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前タイ首相に逮捕状、汚職裁判判決で出廷せず 国外逃亡か

2017年8月25日(金) 13時12分(タイ時間)
インラク前首相の画像
インラク前首相
写真提供、プアタイ党
【タイ】タクシン元首相の妹のインラク前首相が職務怠慢などに問われた裁判で、タイ最高裁判所での判決当日の25日、前首相は病気を理由に最高裁に出廷しなかった。これを受け、最高裁は前首相の逮捕状を発行した。

 タイ字紙カオソッドとデーリーニュースは、前首相が24日にカンボジア経由で空路シンガポール入りし、タクシン元首相と合流したと報じている。前首相は反タクシン派軍事政権の厳重な監視下にあり、出国を禁じられていた。しかし、裁判で実刑判決が下れば、タクシン派と反タクシン派の対立が深まる恐れがあり、軍政が逃亡を黙認した可能性がある。

 前首相はインラク政権(2011―2014年)が導入した事実上のコメ買い取り制度「コメ担保融資制度」をめぐり、汚職と巨額の損失を放置したとして、職務怠慢などの罪に問われていた。裁判は政治職在任者の汚職などを裁く一審制の特別法廷、最高裁政治職在任者刑事犯罪部門で行われ、前首相は実刑判決を受けた場合、即収監される可能性があった。

 前首相はまた、コメ担保融資制度で国が被った損害の一部として、昨年9月、軍政から357億バーツの損害賠償の支払いを命じられ、今年7月、タイ財務省が前首相の銀行預金など資産の差し押さえを開始していた。

 最高裁政治職在任者刑事犯罪部門では25日、コメ担保融資制度でタイ政府が農家から買い取ったコメの一部を政府間取引で中国に輸出したと偽りタイ国内で転売したとして、インラク政権のブンソン元商務相ら28の個人、法人が汚職などに問われた裁判の判決も下る。ブンソン元商務相は最高裁に出廷した。

■コメ担保融資制度

 コメ担保融資制度はインラク政権発足直後の2011年10月に導入された。政府が市価の約4割高でコメを買い取ったため、コメ農家には好評だったが、タイ産米は価格上昇で輸出量が激減し、2012年には1981年以来初めてコメ輸出世界一の座から転落した。また、政府がコメの国際価格の上昇を待って売却を遅らせた結果、膨大な在庫が積み上がった。買い取り資金の大半が精米業者、輸出業者、政治家、大規模農家にわたり、汚職の温床になっているという指摘もあった。国際通貨基金(IMF)はこの政策を、「財政負担が重い割に政策効果が低い」と批判した。2014年5月のクーデターでインラク政権を打倒したプラユット軍事政権は同年、コメ担保融資制度を廃止し、インラク前首相ら関係者の訴追、賠償請求を進めている。

■タクシン元首相

 タクシン・チナワット元首相は1949年、タイ北部チェンマイ生まれの客家系華人。中国名は丘達新。警察士官学校を卒業後、米国に国費留学し、刑事司法博士号を取得。帰国後、警察に勤務するかたわら、官公庁へのコンピュータリース、不動産開発などを手がけ、1987年に警察中佐で退職。その後、携帯電話サービス、通信衛星などを展開するタイ通信最大手シン・グループを育て上げ、タイ屈指の富豪となった。

 1995年に政界に転じ、1998年に政党を設立。地方、貧困層へのばらまき政策を掲げ2001年の総選挙で大勝し首相。2005年2月の総選挙も圧勝、首相に再選されたが、2006年9月の軍事クーデターで失脚し、公職追放処分を受けた。軍部はクーデターの理由に、タクシン氏のタイ王室軽視と汚職を挙げた。

 民政移管のため行われた2007年末の総選挙でタクシン派が勝利し、タクシン氏は2008年2月に帰国。8月に出国し、不在中の10月、首相在任中に当時の妻が国有地を競売で購入したことで禁錮2年の実刑判決を受けた。その後はタイに帰国せず、主にドバイに滞在している。

 タクシン派与党は2008年12月に選挙違反で解党され、これに伴い、タクシン派政権から一部派閥と中小連立4党が野党・民主党に寝返り、反タクシン派アピシット民主党連立政権が発足した。

 チナワット家のタイ国内の資産約760億バーツはクーデター後、凍結され、タイ最高裁が2010年2月、不正蓄財だとして、このうち464億バーツの国庫没収を命じた。同年4、5月、タクシン派のデモ隊がバンコク都心部を占拠し、治安部隊との衝突で、91人が死亡、1400人以上が負傷。デモは最終的に武力鎮圧されたが、銃撃戦や放火でバンコク都内は大混乱に陥った。

 アピシット政権は翌2011年5月に下院を解散。同年7月の総選挙ではタクシン派政党プアタイが過半数を制して政権に復帰し、タクシン氏の妹のインラク氏が8月に首相に就任した。インラク政権は2013年に、タクシン氏らへの恩赦を画策したが、反タクシン派による大規模な反政府デモを招き、2014年5月、軍事クーデターで崩壊した。 

 タクシン派は主に東北部と北部の住民、バンコクの中低所得者層の支持を集める。反タクシン派は特権階級、南部住民とバンコクの中間層が中心だ。両派の抗争は、議会下院総選挙で2001年以降負け無しのタクシン派の政権を、反タクシン派が街頭デモを起点とする軍事クーデターや裁判で倒すパターンが続いている。
《newsclip》

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