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講演会取材 スペシャル公演 アジアの僻地に医療を届ける! ~日タイ2人の医師のコラボレーション~

2016年6月9日(木) 22時23分(タイ時間)
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講演会取材 スペシャル公演 アジアの僻地に医療を届ける! ~日タイ2人の医師のコラボレーション~
吉岡 秀人 医師の画像
吉岡 秀人 医師
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カセー・チャナオン医師
吉岡 秀人 医師 (ジャパンハート代表)
Dr. Krasae Chanawongse カセー・チャナオン医師 (Dr.カセー・チャナオン財団代表)

ジャパンハートとDr.カセー・チャナオン財団がMOU締結 人材育成と緊急時医療活動で協働

 国際医療NGOの特定非営利活動法人「ジャパンハート」と、タイで地域医療・公衆衛生の発展を支援する「Dr.カセー・チャナオン財団」が1月12日、人材育成と緊急時医療活動で協働していくことを発表、MOUを締結した。今回のスペシャル講演が開催された4月19日、会場の都内バムルンラード・インターナショナル病院に関係者が顔を揃え、改めて協働方針を示した。

 両者は今回の協働でお互いのリソースやネットワークを共用、看護師など国際的な人材を育成することにより、タイおよび周辺諸国でさらに充実した医療活動を目指す。ジャパンハートにとってタイは、ミャンマー、ラオス、カンボジアなどで医療活動を続けていく上での地理的なハブであり、より強固な拠点を構築することになる。

「医療の届かないところに医療を届ける」 吉岡 秀人 医師

 吉岡医師は大分大学医学部を卒業、救急病院などでの勤務を経て1995年にミャンマーで医療活動を開始。2年後にいったん帰国し小児外科医として活躍、2003年に再びミャンマーに渡った。多くのメディアで紹介されているとおり、全て自費での医療活動だ。ジャパンハートを立ち上げたのは2004年だ。

 ミャンマーでの活躍がよく知られているが、ラオスやカンボジアといった国でも積極的に医療活動を続けている。子どもに対する診療・手術が多く、その全てが無償。額が腫れ上がる脳瘤(のうりゅう)、唇が裂けた口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)などの手術は、ミャンマーで最多をこなしたであろう医師と評される。首が腫れ上がる頸部腫瘍(けいぶしゅよう)などの病気も多く、これらは日本に渡航しての手術となり、何人もの子どもたちを日本に送った。また、これまで黙って死ぬのを待つのがほとんどだった小児がんを少しでも診療しようと立ち上がり、カンボジアで今年5月、小児がん専門病院の開院にこぎつけた。

 見た目は悲観的でも命に別状のない病気も多い。しかし、脳瘤や口唇口蓋裂の顔では、幸せな人生を送れるとは言い難い。そのような子どもたちを数多く見てきて、数多くの診療・手術をこなし、命を助けることだけが医療でないと気付いたという。「患者の人生の質を高めるのが医療の役割であり、命を助けるのはその一部」(吉岡医師)と話す。

 医療を届けたいと思う先はもちろん貧困層だが、富裕層も拒まない。自分のお金で病院に通うことができるからと言って富裕層の患者を断われば、「あそこはお金が必要」という噂が立って貧困層の患者が真っ先に去っていく。彼らは情報から最も遠いところに住んでいるから、やって来るのも最後だ。「医療を最も届けたい貧困層のために、富裕層を含めた患者の流れを作る」(吉岡医師)ことが必要だという。

 ジャパンハートは常に、「医療の届かないところは4つある。一つ目は貧困地域、二つ目は僻地(へきち)・離島、三つ目は被災地、四つ目はどこだと思う?」と、ジャパンハートを訪れる日本の医療者に問いかけて活動を続けている。タイやその周辺諸国にとどまらず、4月に発生した熊本地震にも医療支援で駆け付けている。

「タイ国:僻地医療におけるリーダーシップ」 Dr. Krasae Chanawongse

 カセー医師は外相や首相府顧問など政治家としての経歴が華々しく、タイ国民にもよく知られた存在だが、もともとはジャパンハート代表の吉岡医師同様、医療の届かない僻地にたった1人で赴いた経験を持つ。カセー医師が医療活動を始めた50年も昔のタイは、政府が全国400カ所ものアンプー(タイの行政区分で県の下に位置、日本の郡に相当)に1カ所ずつ病院や診療所を建てたとしても、そのスピードはせいぜい年4―5カ所、全国を網羅するのに単純計算で50年かかるという状況だった。その中でカセー医師は、「一つの村で住民が1バーツずつ出し合えば診療所を立ち上げることができる」と考え、実行に移した医師だった。

 当時のタイの地方は、カセー医師の出身地である東北部コンケン県だけをとっても、伝染病が心配されるような不衛生な環境だったという。公衆衛生・保健衛生の管理の原則は、

1)技術的共鳴
2)社会受容性
3)経済的実現可能性
4)民衆のフル参加・フルコミット

としている。医療が行き届かない地方で、住民に医療の必要性を理解してもらい、その医療の場を整え、経済的にも安定させ、住民が率先して医療に携わっていく、という方向性を打ち出して実践していかなければならない。

 「無償で診てくれる医師がいる。病気になったらすぐ訪れなければならない。」と分かっていても、住民はなかなか診療所を訪れない。それは交通費の問題がほとんどだ。多くの住民がわずかな旅費を工面できずにいた。そのような状況でもカセー医師は、「病気になったらすぐに来なさい」と言い続けたという。

 貧困地域で医療を続けていくには「リーダーシップ」が必要だ。その哲学は、

1)希望
2)謙虚
3)人道性
4)ユーモア
5)正直さ

 貧困地域であっても、生きることの希望を持たせること、その地の文化・伝統とそれを重んじる人々を謙虚に受け入れること、貧困地域であっても他地域と区別ない医療を届けること、その土地の人々とユーモアを持って接すること、そして全てに対して正直であること。「リーダーシップはすなわち、住民に対する愛だ」(カセー医師)。

 また、リーダーとしての行動力を武士道に例えている。

1)恐れない
2)驚かない
3)疑わない
4)ためらわない

  カセー医師自らもこのような行動力で医療活動を続け、1973年にはタイ僻地医療、公衆衛生向上の功績を讃えられてマグサイサイ賞を受賞、2004年にはタイと日本の友好関係の構築に寄与したことを讃えられて旭日大綬章を授かっている。


主催:NPO法人ジャパンハート
後援:在タイ日本国大使館
    タイ国日本人会
    スミタ・トレーニング・センター&コンサルタント
    バムルンラード・インターナショナル病院
    パーソネルコンサルタント
    Thai Association for International Understanding
《newsclip》