RSS

【川崎大輔の流通大陸】アセアン最大の2輪流通市場、インドネシアの今

2017年5月28日(日) 16時46分(タイ時間)
インドネシア二輪車ディーラーの画像
インドネシア二輪車ディーラー
《撮影 川崎大輔》
ジャカルタバイクオークション(JBA)の画像
ジャカルタバイクオークション(JBA)
《撮影 川崎大輔》
ジャカルタの交通渋滞の画像
ジャカルタの交通渋滞
《撮影 川崎大輔》
インドネシア二輪車整備工場の画像
インドネシア二輪車整備工場
《撮影 川崎大輔》
ジャカルタ交差点の画像
ジャカルタ交差点
《撮影 川崎大輔》
ジャカルタの二輪駐車場の画像
ジャカルタの二輪駐車場
《撮影 川崎大輔》
各メーカー生産能力の画像
各メーカー生産能力
《川崎大輔 作成》
公共輸送機関サービスが貧弱なアセアン域内では、富裕層は車、庶民層は2輪車を購入する。アセアンで最大の2輪車流通市場のインドネシアの今を探ってみる。


◆世界の中のアセアン2輪車市場

世界の中で主要な2輪市場はインド、中国、そしてアセアン市場だ。2015年最大市場であるインドの販売は1600万台を超えた。中国での2輪車販売は1000万台を大きく割り込む結果となった。

アセアン地域の2輪の販売台数は2011年に1500万台を超えた後、それをピークに1400万台より少し少ない台数で推移している。世界の2輪の販売台数は6000万台前後のため、アセアンは20~25%の市場シェアである。今後のアセアン市場の拡大を見越して、2輪各社はアセアンにおける生産能力を高めてきている。現在アセアンでの生産能力は合計で2000万台といわれている。


◆アセアン各国の2輪市場の状況

アセアン最大の2輪市場はインドネシアだ。アセアンでは最も多い販売台数で年間2輪販売台数は800万台程度で推移をしている。人口が大きいため将来的な可能性は期待されている。しかし、インドネシアでは燃料高騰と金利高、及び規制(2012年:ローン時に一定額の頭金が必要)が主な要因となり内需が縮小して700万台に減少した。

このインドネシアの失速がアセアン全体の減少につながった。しかしそれ以降は徐々に回復してきている。ベトナムはアセアン諸国では2位の市場で2011年に350万台を記録したが、人口当たりの2輪保有台数が2.4、つまり2.4人に1台保有している状況だ。インドネシアの3.0に比べてもベトナムは2輪車が飽和した市場となっており減少傾向が見られる。

タイは年間170万から200万台の市場で輸出拠点としての動きが進んでいる。特に中型排気量バイクのグローバル拠点として機能してきている。ホンダはCB500シリーズなどをアセアン諸国、日本、オーストラリア、欧米などに輸出していている。

フィリピンは70万から80万台ほどで推移している。保有台数は400万台ほどで、人口の割には他(ほか)のアセアン諸国に比べて普及していない。欧米文化の影響が濃いとされるフィリピンでは、2輪の基盤となる自転車利用も少なく2輪で移動する生活習慣、文化が根付いていないため普及が遅れたといわれている。

マレーシアでは40万から50万台を行き来している。市場は飽和気味で保有台数の割には販売台数が少ないためである。


◆アセアン最大の2輪車市場インドネシア

インドネシアの2輪車市場は、ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの日系4社が市場の9割以上を占める日系市場となっている。インドネシアの2輪市場をひと言でいえば、「日本企業によって作り込まれた市場」だ。圧倒的なシェアを占めるからではない。インドネシア人の品質重視、サービス重視という嗜好(しこう)性が、日本ブランド市場を支えたからだ。

2000年に中国メーカーが低価格を武器に参入したが、日系のサービス体制や、補修部品の供給体制、ブランド力や品質、などでプレゼンスを維持してきたのだ。メーカーで見ると、ホンダが圧倒的な市場シェアを持っている。インドネシアで60%、ベトナムでも70%で、2番手のヤマハを大きく引き離している。

インドネシアの2輪の歴史を見てみると、2003年にヤマハがスクーターを投入。それ以降、ホンダとのシェア獲得競争が続いた。ホンダがスクーターの製品ラインを強化したこと、競合よりも早く供給能力を増やしたことなどから、ホンダが競争から抜け出だす結果となった。現在、インドネシアの2輪普及率は3人に1台を超えている。アセアンではベトナム、マレーシアに次いで高い普及率だ。


◆インドネシアのトレンド

インドネシアの2輪市場は、スクーター需要が拡大している。2008年にはスクーター販売規模は360万台で市場全体の30%を占めていた。2014年には740万台となって市場の半分以上に拡大している。トレンドとして、アンダーボーン(スーパーカブ型など)のファミリータイプからスクーターに移ってきている。

スクーターは、基本的に乗りやすい上、女性はスクーターを好む傾向がある。女性のユーザーが増えるに従って、スクーターが増えた。インドネシアではアンダーボーンとスクーターの価格差がなく、最近は、燃費が改善されてきている。ローエンドのユーザーがスクーターを買う傾向にあるという。オートマチックのトランスミッション機能があるスクーターは運転しやすく、セミオートマチックのアンダーボーンに比べて、インドネシアの消費者に好まれたようだ。

更にユーザーのニーズは、よりスポーティで高性能に移ってきている。以前は125ccがメインだったが、最近は150cc以上へトレンドが変化してきている。


◆ インドネシアにおける2輪市場の今後

アセアン諸国では2輪市場の伸び悩みが目立つとの声を聞く。しかし、また彼らが2輪を手放すには早すぎると感じている。公共輸送機関サービスが貧弱なアセアン各国では2輪車がないと通勤や通学ができない。つまり、教育、更には収入を得ることが困難になるのだ。

その上、自分でバイクを購入して家族で使えば結果的に安く上がるという移動交通費対策の観点が強い。地方では2、3人で(場合によっては4人家族)乗るのを見かける。メーカーに確認するとアセアンではそういうことが多いため大人3名でも乗れる強度で想定して生産をしているとの話も聞いた。そのため現実的に大人2名、子供2名が可能である。まさに交通インフラの未整備による家族の移動手段が2輪車となっている。既にインドネシア人の生活に欠かすことができない必需品なのだ。

都市ジャカルタでは、渋滞にはまることがないため、通勤などでは車は買わないが、バイクは必要と市民の声をよく聞く。このような状況を鑑(かんが)みると、インドネシアを含むアセアン各国ではまだまだ2輪の需要は多く残されているように感じる。

4輪を購入したから2輪は購入しなくなるというのではない。むしろ両方とも保有する6輪の文化が根付いていくのではないだろうか。


<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。
《川崎 大輔@レスポンス》


新着PR情報