RSS

タイ新憲法案公表、軍支配継続

2016年3月30日(水) 14時24分(タイ時間)
ムエタイ(タイ式ボクシング)の蹴りを披露するプラユット首相(29日)の画像
ムエタイ(タイ式ボクシング)の蹴りを披露するプラユット首相(29日)
写真提供、タイ首相府
【タイ】タイ軍事政権の憲法起草委員会は新憲法案を完成させ、29日午後に一般公開を開始した。

 新憲法案によると、国会は公選制の下院(定数500)と軍政が指名する上院(同250)の二院制で、非議員の首相も認める。

 2大政党制を狙った1997年憲法の選挙制度改革が軍政の宿敵であるタクシン元首相の台頭を許したとみて、下院は大政党が不利となる選挙制度に変更。不安定な連立政権が成立する条件を整えた。

 指名制の上院は2017―2022年の5年間で、軍トップも議員に含まれる。

 軍・特権階級が軍事力と司法、傘下の上院を通じ、連立政権で不安定な下院と政府を間接的に支配することを狙った内容で、プレム政権(1980―1988年)の政治体制をほうふつとさせる。

 軍政は8月に新憲法案の国民投票を実施し、来年7月に下院総選挙を実施する方針。新憲法案が否決された場合の対応は明らかにしていないが、新憲法案に批判的なタクシン派の政治家や市民を相次いで「態度矯正」のため拘束するなど、国民投票での可決を力ずくでもぎ取る姿勢を鮮明にしている。

 新憲法案について、タクシン派政党のプアタイ党は30日、声明を出し、起草に民意が反映されず、非民主的な内容だと批判。国民に対し、国民投票での反対を呼びかけた。

 反タクシン派の民主党は29日、オンアート副党首が記者会見し、新憲法案の内容を精査した上、対応を決めると述べた。


《タクシン派vs反タクシン派》
 タイでは2006年以降、東北部と北部の住民、バンコクの中低所得者層の支持を集めるタクシン派と、特権階級、南部住民とバンコクの中間層を中心とする反タクシン派の抗争が続き、政治・社会が混乱している。

 反タクシン派はタクシン氏を反王室の腐敗政治家と糾弾し、2006年の軍事クーデターでタクシン政権(2001―2006年)を打倒した。タクシン派は2007年の民政移管選挙で勝利したものの、2008年に「司法クーデター」と呼ばれた裁判所によるタクシン派与党解党で反タクシン派に政権を奪われた。反タクシン派政権下の2009年、2010年、タクシン派は、特権階級が軍官財界を動かし民主主義や法治をねじまげているとして、政権打倒を目指すデモを行い、2010年のデモでは治安部隊との衝突で、市民、兵士ら91人が死亡、1400人以上が負傷した。

 タクシン派は2011年の下院総選挙で再度勝利し、タクシン元首相の妹のインラク氏が首相に就任した。しかし、2013年10月から、民主党が主導する反タクシン派市民のデモがバンコクなどで拡大。2014年1、2月には数万人がバンコクの主要交差点を長期間占拠した。5月に入り、軍が治安回復を理由に戒厳令を発令、クーデターでタクシン派政権を倒し、全権を掌握した。

 軍は当初、両派の和解を目指すとしていたが、タクシン派の官僚、軍・警察幹部のほとんどを左遷し、地方のタクシン派団体を解散に追い込むなど、タクシン派潰しを推進。2015年1月には、軍政が設立した非民選の暫定国会「立法議会」が、「コメ担保融資制度をめぐる職務怠慢」でインラク前首相を弾劾にかけ、前首相の参政権を5年間停止した。

 軍政は当初、2016年に総選挙を実施するとしていたが、2015年に軍政傘下の憲法起草委員会が取りまとめた新憲法案を自ら否決。新たに起草作業に入り、選挙時期を先送りした。

 タイではクーデターなどで度々憲法が廃止され、その度に新しい憲法が制定されてきた。1997年には、選挙で選ばれた憲法議会を通じて作成された新憲法が施行され、初の国民参加型で最も民主的な憲法との評価を受けた。この1997年憲法は、2006年の軍事クーデターで破棄された。軍政下の2007年に制定された新憲法は、議会上院のほぼ半数を非民選とするなど、特権階級の政治介入を制度化し、政党の力を殺ぐ内容となった。この憲法も2014年のクーデターで破棄され、現在は軍部が実質的に全権を握る暫定憲法が施行されている。
《newsclip》

注目ニュース

タイ軍政首相、日系自動車メーカー現地幹部と会談newsclip

【タイ】タイ軍事政権のプラユット首相は7日、棚田京一タイ国トヨタ自動車社長(トヨタ自動車常務役員)ら、トヨタ、ホンダ、日産、いすゞのタイ法人トップとバンコクのタイ首相府で会談した。

「前首相、美人だろ」 タイ軍政幹部newsclip

【タイ】タクシン元首相の妹のインラク前首相が「どこへ行くにも軍の監視がついて回る。人権侵害ではないか」と不満を訴えたとされる件で、プラウィット副首相兼国防相は2月29日、「問題が起きないよう警護し...

2年空席のタイ大僧正、後任めぐりサンガと軍政対立newsclip

【タイ】2013年に100歳で死去したタイ仏教僧団(サンガ)の最高指導者、第19代大僧正(ソムデートプラサンカラート)の後任をめぐり、サンガ主流派とタイ軍事政権の対立が深まっている。

「何の価値もない」 タイ軍政首相が激怒newsclip

【タイ】短気で知られるプラユット首相が2日、軍事政権が作成した新憲法案に関する記者団の質問に機嫌を損ね、怒りをぶちまける一幕があった。首相は1月1日のテレビ演説で自らの短気を戒めたばかりで、早くも...

「民主主義は選挙だけではない」 タイ軍政首相、米国務次官補に反論newsclip

【タイ】ダニエル・ラッセル米国務次官補がタイを訪問し、16日、タイ軍事政権のプラユット首相と会談した。

軍政首相の新曲「なぜならあなたはタイ国だから」newsclip

【タイ】タイ軍事政権のプラユット首相(元陸軍司令官)は22日、閣議後の記者会見で、「国民への新年の贈り物」として、自ら作詞し、プロの作曲家が曲をつけた新曲「なぜならあなたはタイ国だから」を披露した。

特集



新着PR情報