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『内田クレペリン検査』に見る国別行動特性比較 ―日本、タイ、ベトナム、フィリピン―

2015年9月30日(水) 00時45分(タイ時間)
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■内田クレペリン検査とは

 内田クレペリン検査は、ドイツの精神医学者エミール・クレペリン(1856~1926)が行なった作業心理の研究に着想を得て、日本の心理学者内田勇三郎(1894~1966)が、1920年代から研究を始め、検査方法と妥当性について研究を重ね開発したもので、国産の心理テスト第一号と言えます。

 最大の特徴は、1桁の数字の連続加算という検査方法(●表1)にあり、自己認知をベースとしないため、言語・文化・世代に制約されず、足し算のできる人なら誰でも全く同じ基準で「人が行動するときの能力」と「その能力を発揮するときの特徴」の二つをまとめて測ることができます。

 例えば、「ウサギとカメ」の寓話では、競争というプロセスにおいて、能力と行動に「ウサギらしさ」と「カメらしさ」が現れていますが、この「~らしさ」を実際に競争する前に明らかにする、あるいは結果に至るプロセスを検証するための検査だと考えてください。

 内田クレペリン検査では、前半15分間の作業⇒5分間の休憩⇒後半15分間の作業の結果として、(1)足し算のできた数(作業量)、(2)1分ごとの作業量を結んだ折れ線グラフ(作業曲線)、(3)答えの間違いの出方を評価します。(●表2)

 たった30分間の作業ですので、各行の作業量はそれほど変わらないだろう、あるいは疲れて下がって行くだろうと想像されるかもしれませんが、作業曲線は見事にジグザグになり、通常は後半の方が作業量は多くなります。これは、受検者が作業中に、「意思緊張」「疲労」「興奮」「慣れ・練習」「休憩」の影響をコントロールした結果です。

 判定結果は、縦横の2軸にポイントされます。(●表3)

 上下は能力の水準や行動のテンポ、左右は性格や行動面の特徴を表します。縦軸は上から、「 A水準が高い」「A不足はない」「Bいくらか不足」「Cかなり不足」「Dはなはだしく不足」、横軸は、左へ行くほど「定型度」が高くなり、右へ行けば行くほど「非定型度」が高くなります。

 ここで重要なことは、行動特性に「良い・悪い」があるわけではありません。例えば、ジェネラリストとして活躍している人は定型が多くみられ、スペシャリストとして活躍している人は非定型が多くみられるというように、行動特性と仕事が合致しているときに、良い結果になりやすく、そうでないときに悪い結果になりやすいということです。能力の水準や行動のテンポも同じです。もし、ウサギとカメが部下だったら、それぞれに合ったマネジメントをすれば、どちらも良い結果を出すことができるでしょう。(●表4)

■国別行動特性比較
―日本、タイ、ベトナム、フィリピン―

 さて以上を踏まえて、日本、タイ、ベトナム、フィリピン各国の行動特性を見て行きましょう。日本では60年間で延べ5千万人以上のデータがありますが、他の国は収集途中ですので、まだまだ学術的ではありませんが傾向はある程度明らかです。

 ここでは「平均作業曲線」という言葉が出てきます。受検者一人一人の作業曲線を合成(平均)して得られるグラフで、集団としての「働きぶり」をみるものです。その集団(国、地域、組織)の産業効率のベースラインともいえるかもしれません。(●表5)

赤:日本(平均作業量56.7)
 世界的にみて高い平均作業量と安定したコントロール(幅の狭い平均作業曲線の形)が集団傾向として指摘されています。

青:タイ・バンコク(平均作業量41.9)
 平均作業量は、日本の傾向と比較するとゆっくりしたペース、作業能率であることが予測されます。作業曲線の形は平坦な特徴がみられ、これは比較的マイペースで行動や情緒が安定しているともいえる反面、臨機応変な対応や環境の変化に適応するのに時間がかかるといった特性が予測されます。

緑:ベトナム・ホーチミン(平均作業量51.4)
 平均作業量は日本の傾向に近く(ハノイを含めるともっと近くなる)、世界的にみて比較的高い水準の作業能率が予測されます。作業曲線の形は、日本人以上に初頭部分(検査のとりかかり部分)の反応が高いという特徴がみられ、新しい環境や仕事の変化などに対する適応が、比較的早いことが予測されます。

橙:フィリピン・マニラ(平均作業量41.3)
 平均作業量は、日本の傾向と比較するとゆっくりしたペースで、タイとほぼ同水準といえます。作業曲線の形は、タイほど平坦ではなく、初頭部分もしっかり確認でき、ベトナムの形に近く、新しい環境や仕事の変化に対する適応可能性も低くないことが予測されます。

作業量による分布(●表6)

定型・非定型による分布(●表7)

 こうして比較してみると、同じベトナムでもハノイとホーチミンとでは、行動特性に大きな違いがありそうですし、タイで成功した人事マネジメントをそのままベトナムに適用させても上手く行かないかもしれません。これらは、長年各地に駐在している方であれば、体験的に理解されていることかもしれませんが、今後日系企業が世界、特に東南アジアで活躍して行くためには、進出先の人々の行動特性をあらかじめ知っておくことは極めて重要であると思われます。

■『内田クレペリン検査』のデータを有効活用するためのポイント

(1)国、地域、集団ごとにある作業傾向のベースラインを把握する(マクロな視点)。
(2)受検者個人の作業傾向を把握する(ミクロな視点)。
(3)個人と、その人が所属する集団との相対的な関係を把握する(ギャップ分析)。

 今回見て来たものは(1)に当たりますが、実際のマネジメントでは(2)(3)が重要です。無いものねだりをせず、仕事に人を合わせるか、人に仕事を合わせるかが、成功の秘訣でしょう。

 今年は、インドネシア・ジャカルタおよびミャンマー・ヤンゴンでのサンプルデータ収集開始と、ベトナムでの大規模な調査を予定しておりますので、このような場をお借りして、また改めてご報告させていただければ幸いです。

アジア・ダイナミック・コミュニケーションズ株式会社(バンコクオフィス)
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《newsclip》