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富裕層インバウンドの法則その2

2016年11月25日(金) 13時17分(タイ時間)
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増渕達也(ルート・アンド・パートナーズ 代表取締役)
★法則2:日本人目線で作って売るのではない。外国人富裕層目線で売れる商品を創って売る


 富裕層インバウンドの法則1では、人と人とのふれあいを求める当り前の外国人富裕層旅行者の行動を、自分たちが海外旅行に行った時と比較して「やはり当り前」と論じた。今回は、一般的な外国人旅客に人気のある商品から、外国人富裕層へのアナロジーを考えるべく、当社ルート・アンド・パートナーズと業務提携している、訪日外国人に特化した旅行会社BOJ株式会社の代表取締役野口氏に話を聞いた。野口氏によると、創業当初から外国人旅行者に大変人気のある商品は、日本酒テイスティング、相撲朝稽古見学、ローカルバーホッピングの3つだそうだ。1点1点アナロジーを考えていこう。(BOJ株式会社のサイトは http://beauty-of-japan.com を参照)

1:日本酒テイスティング

 平均寿命が世界でもっとも長い日本人が食べているもの、飲んでいるものはなんなのだろうという素朴な疑問から、和食や日本酒への関心が高まりだしたのは今や昔。今では世界中どこに行っても和食や日本酒を楽しむことができる。我々日本人が日本でシャンパンやワイン、コニャックなどを普通に楽しめるのと同じことだ。

 ではなぜ外国人旅行者に日本酒テイスティングが人気なのかというと、「日本でテイスティングする日本酒だから」以外に答えはない。彼らが求めているものは、「日本で日本酒をテイスティングする経験」なのであって、日本酒テイスティングではないのだ。

 我々も、「ボルドーで飲むボルドーワインは格別だ」とか、「沖縄で飲むオリオンビールはやっぱりおいしいね」という話をよくする。厳密に言えば味が大きく変わっているわけはないだろう。でもやはりおいしく感じるのは、味覚というのが周辺の環境にも大きく影響されるからだとしかいいようがない。ゆえ、食事は五感で楽しむものだ、とは言い得て妙である。人間は五感で楽しむ経験ができた時に喜びを感じると言えるだろう。

 もちろんこれは外国人富裕層旅客にも大いに当てはまる。しかしながら、日本酒テイスティングが外国人旅行者に流行っているから、外国人富裕層旅行者にも日本酒テイスティングは流行るはずだ、という考え方ではなく、「外国人富裕層旅行者の五感に訴える商品を考える」のが正しい。

 私がチャンスを感じるのは、日本の味噌と塩だ。特に多くのオリーブオイルに慣れている外国人富裕層旅行者に、味噌テイスティングや塩テイスティングは、五感にも語感にもアピールするだろう。同時に日本が誇る技術も感じさせることができる可能性が高いと考える。


2:相撲朝稽古見学

 東京であれば両国国技館で開催される大相撲をライブでみたことのある読者はどのくらいいるのだろうか。相撲を見るときに、最もいい席の名称として定着しているのが「マス席」だ。確かにいい席だと思うが、もっと迫力を感じることのできるのが「たまり」と呼ばれる土俵際すぐ下の場所だ。力士が勢い余って観客の中に飛び込んでいってしまうシーンをテレビでみたことがある人も多いだろう。あれだけ近くで相撲を見ると、もはや相撲を見ているというよりも、大人のぶつかり合いを見ているに等しい。時に「ゴツン」と頭と頭がぶつかった際の音もリアルに響く。あのライブ感は確かにたまらない。

 そのライブ感に似た感覚を覚えるのが相撲朝稽古見学ということになる。場所は国技館ではないものの、各部屋の土俵で行われる朝稽古を間近で見ることができるのは、おおよそ日本人でもそれほどは経験していないと思うので、相撲そのものが珍しい外国人にはさらに珍しく映り人気があるのもよくわかる。

