査に加わる。
戸島国雄タイ警察大佐に聞く バンコクの連続爆弾事件 (2)評価される初期活動と捜査
2015年9月6日(日) 11時23分(タイ時間)
《newsclip》
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