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日本の鑑識技術をタイへ 鑑識刑事がタイ警察でEB法を実演指導

2016年9月25日(日) 21時44分(タイ時間)
時重 靖 氏 警部の画像
時重 靖 氏 警部
清水 秀樹 氏 警部補の画像
清水 秀樹 氏 警部補
EB法による指紋検出の実演風景の画像
EB法による指紋検出の実演風景
指紋を精査する時重警部の画像
指紋を精査する時重警部
EB法による指紋検出の実演風景の画像
EB法による指紋検出の実演風景
実際に浮かび上がってくる指紋の画像
実際に浮かび上がってくる指紋
科学捜査部のタワッチャイ・メームプラスートスック警察少将(左から2人目)と戸島タイ警察大佐(右端)の画像
科学捜査部のタワッチャイ・メームプラスートスック警察少将(左から2人目)と戸島タイ警察大佐(右端)
時重 靖 氏 警部 山口県警察本部刑事部鑑識課 現場・機動鑑識担当補佐
清水 秀樹 氏 警部補 山口県警察本部刑事部鑑識課

 指紋検出と聞いて一般人がイメージするのは、塗付した粉末をハケではらって検出する粉末法。しかし日本の警察では粉末法のほかに、液体に浸して検出するEB(エマルゲンブラック)法が広く使用されている。濡れた遺留品からでも指紋が検出できるEB法を開発した鑑識捜査官が今回、タイ警察にその技術を伝えるべく非公式で来タイし、タイ王国国家警察科学捜査部での実演指導を行った。今後、タイ警察の鑑識班による積極的な活用が期待される。

濡れた遺留品からでも指紋を検出できるEB法

――EB法というのはどういった指紋検出方法ですか?

 水道水を元にし、一般家庭で使用される洗剤の原料(エマルゲン)と四三酸化鉄という一種の黒サビを混ぜて作る溶液を、遺留品に直接かけて指紋を検出する方法です。指紋検出と聞いて一般的にイメージする粉末法は、乾いた材質には効果を発揮しますが、濡れたものには適しません。EB法は粉末ではなく液体を使用するので、「濡れた状態で触ったもの」「指紋が付いた後に水に浸かったもの」「濡れたままで乾かせないもの」からでも指紋を検出できます。EB法は粉末法と比較して、検出が強力で長期保存が可能という高い評価を得ています。重要な証拠品には特にEB法が用いられます。

――どのような手順で指紋を検出していくのでしょうか?

 溶液を遺留品にそのままかけるという単純な方法です。自動車のボディー等、広範囲の検出にはスプレーで吹き付ければ効率的な作業が可能です。最初は指紋がすぐに出てこなかったり薄くて見にくかったりしても、溶液を何回か繰り返してかけたり吹き付けたりすることによって、次第にはっきりと見えてきます。粉末法で採取した後にEB法で同じ指紋を再び検出する、ということもできます。それを指紋採取転写シートに転写して保存します。

――時重警部が研究・開発した技術だとお聞きしましたが?

 一般の方々にとって警察、特に鑑識というのは専門的で非常に見えにくい仕事です。鑑識という組織は常に、より多くの方々から理解を得るべく、効率的で経済的な任務に努力し、ときには独自の技術を構築すべく、アイデアを出し合っています。EB法もその一環で、いろいろな材料を組み合わせて実験して試行錯誤を重ね、実際の現場で試すなどして生み出した検出方法です。2001年に発表して実用化、地元の山口県警から始まって今では日本全国の警察で使用されています。

――EB法というのは経費的にも取り入れやすいということでしょうか?

 原材料を安く仕入れることができますし、作った溶液は化学的に汚染されない限り変質せず、容器のフタをしっかり閉めれば長期保存が可能です。今回は日本から持ち込んだ材料を全てタイ警察に提供しましたが、タイでも普通に入手できるであろう原材料であり、一袋買っても数十から数百バーツと安価なはずです。

相次ぐ積極的な質問 早期実用に期待

――今回のタイ警察での実演指導で感じられたことは?

 積極的な質問が相次いだことに驚いています。検出方法の原理、タイで採用されている方法との効果の比較、材料の入手や価格についてなど、さまざまな質問がありました。日本での実演では誰もが静かに聞いて質問もまばら、というのがほとんどです。また、日本で鑑識班長といえば40―50代が普通ですが、今回集まってくれた科学捜査部の鑑識メンバーは幹部クラスでありながらもみな若く、好印象を受けました。EB法をすぐにでも活用してくれるものと期待しています。技術的には、日本とタイの水質の違いなどで検出結果に差が出る可能性がある、ということが分かりました。今後の課題となってくるでしょう。

――鑑識でつながる日本とタイの関係といったものは?

 同じ任務を背負う者は、国は違っても目指すものは共通し、言葉の壁があっても意思は通じるものです。特に鑑識という特殊な分野では仲間意識が生まれやすいといえます。タイ警察に対して今後、我々ができることは何でも、最大限の協力・支援を行っていきたいと思っています。もちろん日本からタイへの一方方向でなく、我々がタイ警察から学ぶべきものも少なくないはずです。

――ありがとうございました


EB法のタイ警察への導入を 提案した戸島国雄氏の談

戸島国雄:元警視庁鑑識捜査官・似顔絵捜査官・タイ警察現役警察大佐

 今回の実演指導に参加した科学捜査部の鑑識メンバーはみな、若いながらも経験豊富な幹部であり、現場を仕切る立場にある。今日ここで覚えて明日の現場で実践、といった臨機応変な決定も彼ら次第だ。

 タイでは、指紋検出は本部である科学捜査部鑑識班が自ら行い、所轄に任せることはない。鑑識班が存在するのは本部以外では、タイ各地に1区から9区にまで散らばる警察管区のみだ。

 タイ国民は15歳になると誰でも身分証明書を作成、指紋が採取される。子供以外の全国民の指紋がデータベース化されており、犯罪現場で明瞭な指紋が採取されれば、必ず逮捕にこぎつけることができる。

 科学捜査部鑑識班は現在3班で活躍しているが、バンコクは窃盗だけで1日30件も発生、全てを回り切れないでいる。日本よりはるかに多い犯罪にいかにして効率良く対応していくかが課題だ。


日本の犯罪認知件数(平成27年)

▼全国:1年=109万8969件 1日=約3011件
▼山口県:1年=7701件 1日=21件

 詳細は警察庁ホームページ警察白書

タイ警察発表の犯罪発生数(2015年)

▼殺人=2315件
▼殺人未遂=4146件
▼強姦=3060件
▼傷害=1万5321件
▼放火=252件
▼身代金目的誘拐=7件
▼麻薬関連=27万6811件――など。
《newsclip》


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