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【養殖モノを海外で売る!:1】ホタテの次に来そうな魚介類は?

2016年11月21日(月) 12時55分(タイ時間)
水産養殖業は餌代の高騰もあって苦戦を強いられているが、世界的に水産物の価格は上昇傾向にあり、海外マーケットへの輸出が注目されているの画像
水産養殖業は餌代の高騰もあって苦戦を強いられているが、世界的に水産物の価格は上昇傾向にあり、海外マーケットへの輸出が注目されている
日本貿易振興機構農林水産・食品部水産品支援課長の相馬巳貴子氏の画像
日本貿易振興機構農林水産・食品部水産品支援課長の相馬巳貴子氏
【記事のポイント】
▼欧米向けでは脂の乗りがよいブリ、ハマチが輸出の主力に
▼淡泊な鯛は韓国向けが順調、マーケットを選べば商機が
▼寿司へのニーズがあるブリやウニは、保存・輸送技術の向上に活路が


■餌代の値上がりなどをきっかけに、増える海外輸出

 農林水産省の水産物輸出統計(農林水産物輸出入概況)によれば、15年の「日本の水産物・水産食品輸出額」は2157億円で、前年比18%増と過去最高を示した。養殖業者は餌代などのコスト増、国内需要が伸び悩むことから販路を海外へと展開。政府も水産物の輸出額を20年までに3500億円とすることを目標に、さまざまな取り組みを行っている。

 なお、15年における日本の養殖水産物の生産量は107万トンで、全体の22.8%。これまでの消費者は天然物志向で、養殖の魚介類を一段低く見ていた感がある。しかし、最近の養殖水産物は養殖技術の進化により、その品質が向上。安定供給が見込めて価格変動が少ないことから、小売業者や飲食店に見直されてきている。

 その中でも以前から有力な輸出産品となっていたのがホタテだ。日本貿易振興機構(ジェトロ)農林水産・食品部水産品支援課長の相馬巳貴子氏によると、その品質が海外で高い評価を受けているという。

「アメリカのホタテは注射をして大きく見せていますが、日本産は一切、そうした加工を施していません。ヨーロッパのホタテとも種類が異なり、粒の大きな日本産は人気があることから、中国、アメリカ、ヨーロッパなどに広く輸出されています」

 ホタテはフレンチやイタリアン、中華、和食など幅広い料理に応用が利く。調理法においても汎用性があり、生食で良し、加熱しても良しの利便性が重宝されているようだ。

■脂の乗ったブリ・ハマチは欧米で好評

 ホタテは以前から日本における水産輸出の代表格だったが、近年ではほかの養殖水産物でも存在感を表しているものがある。例えば、輸出量でホタテの次に位置するブリ。15年の輸出額は138億円と、ここ数年は増加傾向にある。

「ブリは特にアメリカ向けにプロモーション活動を行ってきました。輸出額全体の84.2%を占めており、大半がお寿司に使われています。ただ、デリバリー用のお寿司の詰め合わせにはサーモンとマグロが主流で、ブリは一貫も入っていません」

 このような状況の背景には、時間が経つと生身の赤い部分が黒っぽく変色してしまう“メト化”がある。これは一酸化炭素処理で防げるが、変色しないことが食中毒の原因にもなりかねないとして、日本では食品衛生法で禁止されている。そこで開発されたのがメト化防止技術。抗酸化物質の投与による褐変抑制と酸素充填解凍の組み合わせによって、メト化防止が可能となった。

「一酸化炭素を使わなくても色落ちを防止することが可能になれば、商品価値が維持できるので、今後はブリのマーケットも拡大すると思います」


 また、ブリは脂の乗りが良いことからヨーロッパでも好評を得ている。これについてはハマチも同様だ。日経CNBCで放送のテレビ番組『世界は今JETRO Global Eye』では、今年6月に養殖ハマチの世界戦略を放映。ベルギー向けのハマチの輸出量はこの5年で10倍となり、ブリュッセルのミシュラン一つ星の高級レストランが新しい食材として、ハマチに注目しているという。

■鯛、ホヤ、クロマグロ、ウ二は課題が大きい

 水産物の輸出では、韓国も欧米にはない特性を持つマーケットとして注目されている。例えば、日本では人気の鯛は味が淡泊なため欧米では不評だが、韓国では鮮魚を食べる習慣があるためニーズがある。15年の輸出額23億円のうち、実に76%が韓国向けだ。ホヤも8億円規模の輸出があるが、99%が韓国向けとなっている。

「ホヤは韓国でキムチの材料として使われています。韓国の釜山でも獲れますが、身が痩せていて、日本産の方がおいしいようです。ただ、東日本大震災以降、韓国では震災被害に遭った東北・関東8県の水産物の輸入が禁止されています」

 その他では養殖魚として最近、注目を集めているのはクロマグロについては、輸出するほどの生産性が確保できていない。東南アジアでも寿司を食べる習慣が浸透してきているが、「マグロの人気は高いが、輸出が伸びる可能性は低い」とのことだ。同様に寿司ネタとしては定番のウ二についても「すぐに傷むので輸出には不向き。香港にわずかな量を輸出している程度」だという。

 ちなみに天然魚では、サバの輸出額が東南アジアやアフリカで伸びている。小型のサバはマグロの餌や缶詰などの加工用となる場合が多いが、「アフリカでは、タンパク源としてサバは重要な食材。食用として引き合いがある」と相馬氏は話す。

 魚介類にとっては鮮度が命であり、輸出の上では冷凍技術の向上や運搬船の鮮度保持機能強化など、さまざまな問題をクリアしなければならない。さらに、HACCPのような食品衛生管理の認証が必要な場合もあり、輸出の際には相手国の衛生条件基準を満たしている必要がある。ただ、ジェトロが「ジャパン・パビリオン」を出展する世界三大水産見本市や海外の商談会においては、日本の水産物の品質や冷凍技術の高さを評価する声も多い。15年度における水産物の品目別内訳ではサバ、ブリ、タイがいずれも30%超の伸び率を見せていることから、“脂の乗り”や“生食文化”といったニーズを掴めば、海外でも十分にチャンスはありそうだ。
《斉藤裕子/HANJO HANJO編集部》


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