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【池原照雄の単眼複眼】中国快走のホンダ、温故知新の兄弟車戦略が奏功

2017年6月21日(水) 23時20分(タイ時間)
東風本田のXR-V(ヴェゼルの兄弟車)の画像
東風本田のXR-V(ヴェゼルの兄弟車)
《撮影 池原照雄》
広汽本田のアヴァンシア(UR-Vの兄弟車)の画像
広汽本田のアヴァンシア(UR-Vの兄弟車)
《撮影 池原照雄》
東風本田のUR-V(アヴァンシアの兄弟車)の画像
東風本田のUR-V(アヴァンシアの兄弟車)
《撮影 池原照雄》
ホンダ 八郷隆弘社長の画像
ホンダ 八郷隆弘社長
《撮影 池原照雄》
広汽本田生産ラインの画像
広汽本田生産ライン
《撮影 池原照雄》
東風本田第2工場の生産ラインの画像
東風本田第2工場の生産ライン
《撮影 池原照雄》
広汽本田の佐藤利彦総経理の画像
広汽本田の佐藤利彦総経理
《撮影 池原照雄》
東風本田の藤本総経理の画像
東風本田の藤本総経理
《撮影 池原照雄》
◆1~5月の新車販売は日系で首位に

ホンダの中国販売が好調を続けている。2015年に100万台(前年比32%増)と初めて大台に乗せた後、16年は125万台(25%増)、今年1~5月も53万5800台(前年同期比20%増)と過去最高ペースになっている。好調の大きな要因は、日本の自動車メーカーが60年代末から80年代にかけて盛んに用いた兄弟車によるモデル展開だ。日本の新車市場成長期という古き時代の手法を、現在の中国にアレンジしてよみがえらせた。温故知新とも言うべきモデル展開が快走を支えている。

中国の新車販売は4、5月と前年同月実績を下回り、やや軟調に転じている。15年10月から16年末にかけて排気量1.6リットル以下の車の購置税(自動車取得税)の税率を半分の5%としていた減税措置が、17年からは税率7.5%へと引き上げられたことなどが影響している。だが、ホンダは5月まで5か月連続でプラスを確保している。のみならず各社の発表によると、1~5月累計では日産自動車とトヨタ自動車の合弁会社を僅差で抑え、日系大手3社のなかでトップに浮上した。ホンダの中国合弁事業はトヨタ、日産に先行して1998年にスタートしたので、00年代前半あたりまで販売シェアは3社の中で首位だったが、今回の浮上はそれ以来の事態だ。

◆14年秋のヴェゼルとXR-Vを皮切りに8モデルに拡充

13年から15年まで中国生産統括責任者や研究開発子会社副総経理として現地駐在した八郷隆弘社長は、中国事業が長期の低迷から脱する最大の転機は、自らも関わった現地合弁2社による「兄弟車戦略」と指摘する。中国は外国の自動車メーカーが進出する際、中国メーカーとの折半出資による合弁を2社までとする産業政策を基本としてきた。これに沿ってホンダは広州汽車および東風汽車との合弁による広汽本田(広東省広州市)と、東風本田(湖北省武漢市)の2社で事業を展開している。

広汽本田は『アコード』と『フィット』、東風本田は『CR-V』と『シビック』というホンダのグローバルモデルを中核に営んできたが、中国市場の急成長にはモデル展開が追い付かず、12年ごろには「双方がラインナップの不足」(八郷社長)に直面していた。そこで、当時は中国本部長だった倉石誠司副社長とともに仕込んだのが、兄弟車の導入であり、14年秋の『ヴェゼル』と『XR-V』を皮切りに、現在では表のように4セット・8モデルに拡充させている。

○ホンダの中国での兄弟車
セグメント 広汽本田 / 東風本田(カッコ内は発売時期)
小型SUV ヴェゼル(2014年10月)/ XR-V(2014年11月)
小型セダン シティ(2015年8月)/ グレイズ(2015年11月)
上級MPV オデッセイ(2014年8月)/ エリシオン(2016年1月)
上級SUV アヴァンシア(2016年10月)/ UR-V(2017年3月)

◆限られた経営資源を効率的に活用

こうしたモデル展開は、姉妹車あるいは双子車などとも呼ばれ、モータリーゼーションが急速に進展した60年代末から80年代に日本でも活発に行われた。乗用車での元祖は『カローラ』の派生モデル『カローラスプリンター』を68年に投入したトヨタで、同年の「トヨタオート店」(現ネッツトヨタ店)の発足を機に導入した。その後、このモデルは『スプリンター』として同店の看板モデルに成長した。ホンダも78年に発足した「ベルノ店」(現ホンダカーズ店)の車種不足を補うため81年に『ビガー』(『アコード』の兄弟車)と『バラード』(『シビック』同)を投入している。

日本では新車マーケットがピークを超えた90年代末までに、こうした開発手法はほぼ姿を消した。ホンダが、この手法を中国で復活させたのは、限られた経営資源を「効率的に有効活用し、短期にモデル展開する」(八郷社長)という、いわば苦肉の策だったが、一気に8モデルまで拡大したことが顧客獲得につながっている。ちなみに第一汽車および広州汽車と合弁を運営するトヨタは、現時点では『カローラ』(天津一汽豊田)と『レビン』(広汽豊田)など2セット・4モデルとしている。日産は東風汽車のみとの合弁なので兄弟車は存在しない。

◆18年に投入するEVが次の試金石に

ただ、かつての日本でもそうだったが、闇雲に兄弟車を展開しても成功はおぼつかないし、共倒れの危険性もある。ホンダの場合、2社が目指すブランドカラーの違いが比較的はっきりしており、双方の兄弟車の個性づくりに反映できたことが、市場に受け入れられる要因となっている。設立から19年を経過して先輩格の広汽本田は「お客様は累計で約500万人に達し、一定の信頼をいただいている」(佐藤利彦総経理)と、安心感や信頼感をバックボーンとする。一方の東風本田はモータースポーツ活動なども行い「若さ、スポーティー、ファッショナブルというところに焦点を当てる」(藤本敦総経理)ブランドだ。

『ヴェゼル』の弟分である『XR-V』(1.8リットル車)を広州市で試乗する機会があったが、内外装のデザインやカラーリングはヴェゼルよりも明らかに若年層向けに振っている。両モデルはほぼコンスタントに月間1万台ずつ売れており、ホンダの中国事業の孝行息子に育っている。もっとも、「自動車市場の変化のスピードがもの凄く速い国」(藤本総経理)にあって、ひとつの成功例が持続する保証はない。ホンダと合弁2社が、いま開発中の新たな兄弟車は、18年に投入する中国専用の電気自動車(EV)。中国市場の電動化という大きなうねりにうまく乗って行けるのか、このモデルが次の試金石となる。
《池原照雄@レスポンス》


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