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■ニュース深堀り!■中国資本でよみがえる大阪の中小製造業

2016年8月24日(水) 14時56分(タイ時間)
中国に近く、日本全国どこでも2時間程度で移動できる立地が大阪の魅力。東京に比べ、オフィス賃料や生活物価も安いの画像
中国に近く、日本全国どこでも2時間程度で移動できる立地が大阪の魅力。東京に比べ、オフィス賃料や生活物価も安い
ジェトロ大阪本部 対日投資推進課長 井上徹哉さんの画像
ジェトロ大阪本部 対日投資推進課長 井上徹哉さん
大阪に進出してくる外資系企業とのマッチングを求め、井上さんの所属するジェトロ大阪本部には多くの中小企業が訪れるの画像
大阪に進出してくる外資系企業とのマッチングを求め、井上さんの所属するジェトロ大阪本部には多くの中小企業が訪れる
香港に本社を置き、中国やマカオ、スリランカに食料品や日用品(含ベビー用品)を販売しているBNM HOLDINGS LIMITED。ジェトロの支援のもと、“メイド・イン・ジャパン”製品の日本での調達を目的として、大阪市に日本法人B&M Japan株式会社を設立したの画像
香港に本社を置き、中国やマカオ、スリランカに食料品や日用品(含ベビー用品)を販売しているBNM HOLDINGS LIMITED。ジェトロの支援のもと、“メイド・イン・ジャパン”製品の日本での調達を目的として、大阪市に日本法人B&M Japan株式会社を設立した
O-BICの企業誘致の累計件数の画像
O-BICの企業誘致の累計件数
対日投資残高の地域別構成比(「ジェトロ世界貿易投資報告」2016年版より)の画像
対日投資残高の地域別構成比(「ジェトロ世界貿易投資報告」2016年版より)
 16年4月の契約調印を終えてなお、新聞紙面などを賑わせている台湾・鴻海によるシャープの買収劇。ただ、こうした大陸系企業の日本進出は、決して大手に限った話ではない。大阪外国企業誘致センター(O-BIC)では近年、アジアの企業誘致案件が増加。中でも、15年に全46件あったアジア圏の誘致案件のうち、31件を占める中国(香港を含む)が存在感を増している。

 O-BICは大阪府と市、大阪商工会議所を含めた三者の共同で01年に設立。各種の情報提供や手続き代行などのワンストップサービスを提供している。その活動は着実に実を結び、15年度までの15年間で累積の誘致実績は426件にのぼる。特に直近は、2年連続で過去最高を更新するほどの好調ぶりだが、この勢いを後押ししているのが、先ほども紹介した中国の存在だ。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)でも、外国企業の日本への投資と事業拡大をサポートしてきた実績がある。このサポート案件数を東京と大阪で比較した場合、東京はヨーロッパ、米国、アジアが1/3ずつの割合であるのに対し、大阪は6割以上をアジアが占めている。アジアの中でも特に積極的なのは中国だ。いま、中国と大阪はどのような関係にあるのだろうか? ジェトロ大阪本部で対日投資推進課長を務める井上徹哉さんに話を伺った。

■“日本製”への信頼と人気から中国企業が日本へ

――そもそもなぜ中国からの対日投資が増えているのでしょうか?

井上 1つの要因として、中国国内で日本製品に対する信頼と人気が高まっているからです。中国人が観光で日本を訪れて、日本製品を“爆買い”していくことが話題となりましたが、中国のバイヤーは日本の貿易事業者からの輸入の先に進もうとしています。日本へ進出して日本製品の調達拠点を設け、日本のメーカーから直接、商品を買い付けようと動き始めているのです。

 最近では中小企業にアプローチしているバイヤーの動きも見られますが、日本の中小企業の中には外国語でのやりとりや貿易実務などに十分に対応できないところもあります。そこで、単なる商品の買い付けだけではなく、日本語で話せるスタッフを用意し、貿易実務の代行も含めて中小企業にアプローチする中国企業が現れてきています。

――中国市場ではメイド・イン・ジャパンの競争力が高いということですね?

