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【那覇型ビジネス成功の理由:1】インバウンド交流型ホテル、集客の秘訣は?

2017年3月10日(金) 12時42分(タイ時間)
新年に行われた書初めイベント。日本の伝統行事体験は人気が根強いの画像
新年に行われた書初めイベント。日本の伝統行事体験は人気が根強い
ハロウィンのようにゲストとローカル、双方が参加しやすいイベントも定期的に開催の画像
ハロウィンのようにゲストとローカル、双方が参加しやすいイベントも定期的に開催
ラウンジでは食事をしたり、ゲスト同士が情報交換したり、各自が思い思いに過ごしているの画像
ラウンジでは食事をしたり、ゲスト同士が情報交換したり、各自が思い思いに過ごしている
解放感のあるテラス席も設置。足を運びやすい雰囲気作りに一役買っているの画像
解放感のあるテラス席も設置。足を運びやすい雰囲気作りに一役買っている
食材にこだわったおしゃれなレストランバーとして、地域住民にも人気のラウンジの画像
食材にこだわったおしゃれなレストランバーとして、地域住民にも人気のラウンジ
まるでバーカウンターのようなレセプション。ドリンクのオーダーもできるの画像
まるでバーカウンターのようなレセプション。ドリンクのオーダーもできる
デザイン性やアメニティなどにもこだわり、質の高い滞在を提供しているの画像
デザイン性やアメニティなどにもこだわり、質の高い滞在を提供している
英語で交流型ホテルであるというコンセプトを綴り、交流を促進の画像
英語で交流型ホテルであるというコンセプトを綴り、交流を促進
【記事のポイント】
▼地域性に即したコンセプトで、来日客と地元との交流の場を提供する
▼プライベートを確保できる空間を設ける
▼気軽に交流できる動線、場づくりが重要
▼海外の予約サイトで重要なのがレビューへの返信


■交流×質の高いプライベート感がゲストの心を掴む

 沖縄県がインバウンドの人気滞在地としての存在を高めている。官民あげてのインバウンド誘致が功を奏しており、沖縄県発表の入域観光客統計によると、2006年に9万2500人だった訪日客観光数は毎年数万人ペースで増加。2016年には208万2100人を記録した。

 このような状況が県内に、国内でも先進的な事業モデルを育んでいる。これはインバウンドビジネスにおいて、将来の成功を知るためのヒントになるのではないだろうか? その一つの事例となりそうなのが、2015年秋にオープンした「ESTINATE HOTEL」だ。運営は首都圏を中心に35カ所の“住人交流型ソーシャルアパートメント”を展開し、SNS体験を住空間で実現してきた株式会社グローバルエージェンツ。ゲストハウスとホテルの良さを持ち合わせ持ち、そのインバウンド比率は8割に及ぶ。

 同社ホテル事業部の濱田佳菜氏によると、ホテル開業の目的は、これまで培ってきた“人が集まる場作り”のノウハウを活かすことにあるという。では、なぜ交流型滞在で一般的なゲストハウスやホステルではないのか?

「弊社が運営するソーシャルアパートメントは、外国人利用も多いのですが、交流しつつも質の高いプライベートを確保したいというニーズが大きいんです。そこでアメニティなどにもこだわり、ホテルのクオリティを持つプライベート空間を持ち合わせた宿泊施設としました」

 コンセプトは“旅人とローカルが集うライフスタイルホテル”。その交流を促す仕組みの一つが、南の島のリゾートホテルでよく見られるような、レセプションとラウンジの一体化だ。訪れたゲストはラウンジのソファに座り、一息つきながらチェックインを行う。

「フレーバーウォーターやほうじ茶など、ウェルカムドリンクを日替わりでお出ししています。『このお茶は何?』という一言から、お茶のストーリーや日本文化の紹介といった会話が生まれていますね」

 レセプションとラウンジのスタッフが流動的に動き、英語で気さくに声をかけることでゲストハウス的な空気が生まれる。「こちらでWi-Fiも使っていただけますよ」「お部屋で休憩されたら降りてきてくださいね」などの一言を添えて、ゲストが気軽に利用できる雰囲気作りを心掛けているそうだ。こういった着想は、ソーシャルアパートメント運営で培った経験とノウハウから来ている。

「独立していては行き来しづらいレセプションとラウンジが一体化することで、人が自然と集まる場所になります。気軽に交流できる動線、そこに不可欠なリラックス感を突き詰めると、この形になりました」