 一方、当社の調査では、外国人富裕層の特徴のひとつが朝早く起きる人が多いことがわかっている。そして彼らが異国への旅をする際に足を向けることが多いのが、その地の文化・芸術などが楽しめる骨董品売り場のようなところだ。特に骨董品朝市を訪問する富裕層夫婦が多い。であれば、日本でも、日本文化朝市を開催して外国人富裕層旅客を取り込める可能性が高い。掘り出し物への期待感もさることながら、コミュニケーションを楽しむ彼らの習性も考えて、冗談のひとつでも事前に仕込んでおくと完璧だ。「早朝」にはチャンスがある、と考えたい。

3:ローカルバーホッピング

 これはもしかすると聞きなれない言葉かもしれない。日本語でいうと、居酒屋巡りということになるだろうか。居酒屋3件を2時間程度ではしごするこの経験を提供する商品が大いに売れているという。1分間で20ホッピング販売できたこともあるほど外国人には人気だそうだ。居酒屋にはさまざまな人間が集まる。近辺のサラリーマン、自営業者、引退した方々など多種多様だ。日本の現在の文化の縮図と映る居酒屋を短時間でいくつか経験してみたい、という彼らの目線にぴったりハマった商品と言えるだろう。

 これを外国人富裕層にあてはめてみた場合、仮説として成り立つのが銀座のクラブ巡り、名付けて「Ginza Bar Hopping」だ。今ではあまり見なくなったが、以前は銀座のクラブをはしごする日本人富裕層も多くいたものだ。その外国人富裕層旅行者版と考えればよい。100万円の値付けでもまったく構わないと思う。その金額で経験できるとしたら極端に割高だとは思わないからだ。旅行会社に十分な利益も残るだろうし、顧客も大いに喜ぶだろう。もちろん顧客獲得にしのぎを削る銀座のクラブにとっても協力したい話となるはずだ。外国人対応できるホステスが必要だが、今時は英語を話せるホステスは意外といるので問題ないだろう。

 さて、外国人旅行者に人気の商品から外国人富裕層旅行者に通じる商品をアナロジカルに考えてみた。いかがだろうか。模倣することは最大の武器。権利に触れることがないのであればそれでなんの問題もない。大切なのは、模倣されにくい仕組みを少し横の土俵で作り上げることだ。その時に重要なことが、自分の目線でなく、外国人目線で商品を組み立てること。今回のように参考となる事前情報はいくらでもある。少し外国人目線でスパイスをふればいい。ゼロベースで考える必要などまったくないのだ。

 このような富裕層インバウンドビジネスのヒントを皆さんで考えていく機会のひとつとして、当社ルート・アンド・パートナーズでは「富裕層インバンドビジネス研究会」を2017年1月から立ち上げることにした。多業種から多人数参加可能なコンソーシアム型の商品で料金的にも誰でも参加しやすいように設計した。欧米を中心とした海外富裕層のリサーチを繰り返しながら、外国人目線で訪日富裕層外国人を増やし消費活動を多くしてもらえるような枠組みを、皆さんと一緒に研究していきたいと考えている。富裕層インバウンドビジネス研究会については、以下のサイトを参照されたい。
http://rpartners.jp/inbound/ibk/


●増渕達也(ますぶちたつや)
ルート・アンド・パートナーズ代表取締役 http://www.rpartners.jp
1992年、東京大学卒業後株式会社電通入社、2002年、富裕層向け雑誌の草分けであるセブンシーズを発行する株式会社セブンシーズ・アンド・カンパニー代表取締役に就任。2006年、富裕層向けライフスタイルマネジメントサービスを手掛ける株式会社ルート・アンド・パートナーズ設立、現在に至る。2013年にはシンガポールに進出。日本、アジアを中心に富裕層ビジネスを手掛け、富裕層マーケティングに関する造詣が深い。「HighNetWorth Magazine」編集長、富裕層インバウンドビジネス研究会も主宰。
《増渕達也》


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