 まさにその通りです。中国のメーカーもそこに目をつけており、日本の中小企業にOEMを依頼する事例も増えてきています。自社ブランドの市場価値を高める上で、メイド・イン・ジャパンが付加価値となっているのです。

 また、付加価値という点では、研究開発の拠点を日本に置くケースもあります。中国では経済成長とともに人件費が高騰し、価格が競争力に結び付かなくなっています。そこで拠点を日本に置いて日本人の技術者を雇い、日本で研究開発を行った製品だということで競争力を高めようというわけです。実際、大阪は家電メーカーの町でもありますが、中国の大手家電メーカーが日本人技術者を募集する求人広告をよく目にします。


■東京を上回る、日本進出時における大阪の地理的メリット

――大阪は外資系企業の誘致に力を入れていますが、ほかにも日本の中で大阪が注目される理由はありますか?

井上 観光の果たした役割が大きいといえます。昨年度に関西国際空港を利用した外国人旅行客数が初めて1000万人を突破したのですが、その多くはアジア系外国人、とりわけ中国人が多数を占めました。この背景には中国から見て東京よりも大阪のほうが近いという点と、中国各地と結ぶ航空路線が拡大したことがあります。観光で大阪を訪れる外国人が増えたことで、ビジネスにおいても大阪への注目度が高まったといえます。

 また、東京との比較でオフィスなどの賃料は約65%、食費は約30%も安いという調査結果があります。どんなに離れた場所でも、飛行機を使えば2時間で全国各地へ移動できる地理的環境も、大阪を足掛かりに日本全国へマーケットを広げようという企業にとっては有利だといえるでしょう。

■中国企業が国内中小の海外進出を支援?

――中小企業の成長戦略では“グローバル化”がキーワードの1つとなります。海外へ製品を売り込む、海外へ生産拠点を置くといったグローバル化では、外国語対応をはじめ渡航費や設備投資などが必要となり、体力のない中小企業にとって大きな負担となります。しかし、中国企業から大阪の中小企業へのアプローチが積極的になりつつあるいま、発注に応えることで、日本にいながら容易にグローバル化=中国進出を果たせるわけでしょうか?

井上 現状を見るとその可能性は高いです。日本に調達拠点を置く中国企業の要望に答える製品・サービスを提供することは、グローバル化の大きな一歩であると思います。

 また、研究開発拠点を日本に置いたり、日本のメーカーとOEMで手を組んだりする中国企業についても、日本市場の先にある世界戦略にも視野を広げているようです。つまり、日本の中小企業にとってみれば、中国ばかりか世界中へとグローバル化を図るきっかけとして期待できるでしょう。

――中国企業が歩み寄ってくれて、中国をはじめ海外へと販路拡大に導いてくれるのは魅力的ですが、逆に落とし穴といいますか、注意しなければならない点はありますか?

井上 具体的に被害があったという報告は受けていませんが、事前に信用調査を行い、信頼できる取引相手であることがわかった上で取引を開始するようにお薦めしています。また、日本人との考え方や習慣の違いで、ビジネスの上で中国企業の要求する内容が理解できず、取引がスムーズにいかないケースも考えられます。ですが、従来の日本のものづくりに固執することなく、柔軟に相手の要求に応える心構えも肝心です。

 外資系企業、特に中国企業はライバルと感じる方もおられますが、今では海外進出やグローバル化においてパートナーとして良好な関係が築かれつつあります。これは大きなチャンスだといえるでしょう。

<Profile>
井上徹哉(いのうえてつや)さん
95年にジェトロ入構後、展示部一般見本市課(現:展示事業部海外見本市課)、総務部統合準備室を経て、98年から展示部リスボン国際博覧会課や事業統括部海外事業課(現:企画部海外事務所運営課)、リオデジャネイロ事務所、サンパウロ事務所と海外事業を担当。大阪本部では事業課、企画部企画課、海外市場開拓部海外市場開拓課(現:ものづくり産業部 生活関連産業課)に所属し、16年4月より現職。
《加藤宏之/HANJO HANJO編集部》


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