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【土井正己のMove the World】トランプ大統領で自動車産業はどうなる?

2016年11月18日(金) 11時06分(タイ時間)
ホワイトハウスを訪問したトランプ次期大統領(向かって左)と、オバマ現大統領(11月10日)。 (c) Getty Imagesの画像
ホワイトハウスを訪問したトランプ次期大統領(向かって左)と、オバマ現大統領(11月10日)。 (c) Getty Images
米大統領選、トランプ氏が勝利。 (c) Getty Imagesの画像
米大統領選、トランプ氏が勝利。 (c) Getty Images
GMの米テネシー州スプリングヒル工場の画像
GMの米テネシー州スプリングヒル工場
トヨタ自動車・米国ミシシッピ工場の画像
トヨタ自動車・米国ミシシッピ工場
11月8日に行われた米国大統領選は、大方の予想を裏切りトランプ氏の勝利ということになった。世界は驚きをもって伝え、日本の株価も暴落したが、トランプ氏の勝利演説が「普通」の内容であったことから、株価は急回復した。

さらに、11月11日付けのウォールストリートジャーナル紙にトランプ氏の単独インタビューが掲載されてから、一挙に市場の信頼が高まった。インタビューでトランプ氏は、「所得減税・法人税減税」、「金融面での規制緩和」、「軍事費支出増」、「インフラ支出増」などを述べており、経済政策としてはそれなりの信頼感があったからだ。しかしながら、財政赤字が膨らむことは確実だ。全体としては80年代前半、レーガン大統領の経済政策「レーガノミクス」に近い内容となりそうだ。


◆意外とまともな経済政策

今回の選挙で、最も良かった点を上げるとすれば(不幸中の幸いとして)、米議会の上下両院とも共和党がマジョリティを握ったということではないだろうか。これにより、共和党主流派の力が強くなり、大統領への牽制機能が大きくなったと思える。副大統領候補のマイク・ペンスは共和党のベテランでもあることから、議会コントロールは副大統領が行うことになろう。すなわち、実質的には副大統領が権限を握るのではないかと思う。


◆当面は円安、来年には円高

日本の自動車業界への影響はどうであろうか。「レーガノミクス」時代は米国が高金利であったことから総じて円安であった。今回も選挙後は円安にふれていることから、日本の自動車産業には、「当面プラス」といっていいだろう。ただし、円安が続くと、「雇用が奪われる。約束が違う」と米国民や米自動車産業から不満がでるので、円安は長続きしないと思う。来年には、再び円高に向かうだろう。


◆NAFTAは難題、TPPは復活の可能性あり

また、日本の自動車産業にとって最も頭が痛いのは、米国の「NAFTAからの離脱」だ。トランプ氏は、選挙中からNAFTAが米国の雇用を奪ったとして、NAFTAから離脱し、メキシコからの輸入品に大きな関税をかけると豪語している。日産やホンダは古くからメキシコに進出しており、マツダも2014年から生産を行っている。トヨタは、選挙後の14日にメキシコ新工場の起工式を行ったところだ。しかし、トランプ氏のいうようにメキシコからの輸入に大きな関税をかけるとすると、一番迷惑をするのは、米国の自動車産業と購入者である国民である。また、現在、米国はNAFTA国であるメキシコ、カナダへの輸出が6000億ドルもあり、これらに報復関税がかけられることなどを考えると実際にはNAFTAからの離脱は難しいと思う。

TPPについても、トランプ氏は選挙中は全面否定であった。しかし、中国主導の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が日韓を含めて進行していることから、安全保障面からもTPPを廃棄処分することはできないのではないかと思う。TPPは、一部の修正を持って生き還る可能性があるので、日本政府は粘り強く説得して欲しい。


◆ハマーが復活? EVは厳しい

間違いないのは、米国で軍需産業が伸びることだ。トランプ氏は「強いアメリカ」、すなわち軍事力の強化を宣言している。これに伴い、日本の軍需産業やハイテク部品産業も伸びるということだろう。これにともない、GMの「ハマー」が復活したら面白いと思うのは私だけだろうか。

エネルギー面では、トランプ政権はシェールガス掘削に関する環境規制を緩和する可能性があり、シェールガスの大増産につながる可能性がある。そうすると原油価格が再び下落する。よって、省エネ・自然エネルギー産業は打撃を受ける可能性が高い。EVやPHV・HVには、厳しい環境となるだろう。

このように、トランプ政権となれば、日米とも自動車産業は大きな影響を受ける。欧州においては、まだBrexitが不透明なままである。2016年は、こうした驚きの警報が発せられた年だったが、2017年には、本格的な大波がやってくる恐れがある。


<土井正己 プロフィール>
グローバル・コミュニケーションを専門とする国際コンサルティング・ファームである「クレアブ」代表取締役社長。山形大学特任教授。2013年末まで、トヨタ自動車に31年間勤務。主に広報分野、グローバル・マーケティング(宣伝)分野で活躍。2000年から2004年までチェコのプラハに駐在。帰国後、グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を歴任。2014年より、「クレアブ」で、官公庁や企業のコンサルタント業務に従事。
《土井 正己@レスポンス》


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