■英語堪能なスタッフが企画するイベントで交流を後押し

 ESTINATE HOTELのラウンジは朝昼夜の食事とアルコールを提供しており、地元向けにはレストランバーとして積極的にPRしている。地元の食材を取り入れたインターナショナル料理は、ゲストはもちろん地元住民にも評判がよく、お洒落な店としての地位を確立しているそうだ。これが、地元住民とゲストの交流の場として機能している。

 留学やワーキングホリデーなどの経験から、スタッフの大半は英語が堪能なことも大きな強みだろう。外国人が好むフレンドリーさや喜ぶツボを心得ており、彼らが企画するラウンジでのイベントも、ゲストや地元住民の交流を後押ししている。例えば、ハロウィンパーティやクリスマスなどの季節イベント、毎週開催のピッツァパーティ、コンプリメンタリーワインテイスティングなどだ。

「こういった世界共通のイベントには、多くの外国人ゲストが参加してくれます。地元在住の方にもSNSなどで告知しており、若者を中心にたくさんの方が集い、ゲストとの交流を楽しんでいます。お正月の餅つきや書道体験など、日本的なものも根強いニーズがありますね」

 外国人ゲストと地元住民、日本人ゲストとの交流においては、フレンドリーで英語堪能なスタッフの果たす役割が大きい。その象徴的なエピソードがある。

「スタッフがアメリカ人ゲストから『日本語教室の1日体験ができるところを知らない?』と聞かれた際に、横で食事をされていた地元の方が学校を紹介してくれたことがありました。結局1日体験はできなかったのですが、ならばスタッフが教えましょうと、ラウンジで日本語レッスンをしたんです」

 このアメリカ人ゲストが同ホテルのファンになったであろうことは想像に難くない。このような柔軟かつ臨機応変な対応が、後の集客につながったエピソードがもう一つ。

「香港の男性から『宿泊している彼女にサプライズのプロポーズをしたい』と相談を受けたことがあります。彼女とその友人がラウンジで食事をしている時に、思い出のムービーを再生し、それに合わせて彼が登場。指輪と花束を渡し、プロポーズをしました。周りのゲストにもお願いして祝福していただいたのですが、この方々とも英語で細かな打ち合わせができ、お客様のリクエストに柔軟に対応できた部分が好評でしたね。この話が口コミで伝わり、同じようなお客様がグンと増えました」

 インバウンド集客においては口コミ、ネットでのレビューが大きな力を持つが、同ホテルもまずは海外の予約サイトで集客を開始した。英語対応を前面に打ち出し、日本に新規就航する国があればプロモーションを行い、トリップアドバイザーの英語レビューにも即英語で返信するなど、地道な集客努力を重ねる。

 濱田氏によると「英語対応を謳っていても、おろそかにしがちなのがレビューへの返信です。ここを見て予約を入れてくださるゲストは多いですね」とのこと。一歩踏み込んだ英語対応が、着実な集客やリピーター獲得に繋がっている。

■ローカルとの交流に地域性をプラスする

 ESTINATE HOTELが成功した背景には、沖縄という地域性もあると濱田さんは分析する。「もともと琉球文化があり、そこに本土やアメリカの文化も入り混じった土地柄。異文化を受容することに対しておおらかな空気があります」。交流型滞在ホテルの第一号の地として、同社が沖縄を選んだのもその理由からだ。

 グローバルエージェンツは2017年2月、札幌に「HOTEL UNWIND」をオープンする。コンセプトはロッジでの生活をホテルで体験する“ロッジライク”。薪ストーブのあるレセプションラウンジ、星空を見ながらたき火を囲んで語らうルーフトップテラス、ワイン無料サービスを提供するバーなど、こちらも交流の場を充実させている。

 旅慣れしたユーザーが、一歩踏み込んだ旅のスタイルとして求める“ゲストやローカルとの交流”。それを時代や地域性に即したコンセプトとともに、わかりやすく具現化したのが同ホテルだ。Webサイトでもその部分にフォーカスした写真を多用するとともに、一目見て交流型ホテルであることが分かる作りとなっている。英語が母国語ではないアジア圏からの観光客には、特に効果を発揮するだろう。

 美しい田園風景や伝統行事、工芸、温泉、特産品など、日本には地方ごとの素晴らしい観光資源が眠っている。キーワードは“地域の魅力×ローカルとの交流”。首都圏だけでなく地方にも足を運び始めたインバウンドを取り込む工夫のしどころはまだまだありそうだ。
《尾崎美鈴/HANJO HANJO編集部》


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