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タイ中部・東部の工業団地、担当者に聞く最新事情

2017年2月16日(木) 23時17分(タイ時間)
タイ中部・東部の工業団地分布状況の画像
タイ中部・東部の工業団地分布状況
入居企業700社を超えるアマタ・ナコーン工業団地(写真提供:アマタ・コーポレーション)の画像
入居企業700社を超えるアマタ・ナコーン工業団地(写真提供:アマタ・コーポレーション)
インフラ完備が評価されるアマタ・シティー工業団地(写真提供:アマタ・コーポレーション)の画像
インフラ完備が評価されるアマタ・シティー工業団地(写真提供:アマタ・コーポレーション)
用水が豊富と評価されるロジャナ工業団地・アユタヤ(写真提供:ロジャナ工業団地)の画像
用水が豊富と評価されるロジャナ工業団地・アユタヤ(写真提供:ロジャナ工業団地)
開発が進むロジャナ工業団地・レムチャバン(写真提供:ロジャナ工業団地)の画像
開発が進むロジャナ工業団地・レムチャバン(写真提供:ロジャナ工業団地)
情報提供:アマタ・コーポレーション 筒井 康夫 氏 ロジャナ工業団地 尾羽根 拓(おばね ひらく) 氏

中部は用水の豊富さが高評価
東部は今年来年で販売ラッシュか

■バンコクから北と東に発展した工業地帯

 タイで最初の工業団地はナワナコン工業団地。1971年、バンコク北隣パトゥムタニ県に設立された。以後、パトゥムタニ県からアユタヤ県へと北に向かって続々と工業団地が開発され、バンコクを起点に南北の線で家電・電子製造を中心とした工業地帯が発展していった。70年代から90年代にかけてのことだ。

 90年代からは東部一帯の工業地帯も本格的に形成されていく。自動車産業を中心とした東部臨海工業地帯(イースタンシーボード)だ。サムットプラカン県、チャチュンサオ県、チョンブリ県、そしてラヨン県という広範囲な地域がバンコクを起点として東西の線で結ばれている。

 タイ中部・東部の工業地帯の発展は、このようなバンコクを起点として北と東に伸びる「二極化」で説明されてきた。その二極化は現在でも変わることはないが、2011年後半にタイ北部および中部で発生した未曾有の大洪水で、操業企業の分布と密度が多少なりとも変わってきている。中部で洪水被災した企業が東部に避難、拠点シフトしたためだ。

 中部では当時、パトゥムタニ県とアユタヤ県の7カ所の工業団地が冠水、日系企業だけで400社以上が被災したといわれる。東部、特にチョンブリ県とラヨン県の工業団地は、被災企業の移転によってタイトな状況に陥ったものの、幸いにもその受け皿を持ち合わせていた。政府主導のエコカープロジェクトに対応すべく、多くの工業団地が開発・拡張を進めていたのだ。

 もう1県、バンコクと東北部を結ぶ国道304号線が走るプラチンブリ県も「タイ東部の新たな拠点」として注目が集まった。チョンブリ県やラヨン県と比較すると小規模な受け皿だったものの、洪水発生を機に工業団地の開発が一気に進んだ地域だ。

 このような理由で東部一帯の工業団地は2012年から2013年にかつてない特需を迎えることになる。その多くが過去最高の売り上げを記録した。

■精密機器の製造拠点はあくまでも中部

 中部に展開する工業団地は被災後、徹底的な洪水対策に乗り出した。中部で最大規模を誇る工業団地は「ロジャナ工業団地・アユタヤ」。タイ財閥ヴィニチュブル家と日鉄住金物産の合弁で、(タイ工業団地公社(IEAT)との合弁でない)民間資本としてはタイ最大手。中部・東部で計6カ所の工業団地を開発・運営する。そのロジャナ工業団地・アユタヤも今や強固な堤防ですっかり囲まれている。

 中部一帯では一時期、洪水被災を理由に新規投資がほとんど見られなくなかったが、全く途絶えたわけではなかった。中部の工業用水の豊富さは東部の比ではないからだ。精密機器関連や食品関連など、東部での操業はどうしても難しい面がある。各工業団地の洪水対策が強化されて以降、中部を進出先として見直す企業が目立っている。

 「特に昨年後半からは日系企業のお客様のお引き合いが目立ってきました」と、ロジャナ工業団地で日本人責任者を務める尾羽根拓氏は話す。「お客様ご自身が前回の洪水は天災ではなく人災と判断されています。『しっかり説明すれば本社も了承する』と話されます」。

 実際、2011年の洪水は発生当時から、政府灌漑局によるダム放水の量とタイミングの見誤りが主因といわれていた。灌漑局は常に雨期の後の乾期で水不足を心配する。雨期のうちに最大量の水を確保しておきたく、2011年も大雨が続いたにもかかわらずダムをせき止め続けていた。それがいつしか決壊寸前の満水となり、抑えきれなくなって一気に放水、未曾有の洪水騒ぎを引き起こした。

