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深南部ルポ-1 ラマダン終盤で十数カ所 テロ続発に揺れるタイのイスラムの地-3

2016年8月9日(火) 23時54分(タイ時間)
物珍しげにラマダン明けの祈りにカメラを向けていた、警戒中の陸軍兵士の画像
物珍しげにラマダン明けの祈りにカメラを向けていた、警戒中の陸軍兵士
タイ深南部で2014年以降に発生した主な事件の画像
タイ深南部で2014年以降に発生した主な事件
■南部以外に飛び火しないテロ

タイ深南部テロは過去数百年続くイスラム国家パタニーのタイからの独立運闘争に源とする。マレーシア国境に多く居住するマレー系住民からなるテロ組織は、タイからのパタニー分離独立を訴えてテロを繰り返すが、イスラムという宗教を隠れ蓑(みの)とした利権闘争に終始しているだけ、という見方が強い。この2―3年はテロ発生件数が減少に転じていたが、そもそもタイ深南部のテロは、宗教を理由としない。テロの目的はあくまでもパタニーの独立であり、分離独立派の代表自ら、「パタニーにはムスリムだけでなく、仏教徒やキリスト教徒の地でもある」と明言している。

 国際テロ組織の浸透は見られない。今回のラマダン終盤のテロは、世界各地で発生するそれに呼応するかのように相次いで起き、ラマダン期間中としては最多ともいえる発生数だが、それでもタイ深南部で収まっている。国際テロ組織が関与しているとすれば、狙いはバンコクなどの都市部であり、タイの片田舎はあり得ないとされる。

 タイ深南部と国際テロ組織が結びつかないのは、独立さえも真の目的ではなく、単なる利権闘争でしかない、という理由にある。その一つは、タイ国内どこにでもあるような麻薬利権だ。深南部だけで年間2億―3億バーツの麻薬取引が、分離独立派の資金源になっているといわれる。(*1)

 地元の権力争いなどで、テロに見せかけて爆弾を爆発させたり銃撃戦を演じたりすることも多いという。その中に地元住民が疑う当局の自作自演も含まれてくる。実際、深南部で発生するテロのうち、分離独立派組織の犯行と断定できるそれは全体の半分も満たないという。(*2)当事者にとって、いずれの利権もタイ深南部にとどめておかなければ意味がない。

 ただその一方で、実行犯にとってテロはイスラムの教えの基という事実もある。彼らの多くは若者だが、イスラムの過激な思想を吹きこまれ、ジハード(聖戦)としてテロを起こす。

 タイ深南部で繰り返されるテロは、世界的な過激思想によるイスラム・テロとは、全く別の根源を持つ。

*1 2005年11月、当時のチッチャイ副首相兼法相の発言
*2 2012年6月、当時の(タイ南部を管轄する)陸軍第4軍管区広報担当大佐の発言
《newsclip》

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