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タイ軍政、自ら起草した新憲法案否決 民政復帰2017年以降に

2015年9月7日(月) 14時44分(タイ時間)
【タイ】タイ軍事政権が設置した非民選の議会、国家改革議会(定数250)は6日、憲法起草委員会が取りまとめた新憲法案の採決を行い、反対135、賛成105で否決した。

 軍政はこれを受け、新たな憲法起草委員会を発足させ、憲法案の起草作業を一からやり直す。民政移管のための総選挙は新憲法の施行後、実施するとしており、民政復帰は早くても2017年以降に先送りされる見通しだ。

 軍政は自ら起草した新憲法案を傘下の非民選議会で却下した形で、政権長期化を狙った自作自演という見方も出ている。ただし、今回否決された憲法案は、政府が機能不全となった場合、軍・警察幹部らによる特別委員会が行政権と立法権を掌握するというクーデターの合法化のような条項が盛り込まれていたほか、非議員の首相を認め、議会上院を基本的に「専門家」による任命制に戻すなど、民主化の流れに逆行する内容で、軍政と対立するタクシン元首相派だけでなく、反タクシン派政党民主党のアピシット党首(元首相)らも、国家改革議会に対し、否決を呼びかけていた。

 今後の政治日程をみると、軍政は10月上旬までに新たな憲法起草委員会を設置し、180日間で新憲法案を起草する。その後、新憲法案の国民投票を行い、可決された場合、数カ月かけて関連法を整備し、憲法施行後、民政移管のための総選挙を実施する。

 タイではクーデターなどで度々憲法が廃止され、その度に新しい憲法が制定されてきた。1997年には、選挙で選ばれた憲法議会を通じて作成された新憲法が施行され、初の国民参加型で最も民主的な憲法との評価を受けた。この1997年憲法は、2006年の軍事クーデターでタクシン政権(2001―2006年)を打倒した軍部により破棄された。軍政下の2007年に制定された新憲法は、議会上院のほぼ半数を非民選とするなど、特権階級の政治介入を制度化し、政党の力を殺ぐ内容となった。この憲法も2014年5月の軍事クーデターで破棄され、現在は軍部が実質的に全権を握る暫定憲法が施行されている。

 新憲法について、タクシン派組織UDD(通称、赤シャツ)は「軍政による憲法起草は正統性がない」として、1997年憲法の再施行を要求している。2013―2014年の反タクシン派デモを主導したステープ元副首相(元民主党幹事長)は今回否決された案を支持していた。


《タクシン派vs反タクシン派》

 タイでは2006年以降、東北部と北部の住民、バンコクの中低所得者層の支持を集めるタクシン派と、特権階級、南部住民とバンコクの中間層を中心とする反タクシン派の抗争が続き、政治・社会が混乱している。

 反タクシン派はタクシン氏を反王室の腐敗政治家と糾弾し、2006年の軍事クーデターでタクシン政権(2001―2006年)を打倒した。タクシン派は2007年の民政移管選挙で勝利したものの、2008年に「司法クーデター」と呼ばれた裁判所によるタクシン派与党解党で反タクシン派に政権を奪われた。反タクシン派政権下の2009年、2010年、タクシン派は、特権階級が軍官財界を動かし民主主義や法治をねじまげているとして、政権打倒を目指すデモを行い、2010年のデモでは治安部隊との衝突で、市民、兵士ら91人が死亡、1400人以上が負傷した。

 タクシン派は2011年の下院総選挙で再度勝利し、タクシン元首相の妹のインラク氏が首相に就任した。しかし、2013年10月から、インラク政権打倒を目指す反タクシン派市民のデモがバンコクなどで拡大。2014年1、2月には数万人がバンコクの主要交差点を長期間占拠した。5月に入り、軍が治安回復を理由に戒厳令を発令、クーデターでタクシン派政権を倒し、全権を掌握した。軍は当初、両派の和解を目指すとしていたが、タクシン派の官僚、軍・警察幹部のほとんどを左遷し、地方のタクシン派団体を解散に追い込むなど、タクシン派潰しを進めた。今年1月には、軍政が設立した非民選の暫定国会「立法議会」が、「コメ担保融資制度をめぐる職務怠慢」でインラク前首相を弾劾にかけ、前首相の参政権を5年間停止した。
《newsclip》

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