 中部一帯の販売価格は、ロジャナ工業団地・アユタヤのイニシャル価格で1ライ(1600平米)当たり370万バーツ。洪水発生前からほとんど値動きがない。環境影響評価(EIA、環境アセス)の問題もあまり聞かれず、バンコクからの通勤圏(ロジャナ工業団地・アユタヤからバンコク都内まで69キロ)というのも、投資家にとっては魅力的なようだ。

■環境アセスの審査厳密化で慢性的な用地不足に

 東部一帯は2014年以降、特需も落ち着いてどの工業団地も一段落を迎える。そしてこの2―3年はタイ全体が不況感に見舞われ、工業団地は「土地が売れない」状況に陥っている。

 それでも同地では、いくつもの工業団地の新規開発・規模拡張が続いている。傍から見れば「こんな不景気な時期に」となるが、実はこれらのプロジェクトはいずれも洪水発生直後に計画されたもの。4―5年を経てようやく形になってきているのだ。

 工業団地開発タイ最大手「アマタ・コーポレーション」の日本人責任者を務める筒井康夫氏は、「環境アセスの厳密化が用地不足の一因」と話す。

 アマタが運営するチョンブリ県アマタ・ナコーン工業団地を例に取ってみる。「東部に限ったことではありませんが、市街化調整区域が増えて用地確保が難しくなっています。土地を購入できたとしても環境アセスの審査が厳しくなっており、今や申請から認可取得まで数年かかるのも珍しくありません」(筒井氏)。チョンブリ県やラヨン県で現在開発が続いている工業団地はまさに、環境アセスの審査に相当な時間がかかっているのだという。

 筒井氏はさらに、「需要の落ち込みは事実だが供給はそれ以下」と続ける。「景気後退で土地購入の需要が減っているのは否めませんが、団地側の用地不足はその需要さえまかなえず常に供給不足です」。

 「『最近の進出企業は中小がほとんど』などと言われていますが、弊社へのお問い合わせを見る限り大小バランスの取れた進出状況です。もちろん案件自体は減っていますが、欧米企業や中国企業などによる一つ一つの案件は大型化が目に付きます。そのような需要にお応えできないのが何とも残念です」(筒井氏)。ロジャナ工業団地の尾羽根氏は、「日系企業からも、自動車関連産業を除けばそこそこの規模のお引き合いを受けます」と話す。

 販売価格も上がり始めている。過去3年で3―4割増の工業団地も見受けられる。もともとの地価が高騰しているのも理由だが、それ以上にタイ投資委員会(BOI)が首都バンコクから離れれば離れるほど恩典が強化されるという「ゾーン制」を廃止したことにより、バンコクにより近く進出企業がより多い地域に需要が集中しているためだ。

 バンコク東隣サムットプラカン県からチョンブリ県チョンブリ市アマタ・ナコーン工業団地までの一帯は現在、販売価格が1ライ当たり850万バーツから1000万バーツ。当分は供給不足で売り手市場、価格は強含みという状況が続きそうだ。

■331号線沿いに団地集中、ラヨン県一帯は戦国時代突入の気配も

 一方、チョンブリ県からラヨン県にかけて現在開発中の工業団地は今年から来年にかけて環境アセスの認可取得が見込まれ、供給ラッシュを迎えそうだ。「こんな不景気な時期に」ではなく、景気回復の兆しが見えてきた「今だからこそ」の供給だ。その面積はざっと1万ライ。特にタイの二大深海港のチョンブリ県レムチャバン港とラヨン県マプタプット港を結ぶ国道331号線沿いに新旧さまざまな工業団地が点在する。

 ロジャナ工業団地もラヨン県で2カ所運営、チョンブリ県で新たに2カ所を開発中だ。「国道7号線(バンコク、チョンブリ、パタヤを結ぶ高速道路)沿いの『ロジャナ工業団地・レムチャバン』の本格的な販売はこれからですが、国道331号線沿いの『ロジャナ工業団地・チョンブリ』は中国企業をはじめとして何社かの入居が決まっています」(尾羽根氏)。スケジュール通りに進まないことがあるのは否めないものの、中国企業など200―400ライといった規模の投資計画がいくつもあり、誠実かつ積極的に対応しているという。

 同一帯の団地開発に関しては、先行きを心配する向きもある。各団地の供給タイミングが重なれば比較対照されて価格競争が引き起こされるからだ。「弊社もラヨン県内でアマタ・シティー工業団地を運営していますが、『戦国時代』に突入する気配を少なからず感じています」(筒井氏)。ロジャナ工業団地の尾羽根拓氏も「長期的に見れば当然、その時期その時期の投資環境に見合った価格に変動することはありうるでしょう」と見据える。

 ラヨン県一帯の販売価格は1ライ当たり380万から410万バーツ。バンコクからの通勤時間は2時間圏内だが、同1時間圏内のアユタヤ県一帯の販売価格と同額、一部では上回っている。ラヨン県南部は同300万バーツ前後で安定しているようだ。

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電話:081-371-0007 ファクス:038-939-000 担当:筒井
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