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ベトナム麺紀行

2016年5月13日(金) 01時26分(タイ時間)
バインダーの画像
バインダー
写真、宮城英二
バインダーの画像
バインダー
写真、宮城英二
ミィエン・ルオンの画像
ミィエン・ルオン
写真、宮城英二
ブンリウ・クアの画像
ブンリウ・クア
写真、宮城英二
文・写真/旅するノマドライター=宮城英二

 バンコクからホーチミンまで飛行機で1時間半、ハノイまででも2時間弱。タイ在住者にとって「安・近・短」の旅行先であるベトナムは、南北2300キロという細長い国土を持つだけに、麺料理の豊富さは特筆に値する。

 麺の種類から言えば、ご存じ平打ち麺のフォーのほか、南部では平打ち麺でも細めのフーティウ、北部では押し出し製麺方式のブンがポピュラーだ。いずれも米粉が原料。このほか、ミーが小麦麺、ミィエンが春雨を指す。屋台では麺の種類と具を指定する必要があるから、食べ歩きには押さえておきたい単語たちだ。

◇サトウキビの麺
 まずはハノイの旧市街あたりから歩いてみよう。さすが北部。フォーの店は至るところにある。豚ミンチの焼き肉と共に頂くつけ麺のブンチャーも旅行者に人気だ。

 何か変わり種はないかなと路地を歩くと、「バインダー」という看板。文具みたいな名前だが、どうも麺の一種だ。狭い歩道に並べられた低いテーブルと椅子に腰掛け、とりあえずそのバインダーとやらを一杯注文する。売り子がかごから取り出したのは、褐色できしめんのように平らな麺だ。何かのデンプンが原料だろうか。調べてみると、港町ハイフォンあたりの名物麺で、米粉にサトウキビの汁を混ぜているから赤褐色なのだそうだ。売り子は具を選べと急かす。看板にはクアとオックとある。クアはカニのことだが、ベトナム語初級の私にオックを知るすべはない。そういうときは冒険するに限る。「じゃ、オックで」と注文すると出てきたのは、タニシのむき身だった。そのほか、トマトやネギが乗っている。最も気になる麺のお味だが、噛むとほのかな甘みが広がるものの、サトウキビジュースのような激甘ではなく、タマリンド味の酸味があるスープにもよく合う。太めの麺はガッツな食べ応えだ。

◇栄養満点のタウナギ春雨
 さてと、もう少し路地歩きをしてみよう。ミィエンは春雨のことだと冒頭述べたが、ハノイではスープ春雨の屋台に黒い揚げ物がうず高く積まれている光景を目にする。看板には「ミィエン・ルオン」とある。これはいったい? 正体は田んぼの恵み、タウナギだ。スープ春雨自体はベトナム全土で見られる。鶏肉をトッピングした「ミィエン・ガー」が最も一般的だが、北部に来るとタウナギを出す店が一気に増える。あっさりとした鶏ガラスープにカリカリのタウナギの食感はスナック感覚。食べているうちにスープに馴染んで、しっとりしてくる。栄養価も高く、DHAとレシチンが豊富なのだとか。汁なしや炒め麺にする食べ方もある。

◇カニ、エビの旨味博覧会
 勿体ぶるわけではないが、筆者イチオシが北部の道端でよく見られるブンリウ。タマリンドや米酢を使い酸味があるスープにトマト、エビのペースト、揚げ豆腐などが乗った米麺で、メーンの具材はカニ、魚、タニシなどのバリエーションがある。最も一般的なのはカニを使ったブンリウ・クアだ。使われるカニは田んぼで取れる淡水ものだそうで、先ほどのタウナギ同様、田んぼの恵みを生かして発達した庶民料理と言えるだろう。カニはほぐし身の状態で供されるが、カニ、エビときたら、もう旨味の大博覧会である。濃厚なだしが口いっぱいに広がる幸せいっぱいの一品だ。

◇豚骨ベースのクリアスープ
 なんだ、北部ばかりじゃないか。先のベトナム共産党大会では南部出身のグエン・タン・ズン前首相がまさかの失脚に追い込まれ、政治の世界は北部中心だ。しかし、食の世界では中南部だって負けてはいない。
 ホーチミンの代表的な観光地ベンタイン市場の中央に位置する屋台街では、中南部のさまざまな麺料理が気軽に楽しめる。南部代表は前述のフーティウ。フォーは一般に具が鶏肉か牛肉というチョイスだが、豚肉を選ぶことができ、豚骨をベースにスルメイカやエビで取った澄んだスープが特徴だ。ホーチミンではフォーよりもむしろフーティウの看板が目に付くことも多い。

◇ベトナム版せんべい汁
 一方、中部代表として紹介したいのは、クアンナム省がルーツとされる麺「ミー・クアン」で、麺と具に強烈な特徴がある。麺は平打ちの米麺なのだが、なぜか黄色をしている。だから「ミー」と呼ばれるのだろうが、実はターメリックで着色してあるのだ。スープは少なめ。具には豚肉やエビのほかにライスクラッカーが付いてくる。これを割り入れて食べるというわけだ。香ばしく、さくっとした食感は、やがてスープを含んでしっとりと変化する。青森県八戸市にせんべい汁という郷土料理があるが、まさにそのベトナム版だ。
 このように特色あふれるベトナムの麺料理。紹介できたのはごく一部だ。次の休みはベトナム麺紀行など企画してみてはどうだろうか。
《newsclip》

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