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深南部ルポ-2 タイにあってタイにあらず 色鮮やかなムスリムの地-1

2016年8月26日(金) 12時58分(タイ時間)
パタニー市内クルセモスクでのラマダン明けの祈りの画像
パタニー市内クルセモスクでのラマダン明けの祈り
女性に比べて男性の衣装は地味の画像
女性に比べて男性の衣装は地味
中東諸国をイメージさせる男性もの画像
中東諸国をイメージさせる男性も
 ラマダン(断食月)明けはムスリム(イスラム教徒)にとっての新年だ。家族や親戚が一堂に集まり、朝一番で祈りを捧げ、近所同士であいさつを交わして料理でもてなし、晴れ着をまとって町に繰り出す。

 祝う日はたった1日しかないが、ムスリムが住民のほとんどを占めるタイ深南部では、色鮮やかな民族衣装が町にあふれる。ニュースクリップ記者が当地の宗教と民俗を追った。

■ラマダン明けの祝日「ハリラヨ」

 マレーシアやインドネシアでは一般的に、ラマダン明けの祝日を「ハリラヤ=偉大な日」と呼ぶ。マレーシアと国境を接し多くのマレー系住民が暮らすパタニー、ヤラー、ナラーティワート各県のタイ深南部では「ハリラヨ」と訛るが、言葉の使い方は一緒だ。ラマダン最後の日の夜、イスラム指導者が月を視認してラマダン明けを宣言する。雨や曇りで月が出ない場合は明けるのがもう1日延びるので、ムスリム住民は明日も断食が続くのではないかと、直前まで気をもむことになる。ラマダンは国によって、月が見えるか否かで明ける日が異なってくる。

 ラマダンは陰暦のため11日ずつずれていく。今年は7月5日が最終日だった。深南部一帯はあいにく雨と曇りの繰り返しで、夜が更けても明けるかどうか分からない状況だったが、10時を過ぎてようやく近所のモスクから明けの発表があり、皆がほっとした表情を見せていた。

 ラマダン最終日の夕方はスーパーでも市場でも、食材の買い出しで相当な混雑となり、いつもはガラガラな道路でも警官が交通整理に立つぐらいに渋滞する。夜は食材を仕込んで翌朝の料理の準備。バンコクをはじめとする都市部やマレーシアなどの国外に散らばっている家族や親戚が自宅に戻ってくるのもこの頃だ。

 ハリラヨ当日はたいてい朝8時前に祈りが始まる。場所は当然モスクだが、マレーシアやインドネシアのように深南部にも、モスクの規模に満たない「スラウ」と呼ばれる小規模な礼拝所が無数にあり、同様の祈りが行われる。メディアの取材対象となるモスクは、タイで最も美しいとされるパタニー市内の「セントラルモスク」、アユタヤ時代に建てられて未完のままパタニー郊外に残る「クルセモスク」、築300年の木造建てでナラーティワート県内に残る「300年モスク」などだ。

 祈り自体は日々のそれと変わりないが、人出は圧倒的に多い。10―15分程度で終わるのも通常通りだが、ハリラヨでは祈りの後にいわゆる説教が長々と続く。説教を真剣に聞いている信者は少数派。極端な信仰がイメージされがちなイスラムだが、信者の宗教心はほかの宗教と似たり寄ったりだ。

 祈りの後は自宅に戻って朝食を取ったり、近所にあいさつ回りをしたりする。客が訪れたら料理でもてなし、誘われた方は断らないのが流儀だ。近所とはいえ、いろいろ歩いて回るとごちそうになる回数も増え、食べきれないという失礼を犯すことになるが、地元の人はその辺りのバランスを取るのが上手だ。我々のような外部の人間の場合、異教徒であっても最大限のもてなしで迎えてくれるので、断るのが難しい。相当な食事量を覚悟しなければならない。

 深南部のハリラヨで最も興味深いのは衣装だ。男性は地味だが女性は「華やか」の一言に尽きる。これは宗教ではなく民族としての衣装で、マレーシアで見かけるそれと同じ。強い日差しの中で鮮やかに映える色使いだ。結婚式など特別な日を除いて、このような晴れ着を身にまとうのはハリラヨぐらいしか機会がないので、女性は一斉に着飾る。

 女性が髪を隠すために巻くスカーフも、深南部では宗教的に絶対必要というわけではないようだ。当地にも目以外の顔を全てを隠す女性がいるが、「さすがに我々もコミュニケーションが取りづらい」(地元ムスリム男性)と万人に受け入れられてはいない。その一方で、スカーフは巻いているがTシャツにジーンズという半袖の姿の若い女性もいる。「それはそれで、家に例えれば屋根があって壁がないようなもの」(前述のムスリム男性)と、ムスリム女性らしい身だしなみを求める。いずれにせよ、スカーフ1枚をとっても色鮮やかなのが、深南部の女性たちだ。

 深南部はムスリム人口が多いため、ラマダン明けは役所や学校が休みになる。小学校などは週末を入れて5連休になるときもあり、もちろん仏教徒の生徒も休みを取る。ただ、深南部以外の県、例えばプーケットなどでは、ムスリム人口が多くてもハリラヨが祝日とならない。そのような県で仕事をしているムスリムは個人的に休みを取って里帰りする。

 ムスリムはラマダン明けに長期休暇を取る。日本人の正月や中国人の旧正月と同じだ。マレーシアやインドネシアほど帰省ラッシュは激しくないが、似たような混雑は深南部でも起こり、深南部各地とバンコク、出稼ぎが多いマレーシア各地を結ぶ鉄道、バス、飛行機の席が取りにくくなる。
《newsclip》

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