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前首相収監も、8月25日に判決 タイ対立激化懸念

2017年7月26日(水) 16時16分(タイ時間)
インラク前首相の画像
インラク前首相
写真提供、プアタイ党
【タイ】タクシン元首相の妹のインラク前首相が職務怠慢などの罪に問われた裁判の判決が8月25日、バンコクのタイ最高裁判所で下る。前首相は実刑判決を受け収監される可能性があり、タクシン派と反タクシン派・軍事政権の対立激化が懸念されている。

 前首相はインラク政権(2011―2014年)が導入した事実上のコメ買い取り制度「コメ担保融資制度」をめぐり、汚職と巨額の損失を放置したとして、職務怠慢などの罪に問われている。裁判は政治職在任者の汚職などを裁く一審制の特別法廷、タイ最高裁判所政治職在任者刑事犯罪部門で行われ、前首相は実刑判決を受けた場合、即収監される。

 最高裁政治職在任者刑事犯罪部門では同日、コメ担保融資制度でタイ政府が農家から買い取ったコメの一部を政府間取引で中国に輸出したと偽りタイ国内で転売したとして、インラク政権のブンソン元商務相ら28の個人、法人が汚職などに問われた裁判の判決も下る。

 インラク前首相はまた、コメ担保融資制度で国が被った損害の一部として、昨年9月、軍政から357億バーツの損害賠償の支払いを命じられており、7月24日、財務省が前首相の銀行預金など資産の差し押さえを開始したことを明らかにした。前首相はこうした動きに対し、25日、フェイスブックに、差し押さえの一時停止を求める訴えを行政裁判所に起こしているにも関わらず差し押さえが始まったことを批判。全資産を差し押さえられても無実を証明するため戦うとして、支持者に支援を訴えた。

 判決当日には前首相を支持するタクシン派の市民多数が最高裁前に詰めかけると予想される。プラユット首相(元陸軍司令官)はタクシン派に対し、最高裁前に集まっても判決は変わらず、強行すれば政治集会禁止違反で逮捕される可能性があると警告した。

 インラク前首相が実刑判決を受け収監された場合、タクシン派対反タクシン派・軍政の対立は深まり、両派の和解はさらに困難になる見通し。また、民主政権の前指導者が軍政により投獄されたという印象で、対外イメージの悪化も避けられない。

《コメ担保融資制度》
 インラク政権発足直後の2011年10月に導入された。政府が市価の約4割高でコメを買い取ったため、コメ農家には好評だったが、タイ産米は価格上昇で輸出量が激減し、2012年には1981年以来初めてコメ輸出世界一の座から転落した。また、政府がコメの国際価格の上昇を待って売却を遅らせた結果、膨大な在庫が積み上がった。買い取り資金の大半が精米業者、輸出業者、政治家、大規模農家にわたり、汚職の温床になっているという指摘もあった。国際通貨基金(IMF)はこの政策を、「財政負担が重い割に政策効果が低い」と批判した。2014年5月のクーデターでインラク政権を打倒したプラユット軍事政権は同年、コメ担保融資制度を廃止し、インラク前首相ら関係者の訴追、賠償請求を進めている。

■タクシン派と反タクシン派、ますます和解困難に

 タイ軍事政権はタクシン派と反タクシン派の国民和解を掲げているが、7月に起きた政治、司法の動きは両派の和解をますます困難にするものだった。

 軍政が議員を選任した非民選の暫定国会「立法議会」は7月13日、政治職在任者に対する刑事司法手続きに関する法案を全会一致で可決した。被告人不在の裁判を認め、起訴された場合、逃亡中の容疑者の時効を停止するといった内容で、同法が施行されると、被告のタクシン元首相が国外逃亡中のため停止している、国営銀行による不正融資疑惑など汚職関連4件、軍に対する名誉棄損1件の裁判が動き出す。タクシン派の政党、プアタイ党は18日、記者会見を開き、タクシン元首相を狙い撃ちした内容だとして同法を批判した。

 裁判でもタクシン派と反タクシン派は明暗を分けた。

 タクシン派団体「反独裁民主戦線(UDD)」(通称、赤シャツ)のジャトゥポン会長が2009年に行った演説で当時のアピシット首相(民主党党首)を中傷したとして、名誉棄損で訴えられた裁判で、最高裁は7月20日、表現の自由の範囲内として無罪とした一・二審の判決を覆し、被告に禁錮1年の実刑判決を言い渡した。ジャトゥポン会長は即収監された。

 一方、反タクシン派団体「民主主義のための市民同盟(PAD)」(通称、黄シャツ)が2008年、タクシン派政権の退陣を要求して3カ月以上にわたりバンコクのタイ首相府を占拠し、ジャムロン元バンコク都知事、実業家のソンティ氏ら当時のPAD幹部6人が公共物破損、不法占拠などに問われた裁判では、二審の控訴裁判所が24日、個人的利益のためではなかったなどとして、一審判決の禁錮2年を禁錮8カ月に短縮した。

《タイの政争》
 タイでは2006年以降、東北部と北部の住民、バンコクの中低所得者層の支持を集めるタクシン派と、特権階級、南部住民とバンコクの中間層を中心とする反タクシン派の抗争が続いている。議会下院総選挙で2001年以降負け無しのタクシン派の政権を、反タクシン派が街頭デモを起点とする軍事クーデターや裁判で倒すパターンが続き、政治・社会が混乱している。

 反タクシン派はタクシン氏を反王室の腐敗政治家と糾弾し、2006年の軍事クーデターでタクシン政権(2001―2006年)を打倒した。タクシン派は2007年の民政移管選挙で勝利したものの、2008年に「司法クーデター」と呼ばれた裁判所によるタクシン派与党解党で反タクシン派に政権を奪われた。反タクシン派政権下の2009年、2010年、タクシン派は、特権階級が軍官財界を動かし民主主義や法治をねじまげているとして、政権打倒を目指すデモを行い、2010年のデモでは治安部隊との衝突で、市民、兵士ら91人が死亡、1400人以上が負傷した。

 タクシン派は2011年の下院総選挙で再度勝利し、タクシン元首相の妹のインラク氏が首相に就任した。しかし、2013年10月から、野党民主党が主導する反タクシン派市民のデモがバンコクなどで拡大。2014年1、2月には数万人がバンコクの主要交差点を長期間占拠した。同年5月、軍が治安回復を理由に戒厳令を発令、クーデターでタクシン派政権を倒し、全権を掌握した。軍事政権はその後、タクシン派弾圧を強め、今年3月までに、前首相らインラク政権の閣僚5人の参政権を5年間停止した。
《newsclip》

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