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深南部ルポ-1 ラマダン終盤で十数カ所 テロ続発に揺れるタイのイスラムの地-1

2016年8月9日(火) 23時54分(タイ時間)
カーボムの現場に集まった陸軍兵士や警官などの治安部隊の画像
カーボムの現場に集まった陸軍兵士や警官などの治安部隊
爆弾を仕掛けられた車の残骸と爆発によって全焼した検問所の建物の画像
爆弾を仕掛けられた車の残骸と爆発によって全焼した検問所の建物
 タイ深南部で続くイスラム・テロは昨年辺りから小康状態となり、今年に入っても沈静化が続いていたが、6月にイスラムの断食月であるラマダンに入って国際テロ組織が聖なるラマダン・テロを呼びかけたことにより、世界各地でテロが続発。

 タイ深南部も7月初めのラマダン明け直前の数日間、爆弾や銃撃などのテロが相次いだ。ラマダン明けの祝日を挟んでニュースクリップ記者が現地を取材した。

■ラマダン最後の数日間に相次ぐテロ

 タイ深南部はマレーシアに国境を接するパタニー、ヤラー、ナラティワートの3県を指し、住民のほとんどをマレーシアと同じマレー民族が占める。この3県に北隣ソンクラー県内4郡を加えた一帯が、テロ発生地域に指定されている。タイ語のニュースでは南部国境県、英語のニュースではディープサウスと呼ばれることが多い。バンコクからは空路でソンクラー県ハジャイへ、そこから陸路というアクセスが一般的だ。時間はかかるが、鉄道や長距離バスの直通もある。

 バンコクからタイ最南端のナラティワート県まで1150キロ。新幹線の東京―博多間に相当。国境の同県スンガイコロクまでは1200キロを超える。非常に狭い地域というイメージが強いが、パタニー、ヤラー、ナラティワートの3県を合計すると1万平方キロメートルに達し、日本の岐阜県とほぼ同じ面積となる。常に身近で事件が起きると思われがちだが、(注意は常に必要なものの)各県都や国境の歓楽街以外で、通りがかりの旅行者が偶然に巻き込まれる危険は非常に低い。3県の北端から南端まで車で3時間はかかり、取材においてはどこか1カ所で待機しているだけでは、全ての事件をカバーできない。

 断続的に数百年続いたパタニーの独立闘争は、第2次世界大戦後にはほとんどテロ活動と化し、現在のような状況となった。単なる山賊行為の集団も独立派を名乗り出すなど、60―70年代には百近いテロ組織が乱立したという。

 テロは90年代にかなり収まり、治安は安定を取り戻していた。しかし2004年に入ると再び激化、2015年までに1万5374件、死者数6543人、負傷者1万1919人に達し(*1)、現在に至っている。

 それでもテロはこの数年、減少に転じていた。昨年2015年は2004年以降、最もテロ件数が少ない年だった。今年もその落ち着きが続いていたが、6月にラマダン入りして国際テロ組織が聖なるラマダン・テロを呼びかけると、トルコ、サウジアラビア、バングラデシュ、インドネシアなどでイスラム過激派による自爆テロや非ムスリム襲撃が続発。タイ深南部でもテロ呼びかけに呼応するかのように、テロが相次いだ。

▼7月2日=ナラティワート県の民家で治安部隊と分離独立派メンバーが銃撃戦。メンバー2人死亡。

▼7月3日=ヤラー県の道路わきで爆弾が爆発、バイクで通りがかったタイ当局への情報提供者だったとされるムスリム2人死亡。
 ナラティワート県のタイ国鉄線路が爆破され、ヤラー市以南が不通に。
 パタニー市内セントラルモスク近くで爆弾が爆発、警官1人死亡、警官や通行人ら3人負傷。

▼7月4日:ヤラー県のモスク向かいにM79で擲(てき)弾2発が撃ち込まれ、ムスリム男性3人負傷。

▼7月3日(ラマダン最終日)=ナラティワート県でバイクを運転していた仏教徒タイ人女性がバイク運転中に撃たれて死亡。残されたメモに「タイ当局による前夜のモスク襲撃の報復」とあり。
 パタニー県の幹線道路わきの検問所前でカーボム。陸軍兵士や警官ら1人死亡、3人負傷、検問所全焼。

 ほか、3県内各地で爆発物の爆発や治安部隊による未発爆発物の処理などが相次いだ。

*1 プリンス・オブ・ソンクラー大学南部情勢監視センター(ディープサウス・ウォッチ)発表
《newsclip》

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