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医療の立場から見る脳の健康。老化のメカニズム、認知症の正しい知識

2016年12月23日(金) 12時24分(タイ時間)
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Dr. Lily Chaisompong リリー・チャイソンポン医師
Dr. Lily Chaisompong リリー・チャイソンポン医師 高齢者医学、内科一般

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加齢に伴って低下する記憶力

 日本は米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、スウェーデン、豪州といった先進国の中で最も高齢化が進んでいる国として挙げられる。手元にある統計によると、日本の65歳以上の高齢者は2870万人で全人口に占める割合は23%。その中で認知症の病気を抱える高齢者は280万人で65歳以上の高齢者の15%を数える。軽度認知障害(MCI)は380万人で同13%。

 脳は加齢に伴って萎縮し、その分だけ物事を処理する速さも量も劣ってくる。20―30代と比較すれば記憶力も低下して忘れやすくなるのは当然。歳をとってくると、会話中に単語がすぐ出てこない、名前を思い出さないといったことがよく起こるが、たいていは時間が経てば思い出す。すぐに忘れてしまうからといっても、それは認知症ではない。旧型と新型のコンピュータにスペックの差があるようなもので、旧型が異常というわけではない。

短期記憶の喪失から始まる認知症

 認知症というのはたいてい、短期記憶の喪失から始まる。短期記憶というのは数十秒から数カ月の単位で保持される記憶。「第2次大戦のことをよく覚えている」「生まれた場所のことはいつまでも忘れないでいる」とはいっても、「今日は食事しただろうか」「今日なぜ病院に来たのか」が分からなくなってしまうといった、直前の記憶が定かでないというのが認知症の特徴だ。新しいものから古いものへと順々に忘れていく。同じ質問を繰り返し、記憶にムラがあって混乱している、という状況だ。

 認知症は生活において適切な判断ができなくなる。複雑な機能を持つ機器はおろかテレビのリモコンも使いづらい、毎月の決まった支払いができない、いつも作っている料理のレシピを忘れる、いつもの場所やいつもの道順を忘れる、日付や季節を忘れる、などだ。

 症状が進むと、社会性も乏しくなってくる。人付き合いが上手にできなくなり、家族内でも問題が生じるようになってくる。ふさぎがちで、怯えやすく、心配症で、疑い深く、過敏となり、気が変わりやすい。言語においては、複数言語を話せても1つずつ忘れていき、やがて最初に覚えた言語(母国語)のみとなる。

一般生活に現れる認知症の症状

 認知症は本人のみならず、周囲の人が注意して症状を見極める必要がある。前述のように、ついさっきのことを忘れる、同じ質問を何回も繰り返す、これまでまっすぐ帰ってこられたのが迷うようになった、人付き合いが下手になった、外出にはいつも髪や服装に気をかけていたのに急に不精になった、などだ。判断能力が劣ってくるので、いつもとは違ったことをしがちになる。疑い深くなるので、自分でどこかにしまい込んだ財布や現金を誰かに盗まれたと思い込むときもある。以下は老化による記憶力の低下と認知症の大きな違い。
通常の老化

* ひとつの経験を部分的に忘れる
* 時間が経てばたいてい思い出す
* 備忘としてノートを活用できる
* 自分自身に気を使う

認知症(アルツハイマー)の症状

* ひとつの経験を全て忘れる
* 時間が経ってもなかなか思い出さない
* 備忘としてノートを活用できない
* 自分自身に気を使わない

など。ちなみに認知症の60―80%を占めるのがアルツハイマー。次に多いのは脳血管性認知症。

認知症のリスク

 認知症になるリスクの要因が解明されてきている。以下はその一例。

リスクを上げる要因

* 外傷性の脳の損傷
* 中年性肥満
* 中年性高血圧
* 喫煙
* 糖尿病
* うつ病の経験
* 睡眠障害
* 高脂血症
など。

リスクを下げる要因

* 学歴(義務教育の年数、勉強してきた年数)
* 運動、体を動かすこと
* 地中海ダイエット
* 認知訓練
* 適量のアルコール摂取
* 社会との関わり

など。地中海ダイエットというのは、赤肉(牛肉・豚肉)を減らして野菜やフルーツ、ナッツや穀物を多く摂る、オリーブオイルを摂取するといった食事。(欧米でよく知られている)沖縄ダイエットも有効といわれる。

新しいことへの挑戦

 認知症を治す薬は存在しないが予防は可能、30―40代からの心がけが大切となってくる。歳をとっても常に新しいことに挑戦すること。趣味でもゲームでも内容は自由。新しいことへの挑戦は、脳を使い続けるということを意味する。
 できれば引退せず、仕事を続けること。欧米人はある一定の年齢に達すると定年退職などで引退するのが普通だが、アジア人は歳をとっても自営業などで仕事を続けることが多い。常に体を動かし、栄養のバランスを考えて健康を維持し、常に考え、ストレスを発散させるといった、ごく普通の生活が認知症の予防となる。

Dr. Lily Chaisompong

 1996年、ロンドン大学医学部チャリングクロス・ウエストミンスター校卒業。2000年、英国医師会認定医(内科)英国王室医師会会員(Member of Royal College of Physicians, UK)。2005年マヒドン大学医学部ラマティボディ病院にて老人医学を修める。専門は認知症。診察日は月・火・木・金・土曜日(問い合わせ、予約は下記日本語サービス課まで)


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